I didn't give up!!

粛々とその時を待っていた。

正直競馬は苦手だ。全然当たらない。買い方への熱意もそんなにない。毎回詳しい人の話を聞いては乗るか乗らないかを決めるだけだった。

カジノで負けて日本に帰った時、パチンコ屋や競馬場に行って思うのは「ひたすら惨めだな」という事だった。
1万円2万円を賭け、最大で10万円。もちろんクレジットカードを使い尽くして日雇いのアルバイトのお金を毎回賭けるから当然なのだが、このスケールで戦っている自分を遠くから見ては100万200万で燃えていた自分を重ねる。どちらも自分本人だしパチンコも本気で打ってるつもりでも、なんとなく気持ちが入っていないように思える。

ギャンブルは人生ゲームで振る1の目が無いサイコロだ。
1万2万の勝負をしたところで6の目が出ないことなんてわかっている。ただ、振り続けていないと進まない恐怖心から逃げるために振っている。

4月からプラスの目が出なくなった。

僕は仕事にしてもゲームにしても面白さを探す。パチンコの面白さ、ディーラーの面白さ、カジノの面白さ、現場で働く面白さ。面白さを見出すことで惰性の人生に理由をつける。別にギャンブルだけやっていたいワケじゃない。理想の人生でない事を納得し続けるために何でも楽しいと思う事にしただけだ。そして世の中にあるものは大体楽しめる。楽しめない理由があるならばそれこそがコンプレックスで、先に戦わなければならないものだろう。実際僕は学歴コンプレックスが抜けるまでの2年間はずっと空虚だった。燃え殻の人生に意味を探した時、一番最初に見つかるのは金だ。不屈の心が一番最初に見つける生き甲斐は「金持ちになってやる」という火種だ。

僕はその火種からも逃げた。ストレスからも逃げ、真正面を切って戦う事からも逃げ、今に至る。稼いでなくても傷つかない代わりに火の付け方を覚える事を捨てた。

コロナでバイト先が次々と閉まっていった時、安堵感と怠惰がジワジワと体を蝕んでいった。
頑張らない理由ができたと思った。どこに顔を出しても

「仕方ないね」
と言われる度に

「だから金を増やすには賭けるしかないですよね」
とホッとする自分がいた。

そんな気持ちは結果に出る。飯を食って満腹になった後のギャンブルは勝てない。気持ちに甘えていた。


思っていたより社会は頑丈で、すっかり元通りになりつつある。居酒屋もやってるし、求人情報だって探せばちらほら出てくるだろう。

ちょうど1ヶ月前、あの時みんなが何かに怒っていた。たくさんの怒りの中に埋もれた自分がこのまま見つからなければいいと思っていた。

見つかる前にサイコロを振ってしまおうと思った。1ヶ月分の遅れを、怠惰を帳消しにする一撃を僕は日本ダービーに賭けた。もうコロナが言い訳にならない正常な社会になる前に逃げ切ってしまおうと。今まで人の予想に乗っかり続けて負けたので今回は自分で決めた。

結果は負け。必要な金額には全く届かない。
何を買っても負けていたのだろう。

色々逡巡したが勝ち負けの負けがただ続いているだけだった。流れを変えるために僕は完全に働くことにした。コツコツ稼ぐ事も、調べ抜いて勝つやり方も知らない。このやり方しか知らないから働くだけだ。

本当に燃えるために、空を掴めるほどに跳ぶために、今はゆっくりしゃがんで時を待つ。

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