武尊vs天心に思うこと

最近、第2次格闘技ブームとでも呼ぶべき状況になっており、今日はthe matchのPPVを購入して、ずっと観ていた。

色々と刺激的な試合があり、野杁vs海人とか山崎vs原口とかもすごかったんだけど、やっぱりメインへの感情移入はすごかった。

試合展開

試合自体は、あまり良いものではなかった。1R、武尊が自分らしい試合を出来てなくて、もちろん天心のうまさが大きな要因なんだけど、武尊が緊張というか、イレコミすぎというか。

2Rになると、アクシデントのバッティングとか、武尊が天心を投げてしまったりとか、「自分が勝たなくてはいけない」という武尊の気持ちの入り方が悪い方向に出てしまっていた。

3R、ようやく武尊らしくなってきて、もらいながら距離を詰めて、チャンスを作れるかも?と思った頃には時間切れ。武尊応援だった自分からすると、悲しかった。

ただ、オタクにとって格闘技の試合というのは、リング上の光景だけで楽しむものでもない。この試合に至るまでのドラマを知り、そして判定が読み上げられたあとのドラマをみて、しゃぶりつくすのだ。

武尊の自伝から見える人物像

少し前、武尊の自伝『光と影 誰も知らないほんとうの武尊』を読んだ。ここから見える武尊の人物像というのはリング上の獰猛な姿とは違い、純粋で繊細な理想主義者という感じだった。

彼は「K-1を背負っているから負けてはいけない」と心の底から思っているし、試合で負けることは死を意味すると本当に思っている。

モチベーションとかそういう次元じゃなく、本当にそう思っているのだ。

元ヤンの母親にスジを通すように仕込まれた、めちゃくちゃ厳しい空手道場の先生にしごかれた、東京に出てからも同門と家族のような関係で切磋琢磨し続けた。

その中で育まれた、純粋すぎるぐらいの価値観の持ち主なのだ。

そんな彼の精神性をしったうえで、彼の緊張ぶりとか、2Rにラフになってしまう姿とか、負けた後の天心との会話とか、退場まえに泣き崩れる姿とかをみると、強く心を動かされるものがあった。

そういう観点からみて、この試合はやはり観るに値する、すごい試合だった。

武尊の価値観は本当に純粋なものだ。そして、その純粋な価値観が突きつけてくる「勝ち続けなくてはいけない」という残酷な要求を、武尊はずっと乗り越えてきた。だが、今回はうまく行かなかった。

今、彼は失意の中にあるだろう。だが、武尊の価値観というのは、狭い世界の中で育まれた、危うさをはらんだものでもある。

今回の敗北がいい形で消化され、肩の荷が降りた武尊の姿を見られると嬉しい。