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【ミクロ-06:不動産鑑定士試験のための経済学】 スルツキー分解 をわかりやすく(消費者の行動)


1. スルツキー分解とは

スルツキー分解は、商品の価格変動が消費者の購買行動に及ぼす影響を、二つの要因に分解する手法を指します。具体的には、商品の価格が変わった場合の消費者の反応を、「代替効果」、「所得効果」という二つの要素に分けて考える方法です。
価格が下落する場合、この二つの効果がどのように作用するかを、以下で具体的に説明します。この理論を理解することで、消費者の購買意欲や商品の需要変動の背後にある要因を詳細に把握することが可能となります。

1.1. 全部効果

全部効果は、商品の価格が変動することによる、消費者の購入量の変化全体を指します。これは、代替効果と所得効果の合計になります。
価格が下落した場合、消費者はその商品をより多く購入する傾向がありますが、これは代替効果と所得効果の組み合わせによるものです。

1.2. 代替効果

代替効果は、価格変動による商品の相対的な魅力度の変化に対する消費者の反応を示します。具体的には、ある商品の価格が下落した場合、その商品は他の商品に比べて魅力的になり、消費者はその商品をより多く購入する傾向があります。
この効果は、他の商品との比較における価格の変動だけを考慮したものであり、消費者の実質的な所得は変わらないと仮定しています。

1.3. 所得効果

所得効果は、価格変動による消費者の実質所得の変化に対する反応を示します。例えば、ある商品の価格が下落すれば、消費者は同じ金額でより多くのその商品を購入することができます。
この効果は、商品の価格の下落が消費者の購買力を高めるため、他の商品の購入も増加する可能性があります。

2. 正常財のスルツキー分解

正常財は、その価格が下落すると需要が増加する商品を指します。以下は、正常財の価格が下落した場合のスルツキー分解の説明です。
正常財における代替効果と所得効果は、両方とも需要を増加させる方向に働くことが一般的です。

2.1. 代替効果

正常財の価格が下落すると、他の商品に比べてその商品が魅力的になります。これにより、消費者は正常財をより多く購入する傾向があります。
代替効果の働きにより、その商品の需要は増加します。

2.2. 所得効果

正常財の価格が下落すると、消費者の実質的な購買力が高まります。このため、消費者は他の商品だけでなく、正常財もより多く購入することができるようになります。
この所得効果によっても、正常財の需要は増加します。

2.3. 需要曲線

正常財の需要曲線は、価格と需要の関係を示すもので、通常は右下がりの形をしています。この形は、価格が上昇すると需要が減少し、価格が下落すると需要が増加するという関係を示しています。
この右下がりの需要曲線は、代替効果と所得効果の影響を合わせた結果として形成されます。

3. 劣等財のスルツキー分解

劣等財は、その価格が下落すると需要が減少する可能性がある商品を指します。劣等財は、ギッフェン財と非ギッフェン財に分けられます。

3.1. ギッフェン財の場合

ギッフェン財は、価格の下落によって所得効果が代替効果を上回り、結果として需要が減少する特性を持つ劣等財です。
ギッフェン財は非常に特異なケースであり、実世界での例は限られています。

3.1.1. 代替効果

ギッフェン財の価格が下落すると、他の商品に比べてその商品が魅力的になるという代替効果が働きます。この効果だけを考慮すると、ギッフェン財の需要は増加するはずです。

3.1.2. 所得効果

ギッフェン財の価格が下落すると、消費者の実質所得が増加しますが、この所得の増加が他の高品質な商品の購入を促進し、ギッフェン財の需要を減少させます。
ギッフェン財では、価格下落による所得効果が代替効果を上回る、つまり需要の減少が増加を上回るため、結果として需要は減少します。

3.1.3. 需要曲線

ギッフェン財の需要曲線は、一般的な商品とは異なり、右上がりの形をする可能性があります。これは、価格の上昇が需要の増加を、価格の下落が需要の減少をもたらすという特異な関係を示しています。
ギッフェン財のこのような特性は、所得効果が代替効果を上回るために生じる現象です。しかし、このような現象は一般的ではなく、特定の条件下でのみ観察されます。

3.2. 非ギッフェン財の場合

非ギッフェン財は、価格の下落によって代替効果が所得効果を上回り、結果として需要が増加する特性を持つ劣等財です。この現象はギッフェン財の逆で、価格の下落が需要の増加を引き起こすケースを示します。
代替効果が所得効果を上回ると、非ギッフェン財の価格の下落は、その商品の需要を増加させる結果となります。

3.2.1. 代替効果

非ギッフェン財の価格が下落すると、他の商品に比べてその商品が魅力的になるという代替効果が働きます。この効果により、非ギッフェン財の需要は増加します。

3.2.2. 所得効果

非ギッフェン財の価格が下落すると、消費者の実質所得が増加しますが、この所得の増加が他の高品質な商品の購入を促進し、非ギッフェン財の需要を減少させます。
非ギッフェン財では、価格下落による代替効果が所得効果を上回る、つまり需要の増加が減少を上回るため、結果として需要は増加します。

3.2.3. 需要曲線

非ギッフェン財の需要曲線は、正常財の需要曲線と同様に、通常は右下がりの形をしています。ギッフェン財のこのような特性は、代替効果が所得効果を上回るために生じる現象です。この傾向は、非ギッフェン財の市場で一般的に観察されるものです。
この曲線の傾きは、非ギッフェン財の特性によって異なります。


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