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【妄想】陰陽師代を請求します【#退職代行】

この物語はフィクションである



朝は6:00に起きる

その時にはすでに会社からLINEが来ている

歯:右手
靴:右足

これは、

・歯磨きする際に右手で歯ブラシを持て
・家を出るときに右足から靴を履け

という意味。

日によって内容は変わるのだけど
だいたい2個くらいの内容が来る。

初めはそういうものかと思っていたが、
どうやらうちの会社だけの独特のルールのようだ。
田舎の友達に聞いても、
そんなことしている会社は無いらしい。


うちの会社が変なのか。


先輩「言うとおりにすれば運気が上がる」

そう言われてなんとなくやっている
特にチェックされるわけでもないし、
何か監視があるわけでもない。
占いみたいなものだ。

以前、通勤中に事故にあった社員がいたらしく
原因が『運が悪い』と会社から判断されたことから
福利厚生として導入された運気アップサービス。

その名は『道しるべ』。

そのおかげでその後目立った事故もなく、
なんなら社運も上がったと先輩たちは言う。

新卒採用で社会人になってまだ2ヶ月。

この生活に慣れるとともに違和感がつきまとう。


※※※

言われた通りに出社し、
言われた通りにデスクに座る
朝礼をこなし、
さぁ、業務だ。

僕ら営業チームは朝から社外にでる。
「1日100社」
それが合言葉。

アナログだけどそうやって足で稼ぐのがこの会社の基本となっている。
1社でも売り込みが成功すれば褒めてくれる
そういうところはしっかりしている会社だ。

会社から出る前に、営業チームはとある場所に向かう。
地下2階にある、特殊な部屋まで。

すこし暗い廊下を抜けて部屋の前で声をかける。


『もうし、もうし、』


そして1枚の紙をドアについているポケットから挿入する。
訪問先のリストだ。

10秒くらいすると、リストと一緒に付箋紙がついてくる。

北から出て
電車にて

先方までの行き方が書いてある。
それに従い移動手段を決めるのだ。
これは単なる儀式で、
ルーティンだ。

その通りにしなくても怒られることはないけど、
従わなかった先輩が仕事をとれたところを見たことがない。

効くのだ。

占いか何かだと思っていたが、そうではないらしく
部屋の中には『先生』と言われる人がいるらしい。
見たことも会ったこともない。

先生は女性だとは聞いている。
先輩たちは何かのタイミングで会ったことがあるらしい。
気さくな女性とか。

しかも外注って。

んー、形式的にこういう堅い雰囲気でやる必要があるのかな。
このお告げってなに起因なのだろう。


うあ!
気にしている暇はない。
営業は仕事をとってきてなんぼだ。

すぐ指示通りに出かける。
ビルの北口から出て電車に乗るのだ。

※※※

今日は新規顧客をとれた。
上々だ。
お告げの通りだと感じる。

いや、そこは自分の頑張りだと思わなきゃ。
自分が頑張った甲斐がないじゃないか。

会社に戻ろうと思ったその時

『もうし、、』

え?

『もうし』

振り返ると女性が立っていた。

歳はわからないが美しい女性だ。

???『あなたね、乱しているのは』

僕『え?』

???『この札を持っていなさい』

僕『あ、はい』
わけもわからず、受け取ってしまう。

女性は「契約完了」と言って去っていった。

受け取った「札」には五芒星が書かれていた。

誰だったんだろう

五芒星

そしてこれどうすればいいん。。

※※※



6ヶ月後…..


これは異常だ。
公私ともに特定の誰かの指示に従って生きている感じが気持ちが悪い。
やることなすこと事細かに決められている
その手順通りに動くと何故か運気がいい。
だから誰もそこから抜け出せない。

僕はトップセールスに選出された。
忠実に「いいつけ」をまもって営業しているからだ。

そのことに吐き気がする。
自分の実力ではない感覚。
自分が誰かの傀儡である感覚。
僕が僕ではない感覚。


僕だけは気分が悪くなっていった。


潮時かもしれない、これ以上は精神が持たない。

※※※



「退職願」は書いてある。

けど、渡す勇気が出ない。
なぜなら退職願を渡すお告げは来ないのだから。
このままではまた明日が来る。
逐一やることなす事を決められた明日が。


【退職代行】

こないだネットで炎上していたやつだ。
きっと僕みたいな人間のためにあるサービスだと思う。


電話してみる
利用には合言葉が必要だ。
事前に調べてある。


???『はい、、』

ぼく『あの、ご相談があって、、』

???『ぬるぽ

キタ!合言葉だ

ぼく『ガッ

???『・・・、退職代行のご依頼ですね?
    われわれ"退職代行ムリポ"はあなたの味方です。
    お辛い目にあいましたね。
    お任せください』

ぼく『よろしくお願いします!!』

令和のXYZ
退職代行といま繋がった。

合言葉は5ちゃんねるで調べておいて正解だった。

その日から僕は会社に出ないことになった。
あとはムリポさんがやってくれる。

正社員だから代金は20,000円。やすい。
2万円で買える自由。
僕は他の仕事を探そう。

翌日にはムリポさんと最低限の打ち合わせを行い
退職が完了することを待つことになった。

二日後


ムリポ「退職、完了しましたよ」

ぼく「ほんとうですか!? よかった。」

ムリポ「我々の役目はここまでです。必要書類と請求書を後日送付しますね」

ぼく「(案外簡単なんだな)、承知しました、会社側は何か言っていましたか?」

ムリポ「そうですね、退職代行は突発的な退職を可能にするものなので人事や総務の方はいつも機嫌が悪くなります。今回はただ、、

ぼく「ただ?

ムリポ「やたらと、"先生がなんというか"とおっしゃられていました。
手続きには関係がないですし、
事実退職手続きは完了しているのでご安心ください」

ぼく「はい、ありがとうございます(不安)」

そりゃそうだよな。
自分で言わずに業者からいきなり退職手続きと連絡が入るのだから
人事も困っただろう。
これくらいのことをしなければ辞めることができなかったのだから、、
悪いことをしたとは思う。

先生か。。結局会うこともなかったけど
これからも会うことはないだろう。
忘れよう。

僕は次の道に進み、自分の人生の手綱を自ら握るのだ。

ありがとう、退職代行ムリポ

退職代行ムリポ ありがとう


※※※


僕は転職エージェントに登録して、
紹介された企業の面談をこなしていた。

退職金もちゃんと出たのでなんとか暮らしていけていた。
お金がまだあるうちに次を決めないと。

一応のトップセールスだということでいい条件の会社を選ぶことができそうだ。
退職代行を使ったことはわざわざ自分からは言わない。
やめた理由は必ず聞かれるが、
やめ方について聞いてきた企業はいまのところない

世間は狭いから噂は流れると思うが、それはしょうがない。
そのリスクを負ってでもぼくは次のステップへ行くべきだと思っていた。

次の面談準備で僕はカフェに来ていた。
中身の薄い職務経歴書を見ながら、志望動機を考える。


『もうし、、』


寒気がする

『もうし、、』

顔を上げるとあの時の女性がいた。
彼女は僕の前に座って、ジッと見ている。

???『やるじゃない、自分で道を拓くなんて』

ぼく『あなたは??あのときの?なんで?』

???『わたしは、あなたがいた会社で"先生"をしていたの』

ぼく『ああぁあ!!』

先生『取り乱さないでよ、大丈夫よ』

ぼく『ぼくはもう社員じゃないから、あなたのいうことは聞かない

先生
   『
    それもわかっている。
    あなたにこれを渡しに来たの、
    前に渡したセーマンの札
    効いたでしょ?
    だから、ちゃんとお願いね。
   』


請求書 
ぼく殿  陰陽師代      1,200,000円也

振込先 楽天銀行 サルサ支店 xxxxxxxxxx 


先生『支払い期限は月末ね、よろしく』




退職金と同額だ





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【あとがき】

ネタ切れだ。
いい感じのニュースがきたのでどういう状況だったんだろうと妄想しながら書いたらこうなった。
物語を書くって難しい。作家さんたちすごいよね。

退職代行は本当に最後の最後、
命を落とすくらいなら、ってレベルなら使ってもいいと思いますが、
そうでなければ表向きは感謝の顔をして自分から退職願を出す方が
あとあとのことも考えるといいのではないかなと思います。
人生長いし世間は狭いんで、


しかしながら面白いニュースだった。

「退職したいと伝えたら陰陽師代120万円を請求され、まともに話ができる状態ではない」

https://news.livedoor.com/article/detail/26393336/

陰陽師についてはこの1分しかなかった。なかなかなタイトル詐欺。
どういう会社なんだろうと妄想した。

きっと吉凶を陰陽師が占ってるのだろう。とかね。

セーマンの五芒星はみなさんご存知の安倍晴明にルーツがあるお守りみたいなもの。
もう一つ有名なのは蘆屋道満にルーツがあるドーマンでしょうか。
こちらの方は早九字を切る際に使うものですね。

右がドーマン

もともと九字を切るとは
九字護身法といって、主に修験道において「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の九字の呪文と九種類の印によって除災戦勝等を祈る作法
と言われているものです。
印を組んで、最後に指二本の刀印で切ることで完成する。

それの簡略版が早九字です。

セーマンは、縦横の格子状になっていて、それにあわせて
縦横に刀印で切るわけですね。(わかる??)

んで、蘆屋道満は土着の陰陽師で修験道にルーツがあるそうな。
安倍晴明は藤原道長の家臣みたいな感じで都にいたわけで、

エリートの安倍晴明と
民衆の味方の蘆屋道満って感じでしょうか。

踊る大捜査線の室井さんと青島みたいなものですね(違)


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