40年前に統一教会を追放・禁止したシンガポールの慧眼
「統一教会の存続は公共の福祉と秩序を害する」
1982年4月2日、「統一教会の存続は公共の福祉と秩序を害する」としてシンガポール政府は統一教会を解散させ、活動を禁止した。
宗教団体登録からわずか1年半、信者数50人に満たない状況でのことだった。
翌日、それを報じたシンガポール最大の新聞「ストレーツタイムズ」の記事を紹介🤗
昨日、ムーニー運動(統一運動・統一教会の活動)は"公共の福祉と秩序を害する"という理由から、シンガポールで禁止とされた。
内務省の声明によると、ムーニーたちが宣教している"世界基督教統一神霊協会"の登録抹消は即時に効力を発するという。
一般的には統一教会として知られているが、その信者たちは物議を醸した創始者・文鮮明師の名にちなんでムーニーズと呼ばれている。
"アメリカやヨーロッパなどにおけるムーニーの活動は、「信者を洗脳して、家庭を崩壊させる」と非難され、激しい論争の的となった。"
シンガポールの統一教会は1980年9月29日、社団法に基づき登録された。
その規約では、すべての関係者および一般会員がシンガポール市民であることを義務づけていた。また、いかなる外国または外国人からの資金を受け入れないという条項もあった。
内務省の声明ではこう述べている:
「会員資格はシンガポール人に限定されていたが、調査の結果、Tongil(S) Pte Ltdという会社の外国人社長が、協会の運営で重要な役割を果たしていたことが判明した。」
「彼は協会の資金を管理し、講演会や勧誘キャンペーンを企画した。この会社は統一教会の信者によって設立された。」
「内務大臣は1982年4月2日、その存続がシンガポールの公共の福祉と秩序を害するという理由から団体を解散させた。」
情報筋がストレーツタイムズ紙に語った話によると、アメリカ人実業家のジョージ・F・グラス氏は、シンガポールの就労ビザが取り消される可能性が高いという。
シンガポールにおけるムーニー運動は非常に小規模で、信者は50人にも満たないと言われている。
"ムーニーを禁止した政府の動きは、このカルトがシンガポールに深く根を下ろし活動を拡大するのを阻止する予防措置と見られている。"
米国に本部を置くムーニーは、1976年に2人の外国人と1人のシンガポール人(いずれも統一教会の信者)が韓国産の高麗人参を扱う貿易会社 Tongil(S) Pte Ltdを設立したことからシンガポールでの活動が始まった。
Tongilの従業員の中にはムーニーズもいた。統一教会が海外で巻き起こした論争のため、政府は国内での活動を厳しく監視していた。
その結果、グラス氏がその活動に深く関与していることが判明した。
1981年半ば、統一教会のメンバーはシンガポール国立大学、ニーアン工科大学、シンガポール工業高等専門学校の学生を積極的に勧誘しようとした。
2ヶ月前のさらなる勧誘活動は、主に学生や学校を卒業したばかりの若者を対象としたものだった。
協会の資金は寄付によるもので、昨年12月時点の累積資金は34,000ドルだった。
ムーニーは布教活動だけでなく、改宗者の獲得方法も論争を巻き起こしている。
"まず最初に友情によって心を開かされ、その後は十分な睡眠や思考の時間を与えないまま、毎日長時間におよぶ神学の講義を受けると言われている。"
新会員になると財産をすべて統一教会に捧げなければならない。
文鮮明牧師は、誰と誰が結婚するかを決定し、自ら式(合同結婚式)を執り行う。
"統一教会は信者から無償の労働力を搾取し、怪しげな目的のために資金集めをしていると非難されている。"
台湾では、多くの改宗者が学校を辞めて運動に専念するようになったことで、ムーニーは禁止された。
しかし、ムーニー運動が大規模で活動も広範囲に及んでいたアメリカなどと違い、シンガポールではまだ小規模で大きな影響を与えていない。
それにもかかわらず、政府はムーニー運動がこの地でカルトに成長し、社会の安定に脅威をもたらす可能性があると懸念している。
これが、手遅れになる前にムーニーを禁止するという根拠である。
1990年、統一教会のフロント組織にも解散命令
統一教会の追放・禁止後も監視を続けていたシンガポール政府は、親や家族との関係を断絶させ、「統一原理を信じない政府はサタン」と説いていたモラル・ホーム・ソサエティーという団体を、"統一教会の活動を復活させるための隠れ蓑"だとして解散させた。🤗
統一教会は「カルト」と名指しで出版物も禁止!
違反すれば罰金や懲役刑も
シンガポール政府は統一教会を「カルト」とみなし、出版物も名指しで規制対象。
輸入、販売・配布、所持まで禁止されているため、文鮮明や韓鶴子の自叙伝などの出版や販売も当然できない。🙂
公の場で集会やイベントを開いたり、冊子の配布なども違法活動となるので、有罪になれば罰金刑や懲役刑が科されるとのこと。
ただし、個人宅に数人規模で集まって祈るようなことは可能という。
「信教の自由」は法で制限されるもの
多民族国家のシンガポールでは、信教の自由が憲法で保証されている。
2020年の国勢調査によると、仏教が最多で31.1%、キリスト教18.9%、イスラム教15.6%、道教8.8%、ヒンドゥー教5.0%、無宗教が20%の多宗教国家。
多民族・多宗教の国ということからも、人種や宗教の調和に悪影響を与える可能性があると政府が見なす出版物、活動または言論は容認しないという基本姿勢。
"「エホバの証人」「統一教会」「アジアキリスト教協議会」は公共の秩序を脅かすためシンガポールでは禁止されており、したがって憲法によって保護されない。"
(1996年1月、内務省の国会答弁を報じた記事より)
シンガポール憲法では、『すべての人は、自己の宗教を信仰し、実践し、それを布教する権利を有する』と定めているが、『信教の自由は、公共の秩序、公衆の衛生または道徳に関する一般法の違反にまでは及ばない』 とされている。
たとえ憲法で信教の自由が保証されていても、法を超えての自由はないし、公共の秩序を脅かすことがあれば活動禁止や処罰されるのも至極当然のこと。🙂
数十年にわたって悪辣な献金収奪や数々の不法行為を重ね、信教の自由を盾に振りかざしながら、 『天の法は、地の法に勝る』とか、 『世の中の法律が私たちをうるさく指図することはできない』など、一般社会で「反社会的」と見なされることをトップが公言する統一教会。
シンガポールと違って、解散命令(法人格の剥奪)後も任意団体として活動や信仰を自由に続けられる大甘な日本だけど、それでも"カルト野放し天国"から脱却するための第一歩になるといいな…と心から思うのである。
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