見出し画像

予期せぬ偶然が繋ぐ、図書館の輪。

11月29日。昼過ぎには暖房をつけるほどの肌寒さ。寒さに弱い静岡県民には嫌な季節だ。

家を出る前に動画のアップロード作業をしていた。早く家を出なけれないけないのに、これがなかなか終わらない。時計を見てみると自宅を出るギリギリの時間。泣く泣くアップロードを諦め、家を出る。

今日は一箱本棚オーナーの岡崎さんが、お茶振る舞いをしてくれる予定の日。「このままだと遅刻だなぁ」と思いた矢先、道中で電話が鳴る。案の定岡崎さんだった。

「どこにいますか?」と聞かれると思ったら、どうやら開館待ちをしているひとが何人かいるというのだ。焼津駅前通り商店街は日曜日休みのお店がほとんどで、日曜は週のなかで一番人通りが少ない日。「今日に限って開館待ちとは...」と焦りながら「さんかく」へ急ぐ。

遠目に「さんかく」が見えると、たしかに2−3人の人影があった。急いで自転車を降りると、「どうも李です!」と声をかけられ、よく見みるとarg(アカデミック・リソース・ガイド)の李さんだった。(ちょうど先日メッセージのやり取りをしたところで、焼津での仕事の前に「さんかく」に寄ってくれたのだった)

驚いて立ち話をしていると、開館とともに次から次へと利用者の方がやってきたり、新規で一箱本棚オーナーになりたいという方も現れたりと、慌ただしい朝。お茶を振る舞う岡崎さんも忙しそうにお湯を沸かしては、お茶を淹れていた。李さんとゆっくり話す間もなかった。

気付くとすでに昼時。「お腹が空いたなぁ」と思って、お馴染みの山正亭(商店街の中にある洋食屋さん)で、チキンソテー弁当を注文。弁当ができるまで30分くらいかかるというので、一時「さんかく」に戻る。ちょっとすると、顔なじみの一箱本棚オーナー幹人さんがやってきた。

幹人さんと雑談をしていると30分ほど経ったので、山正亭でお弁当を受け取りに行く。美味しそうなお弁当を手にしたものの、臭いが本につくのを気にして外で昼食をとっていた。

スクリーンショット 2020-11-29 21.15.05

半分くらい食べたところで、新規で「午後から」と約束をしていた新規の一箱本棚オーナーさんが「こんにちはー!」とやってきた。「ちょっと待っててください!」と伝え、ササっと残り半分を胃にいれ、本棚について説明をした。

だいたい説明が終わったところで、入口から「ここはどういう仕組みなんですか?」という声が聞こえ、目を向けてみると女性の方が幹人さんに話しかけていた。「詳しいことは館長に」と幹人さんから紹介を受け、話をしてみると、愛知県の刈谷市からたまたまここに立ち寄ったのだという。

お子さんのスポーツの試合で愛知から静岡に応援に駆けつけた道中で、たまたま「図書館」という文字を見つけ、思わず車を降りてしまったらしいのだ。その方のなかには、もともと私設図書館をつくる構想があり、ちょうどプロジェクトチームを立ち上げようと考えていたタイミングだったこともあって、「さんかく」にビビッときたらしい。

その場をともにした新規の一箱本棚オーナーさんも偶然の出会いを楽しんでいる様子で、30分もなかった時間だったが、一気に仲良くなってなんとも「さんかく」らしい雰囲気を過ごすことができた。

「さんかく」はいつもこんな素敵な出会いで溢れている。自分でも驚くほどに、小説のような出会いがたくさん生まれ、そして繋がっていく。

実は夕方になって「昼間は時間がなかったから」と、お子さんの試合の終了後に刈谷から来た女性がもう一度「さんかく」を訪れてくれた。一通り仕組みについて説明したり、今日の偶然のすごさについて語ったりもした。きっとあのひとは、刈谷にも素敵な図書館をつくるだろう。

こんな予期せぬ偶然があるから図書館はやめられない。自分はどちらかと言えば、ひとつの場所に留まるのが苦手な人間だ。いろんな場所に出て、新しいことを立ち上げる「非日常」が好きだ。

「さんかく」の運営は日常のように見えて、こんな非日常の連続性のなかにある。こんな場をつくれたことに本当に感謝している。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?