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ハライチ岩井と暮らしたら元に戻れなくなってきた


”岩井勇気”


この文字列だけを見て、漫才コンビ「ハライチ」のボケ担当・岩井勇気にたどり着ける人ってどれくらいいるんだろう。


■世間では、ハライチといえばツッコミ担当・澤部佑のイメージが強いだろう。万人受けするポップなキャラクターで、あらゆるテレビ番組に引っ張りだこ。ピンでの出演も多い。

■対する相方の岩井勇気。漫才中は口数が少なく、最低限のアクションしかしない。どちらかというと「ハライチのハライチじゃないほう」に属するかもしれない。

というか下の名前、”勇気”なんだ。めちゃくちゃ良い名前じゃん。勇気。


■私は今、岩井勇気と寝食を共にしている。


…は?

開始早々、読者の何言ってんだコイツという顔が浮かぶ。やめてよ。人間の表情で一番怖いんだよそれ。

■寒さで頭が狂ったのかと心配してくれる人の為に予め断っておくと、心身ともに健康だし今年は暖冬。

■主人公を任意の名前に設定して芸能人とのイチャラブを楽しむ夢小説でもない。

■正確にいうと、起床後・通勤中・移動中・食事中・就寝前という生活のほとんどの時間を、岩井勇気の声を聴きながら過ごしている。

なんか余計ヤバい感じになっちゃった。でも本当だから仕方ない。

きっかけはたまたま聴いたラジオだった。


岩井勇気のいる生活①~ラジオ番組「ハライチのターン!」~

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その名の通り、ハライチの二人がパーソナリティを務める番組である。

当然、ラジオにおいてもトークの比重は澤部に傾くだろうと思われた。この番組は澤部の頑張り次第だと。私もそう思っていた。

ところがである。

■衝撃を受けた。逆だった。実際に聴いてみるとわかる。トークの流れを操っているのは圧倒的に岩井勇気。ラジオの岩井勇気、輝きまくっている。すごい。外れがない。

■番組の中でそれぞれ一人ずつメインで話す時間があるんだけど、岩井勇気が話すテーマのチョイス、目の付け所、言い回し、どれも見事で惚れ惚れする。ひとつひとつがそのまま漫談として成り立つ勢い。個人プレーでガンガンシュートを決めまくる。特に「AIスピーカーの話」は面白すぎて聴きながら降りる駅を2度間違えた。

■寡黙に見せかけて負けず嫌いの点取り屋。え?これって…

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流川楓じゃん。収録を生で観戦したら好きになっていたかもしれない。危なかった。流川みたいな男は沼だ。ハマッてしまったら赤木晴子と飲みに行きたい。


■いや嘘。晴子とサシ飲み、たぶん無理。なぜなら晴子は天然だから。私は天然な人との二人っきりの時間が苦手だ。

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花道からの恋心にも気付かず「桜木君と流川君って、どうしてあんなに仲が悪いのかしら…?まったくもう」とか言えちゃうタイプの鈍い女と2時間も飲めない。おそらく2杯目あたりから死んだ目で相槌を打ってしまう。

■話が脱線した。

■もちろん澤部の相槌の上手さによって、笑いが増幅されているのは間違いない。澤部メインの時間ももちろん面白い。

■しかし岩井勇気の話術に衝撃を受けた私は、四六時中このラジオの岩井勇気パートの録音を流しながら生活するようになってしまった。

シャワー後、髪を乾かしながら岩井勇気。化粧しながら岩井勇気。

電車に揺られ、ぶらり岩井勇気。

帰宅後、ただいまの岩井勇気。おやすみ前のナイトタイム岩井勇気。

さらに、それだけでは飽き足らず、私は次の岩井勇気を探した。なんかないのか。もっと刺激をくれ。


岩井勇気のいる生活②~岩井勇気が書いた本~

画期的な「ノリボケ漫才」の発明含め、ハライチの全てのネタを書いているのは岩井勇気である。しかし、人に読ませるための文章は書いたことがなかった。それでも思うままに書いてみたところ、結構書けちゃったらしい。そんな器用人間、岩井勇気が出した初のエッセイ本である。

■おいおいおい。本出してるのかよ。買う買う。はい。Amazonポチ。

■買って2時間で全部読んだ。ほんとに全然書けちゃっていた。この本がまた面白い。

◼︎ラジオに支配されていた”聴覚”だけでなく、ついに”視覚”までもが岩井勇気に侵食され始めた。

■芸人が話すエピソードトークといえば、たいていヤバい知り合いがいるとか、風俗でこんなプレイしちゃった~みたいな下ネタとか、パンチのあるネタが受ける。特に貧乏時代の苦労話なんかは、大衆にとっては大好物、まさに垂涎もの。

■ところがこの本は、そういうトンデモエピソードが全然出てこない。取り上げられる題材というと、

・新しい組み立て式の棚を買って組み立てる話
・インスタントラーメンの汁を水筒に入れて持ち歩く話


あたしンちの新刊??

平穏だ。フーゾクのフの字も出てこない。というか組み立て式の棚を組み立てる話ってなんだ。平穏すぎて小泉進次郎の構文になってしまった。

■インスタントラーメンの汁を水筒に入れて持ち歩く話ってあんた。これがそのへんの芸人の話なら、ラーメン屋行って店員がよろけてラーメンぶちまけちゃってー!隣の客にかかっちゃってー!それがめっちゃ見た目いかつい人でー!くらいの展開になりそうなもんである。

■岩井勇気は違う。今ハマってるインスタントラーメンがあるから、いつでも汁を飲めるように水筒に入れて持ち歩く話。それだけ。静。ミスターポポの移動の如く、圧倒的な静。たったそれだけの出来事を、なぜこんなにも面白くできるのかとひたすらに驚く。


岩井勇気のいる生活③~岩井勇気の生きやすさを真似る~


散々聴いて読んだら、わかってきた。

■岩井勇気は、世の人々がなんとな~~~~~く嫌だな、とか、口には出さないけどうっす~~~~~ら不快なんだよな、と感じていることを、人の500倍くらいの感度でキャッチして、明確に言語化する。ウスラ不快センサーが半端ないのだ。

例えば、エッセイ本の中で「同窓会に誘われても行かない」という記述がある。彼が同窓会を苦手とする理由を簡単にまとめた。

・何十年も同じ話題を繰り返しているのに、毎回同じところで笑っている同級生達が怖い。「学生時代は楽しかった」という記憶に縛り付けられた呪いのように見える。
・同窓会を主催する人は、仕事や年収など、自分の現状を聞かれたいだけ。聞かれて答えたいのだ。自慢したいのだ。彼らにとって同窓会は、「周りと比べて自分は上だ」と認識して悦に浸るための場。
・本当に自分の人生に満足している人なら、自慢したいなんて思うだろうか。そもそも他人と比べて自分が幸せかどうかなんて、満たされている人にとってはどうでもいい。そんな人は同窓会なんて開かないし求めていない。
・同窓会を主催する人は、学生時代の楽しさのピークを更新できず、同窓会で昔の仲間に羨ましがられることでしか、自分を認めてやれない人間。


■ボ、ボロクソだ〜〜〜!!!そう、岩井勇気はメチャクチャに尖っている。同窓会に親でも殺されたのかと思うほどの切り捨てっぷり。

■同窓会で学生時代のお調子者たちが騒ぎ、それを眺める女性陣が「またあいつ、バカやって~」と笑う。この和やかなシーンを岩井勇気は「楽しかった記憶に縛り付けられた呪い」と揶揄する。

■しかし悲しい哉、これが非常に痛快であることもまた事実。岩井勇気の指摘は、「この話つまんね」と感じながらも、楽しい場を壊さないためにニコニコしているような層にメチャクチャ響くのだ。
(※今年からどこにも呼ばれなくなりそうなので言っておくと私は同窓会好きです)

■ただのヤな奴じゃねえかと感じる人もいるだろう。しかし、私たちはここで岩井勇気から生き方のコツを学ぶことができる。

■そもそもこれは、”同窓会で嫌な思いをしたから、ここで憂さ晴らしをしてやろう”という話ではないのだ。

彼は”嫌いだから同窓会に行かない”とハッキリ明言している。お金と時間をかける価値がないと判断した場には、初めから行かないのだ。

このさっぱりした考えが彼の良いところである。ストレスの原因を避けることで、誰にも迷惑をかけず、よりよい環境に身を置く。ストレスになるのを知った上で出席して、あとからネチネチと愚痴を垂れるほうがよっぽど体に悪いではないか。

■朝から晩まで岩井勇気の考え方に触れていると、私もこれくらい正直に生きてみよっかな~と思えてくる。自分にとって本当に価値のあるものだけに、時間とお金を使いたい。

社会のしがらみに揉まれる現代人は、岩井勇気から生きやすさを学ぶべきかもしれない。


◼︎ここへきて、ついにマインドまでもが岩井勇気に支配され始めた。ノー岩井勇気ノーライフ。He is Brave.


岩井勇気のいる生活④~禁断の園~

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■生活の軸が岩井勇気になった私は、その日もいつものようにハライチのラジオを聴いていた。

■午後から用事があったが、朝からヨガに行き汗をかいていたため、出かける前にシャワーを浴びる必要があった。

■どうしても岩井勇気のトークの続きが気になった私は、スマホをジップロックに入れて風呂場に持って行くことにした。妙齢の女がそんなことをしていいのかと自身に問う判断力は、もはや残っていなかった。今の私にとって、風呂場という禁断の園(その)に岩井勇気の侵入を許すのは容易かった。

■熱いシャワーを浴びながら、岩井勇気のトークを聴く。格別である。こりゃ最高だなと思いながら頭を洗っていると、突然、風呂場の扉がバーン!!!と開いた。

■驚いて振り返ると、おびえた表情の祖母が立っている。


「風呂場から男の声がした」


全裸で泡まみれの私と祖母が見つめ合う中、岩井勇気の軽快なトークだけが風呂場にこだましていた。


■祖母との二人暮らしに岩井勇気を迎え入れるのは、少々刺激が強すぎたようです。


しばらくはお風呂で聴くのは控えよう。







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