映画レビュー「ミスターガラス」

あまりワクワクしないシャマラン・シネマティック・ユニバース
(重要なネタバレあり)

★3

ちょっと前に見た「スプリット」がなかなかインパクト大で、
多重人格犯罪者ケビンのファンになりそうになっていた所へ
エンディングで「アンブレイカブル」の続編だった事がわかり、
さらに続編が作られてるという事もわかって超ビックリ。
遅ればせながらこれは見なきゃ!という事で本作の視聴に至りました。

聞く所によると、
「スプリット」に登場したケビンは
元々は「アンブレイカブル」に登場する予定の
悪役キャラクターだったそう。
「スプリット」を見てる時は全くそんな事を感じないほど
独立した作品として魅力的でしたけどね。

なので「スプリット」の後に
もう一度しっかりと「アンブレイカブル」を見て
それからこの作品を鑑賞しました。
以下、重要なネタバレもあります。



なるほど~。
簡単に言うならば
シャマラン流シネマティックユニバースという感じですかね。

ストーリーの最初の方で
もういきなりダンとケビンが出会ってしまって対決がスタート。
え?こんなハイペースでどう進むの?と思っていたら
あっさりと2人とも警察につかまり
「アンブレイカブル」の黒幕イライジャも入っている精神病院に収容されてしまいます。

で、そこで担当の精神科女医が3人に対して
「あなたたちの能力は実際にはないんです。思い込みです。」と、
前作までの出来事を全部なかったことにする勢いで3人のキャラを全否定してくるんですよ。
でもってダンやケビンは「そうなのか?」と自問を始めてしまう始末。
え?これ、お話的にどうなるの??

正直もう少し派手目な展開を期待していたので、
せっかくのオールスター勢揃いの割に地味な展開だな〜と感じていました。

それでも後半になってイライジャが行動開始をすると
ようやく少し熱い展開になって来ます。
ケビンにさらわれたケイシーや、ダンの息子、
イライジャの母親も絡んで来てさらにオールスター感がアップ!
ちゃんと全員オリジナルキャストなのが素晴らしいですよね。
こういう部分大事ですから。

そしてラストはイライジャの仕組んだシナリオに乗っかり、
ついにダンとケビンの決闘が高層ビルで行われる!・・・

・・・のかと思いきや、そうはならず、
精神病院の前の庭で戦いが始まってしまうのですが、
ある程度の肉弾戦が展開した後は、
なんとなんと、精神科女医の助手たちの攻撃によって
ダンもイライジャもケビンもみんな死んでしまいます・・・。
(イライジャだけはケビンがやったんですが)

えーっ!!
全員死なせちゃう???

面白く展開したらさらに続編もある?なんて考えてたので
ちょっとこの終わらせ方はショックでしたね。

みんなキャラが立ってて好きだったのに!

とまあ、
あっけなく全員いなくなってしまうのですが、
ストーリー的には
精神科女医は実は超人の存在を抹殺する秘密組織の人間だった
という事がどんでん返し的に明かされます。
でもまた更なるどんでん返しがあって、
イライジャが超人のいる証拠になるカメラ映像を
全世界に向けて発信するように仕組んでいたので
結局超人の存在が世界にバレてしまうという所で映画は終わります。




ジェームズ・マカヴォイの快演は相変わらず素晴らしく
今回はさらに長回しでどんどん人格が入れ替わる演技も披露。
本当に凄いです。

ダンの息子スペンサー・トリート・クラークも青年になりましたが、
引退直前のブルース・ウィリスはどうしても衰えを感じる印象でしたね。
2人ともリアル加齢なので説得力は増しているとも言えますが。
サミュエル・L・ジャクソンは健在。
アニャ・テイラー=ジョイは相変わらず可憐だったけど
今回は少しケイシーの役どころがケビンの唯一の理解者という立場に限定されすぎて少し魅力薄な感じでした。



・・・
まあ~
正直この作品は、
元々三部作として考えられていたという割には
無理やり作ったようなストーリーだと感じましたね。

「アンブレイカブル」も「スプリット」も
それぞれ独立した作品として相当面白かったので、
それら2作品の続編ならどれほど面白いんだろう?と
期待値が上がり過ぎた面はあると思います。

おそらくシャマラン監督は
従来のヒーロー映画のキャラクターの描き方には飽き足らず
彼なりの解釈でのヒーロー像とヴィラン像を描いて見せたんだと思います。

そこに一応の納得はできなくないものの、
この「ミスターガラス」が作品として面白いか?と言われると
単独作品として評価のしようもなく、
うーーーむと唸ってしまう自分がいます。

いつものシャマラン作品にある
独特のねっとりしたリズムも本作ではあまり感じられず
立ったキャラをたくさん出し過ぎて
処理しきれなくなっているような印象すら受けました。

シャマラン流シネマティックユニバースと表現したのは
マーベルみたいな作品群とは対極にいると思う
シャマラン監督の作品でさえも、
多くの個性的なキャラを登場させると
どうしても印象は大味で散漫なものになってしまうんですね・・・
という皮肉も多少込めています。



まあ、とにもかくにも
これにて「アンブレイカブル」から続いた
「シャマラン超人三部作」は終了。


結局は「悲劇の骨折男」イライジャが全ての元凶だった訳ですが、
ダンも、ケビンも、イライジャも、
その生きづらかった人生から解放されて
ぜひ安らかに眠って頂きたいと思います。



優れた「世にも奇妙な物語」を2つくっつけたら
意外とワクワクしない所に着地してしまった。

そんな印象の作品でした。

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