映画レビュー「Mr.ノーバディ」

中年男性に刺さりまくる(?)痛快バイオレンスアクション
★3.5


知人の勧めで全く予備知識なしで鑑賞。

冒頭いきなり主役のボブ・オデンカークが傷だらけで登場するのですが、
もうその佇まいがビックリするほどカッコいい。
そしてBGMに「悲しき想い」が流れて
「Please don't let me be misunderstood.(私を誤解しないでください)。」・・・
この作品を見るまで彼の事は全く知らなかったのですが、
この冒頭のシーンだけでなんだか心をガシッと鷲掴みにされた感がありました。

そして彼は聞かれる「あなたは誰なの?」
そこへタイトルがドーン!「NOBODY」!

いいですね~。いきなり引き込まれます。

以下ネタバレありです。
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冒頭に続く、彼の平凡な日常を際立たせるシーンの編集で
コメディ要素も強い作品である事がわかり、
「この映画、只者じゃないぞ」感が漂って来ます。

ストーリーとしては
絵に描いたような冴えない日々を繰り返す
ボブ演じる中年男性ハッチの生活が
強盗が自宅に押し入った事をきっかけに一変。
家族にすらバカにされ始めていた彼が
実は元諜報機関の最強殺し屋だったという事が徐々に明らかになって行くというもの。

彼は自ら望んで危険な生活を引退し
平凡の中に身を潜めて暮らしていたのですが、
諸々の流れがあってフラストレーションMAXになった彼が
路線バス乗車中にチンピラ達に絡まれてしまった事で
その最強能力を完全復活させてしまいます。
中年男性が若者不良グループ全員をたった1人で
ノックアウトしてしまうシーンはなかなかに痛快なんですが、
この作品、ハッチを最強男として描いてはいるものの
しっかりやられてもいて、かなり痛い思いをする描写も多いんですよね。
だから生身で闘ってる感がハンパないです。

しかしその倒してしまったチンピラの1人が
ロシアンマフィアのボスの弟だった事で
そこから先はさらに巨大な組織を相手にして
ハッチが大立ち回りを繰り広げる展開となります。

マフィア達も突然立ちはだかった中年オヤジに
「あいつは誰なんだ!!???」ってなる訳なんですが、
マフィアの裏情報網でペンタゴンに調べさせても
アンタッチャブル情報ばかりで
たくさん人を殺している危険人物という情報しか出て来ない。
ハッチ、どんだけの存在だったんだよ。

もう後半はバイオレンスシーンのオンパレード。
悪党がことごとくやられるので相当痛快ではあるものの、
どれだけ死ぬの?というぐらいの勢いで人が死んで行くので
痛いのとかがダメな人は楽しめないかもです。

特筆すべきは
このハッチには入院中の父親デイビッドがいるのですが、
それがあの「バック・トゥ・ザ・フューチャーのドク」ことクリストファー・ロイド!
息子に負けじとマフィアを簡単に手玉に取ってやっつけてしまう老人を
怪演してくれていて嬉しい限りです。

クライマックスは
ハッチと父デイビッド、そして異母兄弟のハリーの
過去に一緒に裏稼業をやっていた3人が勢揃いして
マフィア軍団との一騎討ちになります。

いや~なんという痛快でハチャメチャな展開なんでしょうか。
前半あれだけ地味な男だったのに(笑)。


個人的にサッカーの吉田麻也選手の顔ってカッコいいなぁと
普段から思っているのですが
主人公ハッチを演じるボブ・オデンカークは
どこか吉田選手に通じるカッコ良さがあるんですよね。

それと、
私自身が50代の男性なので
心のどこかでこういう「本当の力を出したらすごいんだぞ」的な
ストーリーに憧れがあるのかもしれないです。
スーパーヒーローではない生身で強いハッチの奮闘ぶりが
私のような中年男性には刺さるのかもしれません。

またボブが日本では無名俳優だというのもいいんですよ。
観てて素直に「頑張れ!」って思っちゃいましたもん。


BGMに冒頭の「悲しき願い」や「What A Wonderful World」
「Heart Breaker」なんかも効果的に使われていて
2021年の作品ではない古き良き映画のような手触りがあります。

全体的にタランティーノ作品にも通じるような
ブラックな笑いが散りばめられた
スタイリッシュなバイオレンスアクションだと思いました。

後半少しだけダレる感じもあるものの、
なかなかに痛快な作品でした!

ミュージシャン出身のイリヤ・ナイシュラ―監督、
彼にも今後注目してみたいと思います!

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