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【徹底解説】不動産鑑定士試験の民法 おすすめ参考書と勉強法

不動産鑑定士・不動産鑑定士試験とは?

まず、不動産鑑定士や不動産鑑定士試験についてあまりご存知ない方は、以下の記事(全5記事)で徹底的に解説していますため、そちらをご覧いただいたうえで、この記事に戻ってきていただけますと幸いです。


不動産鑑定士試験の民法には何が出題される?

まず、民法とは?

民法は、人々の日常生活におけるさまざまな問題を扱う法律です。
例えば、物の買い売り、結婚や離婚、相続など、私たちの生活に密接に関わる事柄を規定しています。個人の権利と義務を明確にし、公平な取引が行われるようにするために存在します。

実際の試験問題を見てみよう

民法へのイメージをつけるため、実際の問題を見てみましょう。

民法 令和5年 問題1

この問題は、民法における「無権代理」に関する問題です。例えば(1)では、表見代理が成立するか否かが論点となっています。

このように、何かしらの事例が提示され、それに対して論じていくというのが民法の基本スタイルです。

「民法」学習の3ステップ

記述が中心となる不動産鑑定士試験における民法の学習は大きく3ステップあります。

① 民法の理解:民法を理解する。民法の内容について学習します。
② 論証の暗記:基本的な論証(民法の解釈)を理解・暗記する
③ 過去問:とにかく過去問を使って、①と②をアウトプットして鍛えます。

この3ステップについて、おすすめ参考書と一緒に見ていきましょう。

不動産鑑定士試験における民法の出題範囲

不動産鑑定士試験対策専用の民法の参考書は、高額な大手予備校の専用コースでしか出版されていません。(市販の教科書や参考書はない
そのため、この記事では他の資格試験のための参考書をご紹介します。それら参考書は、その資格を勉強するには良い参考書ですが、不動産鑑定士試験の勉強をする際には、「勉強しなくても良い箇所」というのが必然的に生まれます。
以下の、出題範囲の記事を参考に、勉強すべき箇所かどうかというのは、各々で判断するよう、ご注意ください。

①民法の理解

まずはもちろん、「民法」という法律自体を理解する必要があります。

理解におすすめなのが、「公務員試験 過去問攻略Vテキスト 民法(上)」と「公務員試験 過去問攻略Vテキスト 民法(下)」の2冊です。

公務員試験のための教科書ですが、不動産鑑定士試験に出題の範囲をカバーしています。
民法の内容を噛み砕いて説明しているので、一問一答などにも取り組みながら、理解を深めていきましょう。

②論証の暗記

①で示した民法への理解が必要なのは簡単に分かると思います。例えば宅建士の勉強でも必要な内容です。
しかし、不動産鑑定士試験の民法は選択肢を選ぶ形式の問題ではなく、記述式の問題が出題されます。そこで必要となってくるのが、民法という法律に対する「論証」です。

具体的に、例題に対する論証を見ていきましょう。(さらーっと読んでください)

 【例題】
AとBは通謀して、Aが所有する甲土地をBが購入したという虚偽の意思表示を行い、土地の登記をBに移転した。Bは登記が自分名義であることをいいことに、その土地を虚偽表示について何も知らないデベロッパーCに売却した。この場合、Aは虚偽の意思表示を撤回し、Cに甲土地の返還を求めることは可能か。

《解答例》
【原則】民法第94条1項によると、相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効である。よって、AとBの間で行われた虚偽の意思表示は無効となる。また、我が国の民法は原則として登記に公信力を認めていないため、登記を信頼したとしても、Cはその土地の所有権を取得することはできない。
【論証】しかし、94条2項は「前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない」と定めている。この条文の趣旨は、虚偽表示をした者に責任を負わせ、外観上の権利状態を信頼した第三者の信頼を保護することである。ここで、本文のCが保護されるのではないかが問題となる。(94条2項の趣旨)
私は、撤回は当事者間では有効であるが、虚偽の外観を除去しない限り、その撤回を第三者に対抗することはできないと解する。もし撤回を第三者に対して対抗できるとすると、虚偽の外観を信頼して取引した第三者にとってあまりに酷で、取引の安全性を害するためである。(虚偽の外観の除去)
【結論】結論として、Aは虚偽の意思表示を撤回することはできるが、撤回はAB間でのみ有効であり、虚偽の登記を削除しない限り、その撤回を善意の第三者Cに対抗することはできない。

このように、事例(ケース)が与えられてそれに対する原則・解釈・結論を書くのが論証です。

具体的に何をすれば良いのかという日頃の学習行動の話からすると、普段の学習では、このような論証を理解・暗記します。そして、実際の試験や過去問では、同じ論点の論証を頭の中の引き出しから選び、それを元に論証をする形となります。

これら論証は基本的に、民法の条文に基づいており、本問の場合、「虚偽表示」に関する第94条についての論証です。

(虚偽表示)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

ここで、論証について整理してみます。

  1. 原則の部分:①で学習した法律の一般的な理解を書くこととなります。

  2. 論証の部分:与えられて事例に対して法律をどのように解釈すべきかを論じます。

  3. 結論の部分:原則と論証から導き出される今回の事例に対する結論ということになります。

「〜と解するべきである」という「解釈」を書く「論証」の部分は、民法をを勉強したてでは絶対に書けません。だからこそ、きちんと考えられた「論証」を暗記して使う必要が出てきます。
解答に「私は〜と解する。」と書いたとしても、それは自由に解釈して良いというわけではなく、論証例で覚えた論証(=解釈)をベースにする必要があります。
自分で論証を考えると、とんちんかんなことを書いてしまう可能性があるので、必ず「暗記」をしましょう
※論証例は、テキストで不動産鑑定士試験に関連するものは全て暗記する必要があります。

このように、問題で問われている論点を把握し、上記で示すような論証例を使って解答を作成していくのが「民法」となります。

そして、暗記するのに良い論証集は「アガルートの司法試験・予備試験 合格論招集 民法」です。関連する箇所(民法の出題範囲を参照)から暗記していきましょう。

③過去問演習

民法の理解がある程度できて、論証を暗記したら過去問演習開始です。民法は鑑定理論と同様に、しっかりと過去問演習をすることが大切です。

過去問は「不動産鑑定士 民法 過去問題集」がおすすめです。
解答例(模範解答)はもちろんですが、事例分析や論点も記載してあり、問題が何を問うているのかも合わせてしっかりと学習することが出来ます。

民法の過去問は基本的にどれも重要であるため、できるだけ多くの問題をできるだけ多くの回数解くことが推奨されます。

  • 実際の試験の問題では条文がいくつか提示されるが、その中で適切なものを使うことができているか(関係ない条文も提示される)

  • 問題に対して、論じるべき論点がきちんと書けているか

などを過去問演習では意識しながら取り組み、②の論証例で覚えきれていない穴を埋めていきましょう。


おわりに

以上が、不動産鑑定士試験の民法を学習する基本的なステップとなります。勉強法やおすすめ参考書の紹介として、学習に役立てていただければ幸いです。
特に、不動産鑑定士試験向けの参考書は少ないです。独学で民法の学習をしたい人は、この記事で紹介したものを軸にして、必要に応じて参考書を増やしたりしていただければと思います。

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