【字幕投稿報告】Kurzgesagt:The Internet is Worse Than Ever – Now What?

Kurzgesagtの「インターネットは過去最悪だけど、どうする?」という動画について、字幕を投稿した。早めの反映を期待する。

雑感

面白かった。この動画の価値は大きく2つあるだろう。

1つはSNSのろくでもない部分を浮き彫りにしてくれたところだ。サムネイルからして破壊力抜群だし、SNSが分断を煽る構造になっていることがわかりやすく示されている。

もう1つは、SNSがなぜ分断を生み出すのかの理由付けが新鮮だったことだ。一般にはフィルターバブルとエコーチャンバーで説明されていたと思うが、それ以上に進化心理学的な説明に重きを置いていたわけだ。

Kurzgesagtは進化心理学を度々取り扱っている。人間が何かを美しいと感じる理由や、孤独を感じる理由について、進化心理学からの解釈が行われていた。

自分の浅い理解だと、進化心理学とは「人間が〇〇という性質を持っているのは、そういう性質を持っていた方が子孫を残しやすかったから」と解釈するようなアプローチの学問である。

個人や集団の在り方を考える際、人間の本来的な性質を考慮することはやっぱり重要で、進化心理学の視点というのは面白いなと思っている(※)。
「人間の本来的な脳の在り方とSNSは相性が悪いのだ」という結論は、かなり納得のいくものだった。

解決策の提案が古き良きインターネットだったことには笑ってしまった。
キリ番をゲットしてドギマギしたり、格闘家のブログの更新が待ち遠しくてF5押しまくったりしたなぁ。家族に1台しかないWindow meで2chをみて、親の前でブラクラを踏んで強制終了とかしたなぁ。

個人的には、それでも解決策はもうひと粘り考えたいなと思った。SNSで発狂しないことが大事なら、発狂しない運用というものもある。

それに「人間が本能的に多様な集団と共存することは難しいのだ」ということを認めたうえで、それでも教育や社会制度でなんとかしようとするのが王道ルートである。今回のKurzgesagtは、裏を返せば王道ルートへの諦めでもあるのだ。

自分のSNS観

SNSは確かにダメな部分が多いなと思う。

何年も前、旧アカウントでtwitterを始めたばかりのとき、特定の本への批判を書いたり、あるアカウントに失言に引用RTで批判を加えたことがあった。するとあっという間にRTが増え、フォロワーが増えた。

それは確かに快感だった。それに、新規のフォロワーは同様の発言を自分に期待しているような気もして、また何かに噛みつかなければならないという気分にもなった。危ないところだったかもしれない。

幸い、賢い人たちをフォローしていた。その人たちが時折、「まともなSNSの使い方はこうですよ」という感じのツイートをしてくれたおかげで、先鋭化していくことのリスクなどを早い段階で把握できたように思う。

また、長期的にtwitterを続けたおかげで、最初は興味深い議論をしているように見えたいくつかの界隈も、ずっと同じ議論をリピートしており、堂々巡りにすぎないことがわかってきた。

今はコンパクトに、ストレス解消と最低限の情報収集に使えていると思う。

まあKurzgesagtの字幕関係では、もっとフォロワー増やしておけばよかったと思うこともたまにある。「〇〇の動画、字幕ついたから気になってたひとはチェックしてー」というような内容を広く届かせることができればもうちょっと良かったかな。

でもまあ、自分はコレでいいのだと思う。

字幕づくりの苦労

色々と難しい動画だった。

自分はかなり原文に忠実に訳したい方なのだが、忠実に訳すと日本語としてぎこちなくなってしまうタイプの文章が多かったのである。

原文を尊重すれば単純に動画の視聴体験が劣化する。
意訳をすれば字幕班の独りよがりと批判されるかもしれない。

そんなジレンマの中で、「原文よりだけど、その割には読みやすい」というようなポイントを狙い、言葉をこねくり回すのである。

ただ、先日きっかけがあり、字幕作成のプロが書いた本を読むことができた。

考え方の説明もわかりやすく参考になったが、なにより後半の実例をモリモリとしめしたパートが凄かった。まあこれについては、いつか単発記事を書きたいのでここでは詳細は省く。

この本を読んで、「意訳をするのは別に独りよがりではないな」とか「これぐらいやっていいんだ」という客観的なラインを一つ、ひくことができた。

なので、今までよりも少しだけ踏み込んで意訳をしている。
もちろん、kurzgesagtが科学チャンネルであることへの尊重が第一である。そこは踏み外していないので安心してほしい。




(※ただ、進化心理学的な仮説というのは素人でも無限に立てられるので、しっかりとした裏付けが確認できないものは無視した方が良さそうだとも思っている。)