オーディブルを2ヶ月聴き続けた感想

先ほど、kindleオーディブルを解約した。いやはや、濃密な2ヶ月だった。
幾つかの観点から振り返っておこう。


良かったコンテンツ

最後まで聴いたのは21冊。特に印象深かったものについて、短くコメントしていこう。

『成瀬は天下を取りにいく』『成瀬は信じた道をいく』

成瀬あかりという、芯の強い、我が道をいく少女の活躍を追っていく。その生きざまに関心したり、あまりのアクの強さに苦笑したり。抜群に楽しく、心地よく聴けた。

『プロジェクト・ヘイルメアリー』

圧巻のSF。ゆる言語学ラジオで執拗にプッシュされていた回があり、聴いてみた。まず知性とユーモアがあり、難局に立ち向かい続ける主人公が最高だ。地球が、あるいは主人公が置かれている状況が科学的な手続きで明らかにされていく様子には、とんでもないワクワク感がある。そして何より、異星人との友情である。たまらん。本当にたまらん。期待にたがわぬ最高のエンターテイメントだった。

著者のアンディ・ウィアーは凄い。彼に注目して作品を追っているわけではないのに、気づけば3作品目である。1作目の『火星の人』が映画となった『オデッセイ』は大好きな映画だし、2作目の『The Egg』はKurzgesagtが動画化にしたものをみて、深い感銘を受けていた。そもそも小説をほとんど読まない自分だが、彼の活躍には今後も注目していきたい。

『精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』

「幸福とは何か?それはセロトニン、オキシトシン、ドーパミンの脳内物質によるものだ」という物質ベースの幸福論。「そんなのアリかよ」と思いつつ、内容としてはポジティブ心理学の知見などとも整合する納得感のあるもので、かなり参考になった。溜め込んでいた知識に別側面から光を当てることができたという感じだ。

『熟達論』

為末大による、集大成的な一冊。彼自身の競技人生や、様々な熟達者との交流を踏まえると、何かに熟達していく過程は5段階に分けられる…というもの。

テーマ自体にも興味があったし、為末氏の競技人生を引用しながらの説明がとても魅力的だった。本書を機に、オーディブル内の熟達に関する本を更に2冊聴くこととなった。

2か月間の感想

得た物は多い

先に挙げたように、様々な良著との出会いがあった。オーディブルのラインナップ内で良さそうなものを…という探し方をすることもあって、普段なら手に取らないような本に挑戦できたことも大きい。

どんなシチュエーションで聴いていた?

自分がオーディブルを聴いたシチュエーションは主に3つだ。

通勤中:これは言わずもがなである。自分が音声コンテンツにハマったのも、通勤経路が変わってkindle読書が小間切れになってしまうためだった。

単純作業的な業務中:仕事時間の中には黙々と手作業をするような時間もある。そういうときのお供にもしていた。

子どもを寝かしつけたあとの息抜きゲーム中:子供の寝かしつけが終わった21時頃から、24時ぐらいまでが自由なゴールデンタイムである。ここでさらに仕事を進めたり、勉強したりできる。

だが、疲れているときにはこの時間をストレス解消のルーティンにあてる。風来のシレン5の「原始に続く穴」(もっと不思議なダンジョンに相当)に潜り続けるのだ。もう30回以上は打開しているだろう。脳みそをほとんど使わなくても概ね適切な行動をとり続けることができる。

もはや音声は必要ないので、オーディブルを聴きながら無音のシレンをプレイし続けた日も多かった。

実用書にはそこまで向いていない

今回、かなり実用書を聴いたが、自分にとって新規性が高い内容ほど、音声でしっかり理解するのは厳しいという感触があった。30秒戻るボタンもあるので聴き返しはできるのだが、それよりも文字列を見ながら吟味したくなる。じれったかった。

聴けて良かった!という実用書は複数あったのだが、特に気に入ったものは結局書籍を購入することにした。

小説には向いている

一方、小説を聴くのはとても楽しい体験だった。プロのナレーターによる演技がとてもよく、女性ナレーターが男性を、男性ナレーターが女性を演じていても違和感なく聴けた。普段なら高速で処理してしまいがちな情景描写も、オーディブルでならしっかり情報として受け止められた。

バテた

2ヶ月限定無料に挑戦すると決めた時、最大限に活用してやろうと心に決めた。加えて、読書記録を付け続ける事で、総体としてオーディブル沼にハマっている自分を表現してみる、ということもやってみたくなった。

かなりハイテンポでオーディブル記録を更新でき、いい手ごたえだった。だが、最後には色々とバテてしまった。

なんというか、短期間で新しい情報や考え方に触れすぎてしまったのだろう。脳は無意識下でそれらを整理分類しておいてくれるらしいが、無意識さんも「際限なく散らかしすぎだろ!」と怒ったのではないだろうか。最後の10日間は新しいコンテンツを聴き始めては、1時間で飽きるということを繰り返していた。

そこで、ならば最後は既読の小説に浸るために使おうということになった。成瀬シリーズや藤原伊織の「ダックスフントのワープ」などを聴き返し、2ヶ月のオーディブル生活は心地よく終了した。

2年ぐらいしたら、この飽きている状態は解決しているだろうし、またラインナップも充実しているだろう。そしたら有料でもいいから、また2ヶ月ぐらい楽しんでみようか。

そんな距離感が自分にはちょうどいいらしかった。

さて、2か月間溜め込んだポッドキャストがここから楽しみである。