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USCPA(米国公認会計士)試験制度のこれまでの変遷と今後は?


2023年12月15日、現行のUSCPA試験が終了しました!

現行のUSCPA試験制度は2004年開始なので、20年続いたわけです。


ちょうど20年続いた試験制度の終了と、2024年からの新試験制度の開始という狭間にあるわけです。

そんなこともあり、これまでのUSCPA試験制度の変遷に改めて興味をもたれる方がいるようです。

なので、USCPA試験制度の変遷をまとめてみることにしました。



CBT以前(~2003年)


2003年11月まではペーパー試験でした。

マークシートを鉛筆で塗りつぶして解答を記入。

Essaysは、レターサイズのレポート用紙に鉛筆で書いていました。


試験会場はアメリカのみ


試験結果は約3か月後

正確な発表時期は試験会場内に告示されたそうです。

科目別に得点通知が郵送

まだ全科目合格ではなければ、次回の受験申込書が同封され、全科目合格なら倫理試験(Ethics Examination)の教材注文用紙が同封されていました。


試験科目は以下の4科目

  • FARE(Financial Accounting & Reporting):財務会計

  • ARE(Accounting & Reporting):特殊会計

  • AUDIT(Auditing):監査

  • LPR(Business Law & Professional Responsibilities):商法


試験日は年2回

5月と11月の第1水曜日と木曜日(2日連続で全科目受験だったので)。


試験スケジュールは固定

  • 水曜日午前中(9時から12時の3時間):LPR

  • 水曜日午後(13時半から18時の4.5時間):AUDIT

  • 木曜日午前中(8時半から12時の3.5時間):ARE

  • 木曜日午後(12時半から18時の4.5時間):FARE

科目によって試験時間が異なり、今は全科目4時間ですが、当時は3時間から4.5時間と幅があったようです。


科目合格の有効期限は科目合格となってから3年間(ただし、州によっては短いことも)。

3年間で残る科目に合格すれば全科目合格。


科目合格の条件は州によって異なり、以下の3パターン

  • 「2+50%型」:全4科目を受験し、75点以上が2科目、75点に達しない科目が50点以上なら、75点以上の2科目が科目合格

  • 「3+0%型」:全4科目を受験し、75点以上が3科目なら、残る科目の得点に関わりなく、75点以上の3科目が科目合格

  • 「2+0%型」:2科目を受験し、その2科目が75点以上なら科目合格

多くの州が「初回受検での全科目受験」を条件づけており、日本人が受験できる州のほとんどは「2+50%型」だったようです。


出題形式は以下の3つ

  • Four-Option Multiple Choice(四択式テスト)

  • Other Objective Answer Formats(その他の客観テスト)

  • Essays or Problems(筆記テスト)


客観テストは、四択式テスト8個から10個くらいをつないだイメージ。

Essaysは、文章表現による回答を求める論文で、FARE(財務会計)、AUDIT(監査)、LPR(商法)で出題されていました。

Problemsは、計算問題で、FARE(財務会計)で出際される大型の計算と作表問題でした。


試験会場に持ち込めるのは自分の鉛筆と消しゴムだけ。

飲み物や食べ物を持ち込めるかは、州によって違いました。

電卓が試験中に貸し出してもらえるようになったのは1994年5月から。

FAREとAREでのみ。

8桁の小型電卓(SHARP ELSIMATE)で、AICPAが同じ電卓を販売していたので、輸入注文できたそうです。



CBT以降(2004年~2023年)


2004年にCBT試験(Computer-based Testing)になって、プロメトリックでの受験が可能になりました。

とはいえ、日本受験が可能になったのは2011年から。

さらに、通年受験が可能になったのは2020年から。


ちなみに、私は通年受験が可能ではなかった頃の受験生で、四半期に1回のスコアリリーススケジュールで受験してきました。

なので、2024年のスコアリリースが四半期に1回になると聞いても、違和感は全く感じませんでした(少し前まではそれがフツーでしたし)。


日本での試験会場は最初は茅場町と横浜でしたね。

2014年にお茶の水ソラシティ1つに統合され、受験環境は非常によくなったと思います。


2022年からは、日本国籍の日本在住者であっても、どの国の試験会場でも受験できるようになっています。

それまでは、日本かアメリカだけだったので「ちょっと旅先のドイツで受験」みたいなことはできなかったことを考えるとすごい進歩。


USCPA受験ができる国については「USCPA受験ができる国は?【アメリカと日本以外の海外受験の場合】」を参考にしてください。


色々な面で受験しやすくなったと感じていますが、個人的には受験地に関しては自宅でのリモート受験になってほしいと思っています。

家庭の事情や身体的な事情で、日本にたった2ヶ所しかないテストセンターに行けず、USCPA受験を諦めてきた人たちを見てきたからです。


USCPAのリモート受験(自宅受験)は「USCPAはリモート受験(自宅受験)可能?」が詳しいです。


CBT1からCBT3までの特徴


USCPA試験制度の変遷(CBT以降)については、アビタスが資料を作成しています。

アビタスCPA Evolution 説明会資料


2004年にCBT(CBT1)開始。

その7年後の2011年にCBT2といわれる改定。

さらに6年後の2017年にCBT3といわれる改定がありました。



CBT1からCBT3までの変遷における特徴は、総合問題(Simulation)、つまりTBS問題の割合が引き上げられていったことです。

現行の試験では最終的に、MC問題とTBS問題が50%ずつになっていますね。

もともとは、MC問題70%でTBS問題が30%だったのですよ。


ずいぶん前に受験した方(某USCPA講師を含む)が「MC問題だけ回せば合格できる」と言っていたりしますが、その方が受験したときはMC問題が70%だったからでしょうね。

MC問題が70%なら、TBS問題がそこまでできなくても、合格基準の75%に到達するのは、そう難しくなかったでしょう。


CBT1(2004年~2010年)


紙試験からコンピュータ試験になったことで、リサーチ問題が出題されることになりました。

また、エクセルも使用可になっています。


紙試験ではなくコンピュータでの解答となっため、検索したり、パソコン上の電卓・エクセルで計算できるようになったわけです。

実務では検索したり、エクセルで計算することが多いので、試験がより実務的になったと言えますね。

もともと、暗算できるような出題しかしないということで電卓の貸し出しすらしなかった頃もありました。

その頃に比べると、依然としてエクセルを使わないとできない計算は出さないことになっていますが、問題に幅は出たと思います。

エクセルでないとできない計算は出ませんが、エクセルだとラクな問題が出るようになりました(現在価値関連の問題など)。


CBT2(2011年~2016年)


CBT2になり、それまでライティング問題はBEC以外の3科目(FAR、AUD、REG)で出題されていましたが、BECの1科目で出題されるようになりました。

ライティングが必要な科目が3科目から1科目に減ったということで、ライティングが苦手な日本人にとっては朗報ではありました。



とはいえ、BECのライティング問題は、BECという科目自体が「ビジネス知識の寄せ集め科目」であるため、どんな問題が出るのか予想しづらくなったと言えます。

それまでは、公的機関(税務当局など)からの問い合わせにCPAとしてメールで回答するといった問題で、データベースは参照できました。

なので、日本人受験生であっても、ライティングができなくて不合格を繰り返し沼っているという話が出ていた覚えはありません。


CBT3(2017年~2023年)


CBT3では、AICPAがBluprints(ブループリント)を公表するようになり、高次スキルが試されるようになりました。

TBS問題の割合が増えただけではなく、必要とされるスキルも高度化したわけです。

特にAUDは、最高レベルのスキルを求められます(そんなこともあり、理解が中途半端だと沼ってしまうわけです)。



AICPAのBluprints(ブループリント)は「USCPAのBlueprints(ブループリント)とは?何がわかる?利用法と注意点」が詳しいです。


Blurprints(ブループリント)でのスキルレベルは「USCPAのBlurprintsのスキルレベル(Skill Level)とは?効果的な学習で必須」が詳しいです。


CPA Evolution(2024年~)

2024年1月から「CPA Evolution」と呼ばれる試験制度が開始します。


新試験での大きな変更は以下の2点でしょう。

  • 試験科目の変更

  • 選択科目制の導入


CBT4ではなく「CPA Evolution」と20年ぶりの大改定という扱いをされているのは、この2点があるからでしょうね。

他にも出題方式の変更がありますし、試験内容の変更もありますが、そこまで大きな改定とは思えません。


2024年からのBluprintsを見ても、現時点ではそれほど大きな変更には思えないです。

正直なところ、Blueprintsで大きな変更がなかったので、安心したというのが、USCPA受験生をサポートしている立場での率直な感想です。

Beckerの講師も、Blueprintsが出た後のコメントで「驚くような大きな変更はないので、必要以上に恐れる必要はない」と言っていました。


AICPAが「CPA Evolution」として「CPA Revolution」にしなかったのは、「ゆるやかな進化」を目指していて「急速な改革」を目指しているわけではないからなのでしょうね。


2024年1月からの新USCPA試験制度(CPA Evolution)についてはこちらを参考にしてください。


USCPA試験制度の今後


「CBT1」「CBT2」「CBT3」と変遷してきたように、今後「Evo1」「Evo2」「Evo3」のように、受験生にとって負担が大きくなる改定が続くことが予想されます。

たとえば、2024年からはWC問題(ライティング問題)がなくなりましたが、今後再開するとAICPAは明記しています。

WC問題は、効率的で効果的な採点が現時点でできないとの理由で、いったんなくなっただけです。

その方法が見つかれば、たとえば「Evo2」で復活するかもしれません。

また、IT知識・ITスキルが今後さらに重要視されるのは確実でしょう。

USCPAは「会計・英語・IT」の3つができる証明となる資格といわれていますが、ITに関してはそれほど得意ではなくても合格できた気がします。

ところが、今後はわかりません。


USCPA受験生は、できる限り短期合格することを目指す必要があるでしょう。

USCPA試験は、歴史的に受験のハードルは低くなる傾向にありますが、試験のレベルは高くなる傾向にあります。

これは脅しているわけではないです(煽る気もゼロです)。

これまでの試験制度の変遷からしてそうだったからです。


受験が長期化すると、ライフスタイルの変化などで挫折する可能性が高まります。

試験の難化も気にされるのでしたら、とにかく早く受験することを決意し、早く勉強を始め、早く合格してしまうのが一番です。


USCPAに挑戦するか迷う場合『USCPAになりたいと思ったら読む本』をぜひ参考にしてください。

忖度なしにUSCPAという資格があなたにとって必要なのか考えていただく内容となっています。

もしUSCPAに挑戦すると決めた場合は、短期合格のコツも紹介していますので、全科目合格まで参考にしていただけます。


本書を読んでもUSCPAに挑戦するか決まらない場合は、ブログのお問い合わせからお知らせください。

USCPAに挑戦するかどうかのご相談はお受けしています。


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