一度立ち止まってみよ
わたしたちは、いつもどこかへ向かって歩き続けています。良かれと信じて、日々刻々、人としての活動をしています。でも一方で、様々な矛盾や不条理も孕んでいます。拡大する一方の人間のエゴは、自然の破壊、経済の格差やテロも生んできました。
今回の災いは、わたしたちの生き方について、絶好の機会を与えてくれているのかもしれません。「一度立ち止まってみよ」と。
ところで「渦中(かちゅう)の人」という言葉があります。水が激しく渦(うず)巻くように、物事が混乱している只中にいる人、という意味です。Aさんは、まさに渦中の人でした。会社を経営しています。従業員は数百人におよびます。
日々の経営に奔走するのは経営者として当たり前のことですが、Aさんは女性問題も抱えていました。このままだと家庭崩壊にもつながりかねません。公私ともども、大きな渦の中でアップアップしていました。彼自身の心と体も崩壊してしまうかもしれません。
見かねてわたしは、彼にこう語りかけたのです。「Aさん、一度、渦外(かがい)の人になってみたら?」。渦外(かがい)とは、わたしの造語で、文字通り渦の外に出ること。喧噪の真っただ中で人は正しい判断はできません。一度、あえて自らを引いて、大きな渦を外側から、静かな気持ちで大観する。そんな意味合いです。
「??」と彼はけげんな顔をしていましたが、急にしゅんとした顔になって「ほんとうにそうですね」とつぶやきました。その後彼は、一週間ほど一人旅に出かけました。それも行ったことのない外国へ。もうあれから数年経ちましたが、会社の経営も家庭も今は落ち着いているようです。
コロナ禍によって、国民全体が好むと好まざるにかかわらず、時代の流れという大きな渦の外へ、わたしたちは押し出された感があります。しかし一方で、すべてのものが慌ただしく動いているときには、見えなかったものも見えてきます。
立ち止まる、とはけっして後ろ向きの行為ではありません。今まで歩いてきた道、そして今から歩いていく道を展望する絶好の機会だと思うのです。
◎英語de元気ing
Stop and look around, then see where you are heading.
一度立ち止まって、行き先を展望してみよう。
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