平野啓一郎論 第三章 ㈢ 身体、場所と言葉
【警告】
小説作品における物語の重要な部分に触れています。未読の方は十分に御注意下さい。
このテキストは『平野啓一郎論』の第三章です。
場所の言葉第一章で述べたように、分人主義の核心は「個人は分割可能だが、他者との関係は分割できない」という点にある。
『決壊』の佳枝は、お腹の中の我が子に話しかける。約束を守って予定日にきちんと生まれてきてくれた我が子を自分の分身のように感じる。それは他者でありながら自分自身でもある。
繰り返すが「個人は分割可能だが、他者との関係は分割でき