代理ミュンヒハウゼン症の母

私の父は頭が悪い上に性格も悪く、見栄っ張りで強欲で自分だけがかわいい昭和人だった

私の母はそのようなサイテー男に虐げられ、たくさんの苦労をしてきた人だった

と昔は思っていた

私は物心がついたころには父親には嫌悪感しか持ったことがなかった

私が母親を疎ましいと感じるようになったのは小学校4年生の頃だ

きっかけは自分はそれまで身の回りの世話をほとんどされていなくて、不潔極まる子どもだったということに初めて気づいたことだった。母親は他人には私を自慢の娘のように言うけれど、人の目がないところではこの人は私のことには徹底的に無関心なのだとわかったのだ。だからそれからは自分で風呂に入り髪を洗い、歯を磨き、自分の着る物は自分で洗濯をすることに決めた

父親に嫌悪感を持つことには理由がはっきりしていたので当然のことだと思っていたのだが、当時はなぜ自分が母親にも疎ましさ、それもかなり強くて自分では抑制できないほどのものを抱くのかわからなかった。苦労の多い母親にもこれほどの嫌悪感を抱いていることに罪悪感を感じていた

自分が虐待されていたのだと確実に気づいたのは20代の始めだったと思う。人文学部の学友に感化されて、精神分析や心理学の書物を読んだ時期があって気づいた

私が母親はから受けた虐待は数多くあるが、ここではもっとも古いものを紹介する

私の母親は私がまだ0歳児だったころ、私の手に熱いアイロンを押し付けたらどうなるのだろうと思い始めたら居ても立ってもいられなくなり、ほかにだれ家にいないときに私の手の甲に「ちょっとだけ」アイロンを押し当てたところ、たちまち私の腕全体が真紫になって腫れ上がった。これが私の父や祖父にバレたら自分が怒られると思ったので私の大火傷をひた隠し病院に連れて行くこともしなかった。しかし隠し通すことはできず、バレたときには祖父に殴られた

私にはこの火傷を受けたときの記憶はない(だって0歳児だった)ので、これは母親が私に話したことだ

(よくこんなことをただの昔話にようにベラベラ喋るなあ、というのはさておき)

私には傷が治ってきたころのおぼろげな記憶がある

それは、自分の火傷には赤チンキが塗りたくられていて、傷が治ってきて皮がむけてくるようになったときなのだろう、私の火傷あとの皮をむいては楽しげにしている母親である。とりわけ皮が一枚に大きくむけると興奮して私に見せていた

今は自分が親になった。自分の母親は到底ありえない行為をしていたのだとなんの躊躇もなく断言できる、今は

私の母親がこの話を私にしていたときは、自分がいかに私の心配をしたか、私の火傷がいかにひどかったか、祖父に殴られて自分がどれだけかひどい暴力を振るわれたか、自分が私にどれほど申し訳なく思っているか、が話の焦点だった。私は幼少期のときはその話を鵜呑みにし、矛盾点があることなど考えず、母親には悪いことをしたとすら感じた

ごく普通の常識人であれば

  • 孫が大火傷を負わされて、しかも息子の配偶者(私の母)がそれをひた隠しにしていたと知ったら激怒するのは当たり前

  • そもそも、そんなに心配だったのならなぜ病院に連れて行かなかった

  • そもそも、なんで熱いアイロンを人の手に押し付けたらどうなるのかとか考えるのか(だったら自分の手に押し付けてどうなるのか観察しろよ)

とか思うのではないのだろうか

私の場合は成人して少し経ったくらいまで気づけなかった

私の母親は自分が夫や義家族にどんなにひどいことをされても耐える妻、娘のことは誇りに思い愛してやまない母親を演じきり、本当のことを知らない世間の全ての人からは同情され称賛されることが快感でならず、その快感を得るために私を利用し、その快感への執着は病的としか言いようがない、というのが私の見解である

母親には同じ話を何度も執拗に蒸し返す習癖がある。そしてその度に私に「お母さん、もう昔のことだからいいよ、気にしないで」と言ってもらうことを期待し、「私は不注意で娘に火傷をさせてしまったのに、娘は許してくれた」と泣きながら他人に語る図を思い描いてはワクワクして一人で興奮する

(あれは不注意の事故ではなかったし、そもそも私はもういいとも気にしないでとも言った覚えはないのだが、自分で勝手にそういうシナリオを思い描いては病的に興奮するという自慰行為)

今日ある某チューブの動画を見ていて長年のモヤモヤが腑に落ちた

これは代理ミュンヒハウゼン症候群の一例であると

精神疾患を持つことは罪ではない。そう他人が言うことは簡単だ。たぶん私も他人様に関してはそう思う

しかし精神異常の親を持つ子どもにとっては生き地獄以外の何ものでもない。親ガチャにたまたまハズれなかった人にエラソーなことは言われたくない

私は共倒れの危機からは逃げた。これから先も逃げ切ってやる


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