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新入社員のことが羨ましい

高卒の新入社員が今月入社し、私が教育担当になった。

私の勤め先の会社は、従来ほぼ無いに等しかった新入社員教育を最近抜本的に見直し、私がその教育計画作成と教育担当にアサインされた。光栄なことだと思う。

私が入社した時は、たとえ女性であろうと男性同等の肉体労働を担当させられたし、教育とは名ばかりのOJTだった。人員が不足してたこともあり戦力として早々にカウントされてしまい、目の前の仕事を終らせることで日々が過ぎた。それが、今年からは性差を考慮した身体的負担の少ない業務がきちんと割り振られ、現場に駆り出されないような配慮がなされた。教育期間は1年に伸びた。素晴らしい変化だと思う。

新入社員は、穏やかで性根の優しい女性である。人に興味を持ち、雑談や質問を交えて人と打ち解けるのが上手な人だ。少し天然で、でも嫌味が無くて素直に愛らしいと思う。私にもそのチャーミングな一面を見せてくれる。私は練りに練った教育プログラムを順調に進めており、今のところ何の問題も発生していない。自分でもよくやっていると思うし、実際上司からも褒めてもらっている。

でも時々、心がギュっと苦しくなるときがある。

その子が持っている、素直さやコミュニケーションの上手さがとても羨ましい。会社の人たちと難なく打ち解け、順調に人間関係を築いているその姿が羨ましい。かと言って、無理をしている様子もないところも輪をかけて羨ましい。自分が入社したときにはなかった万全の教育環境も羨ましい。人間関係は後から付いてくるものだとばかり考え、能力を示すことに必死だった昔の自分が愚かで恥ずかしい。あのとき腰痛に耐え、必死に頑張っていた自分も報われていないように思える。彼女のように、私もスムーズに職場に馴染みたかったー。

全てが自分と正反対に見えて、羨ましい。

この苦しさをこのように言語化できるまで、一週間かかった。胸のうちに「なんだか消化出来ていないモノがあるな」とは思っていたが、これだった。まさかこの歳になって、他人の性格が羨ましくて本気で悩み、泣くなんて。そして、こんなに一般的な悩みだったなんて。適当にググれば心理カウンセラーの「ご明答」に出会えそうじゃないか。もう何もかもがイヤ(極端)

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でも苦しさは言語化することで、半分くらい解決したようなものだと思う。

私の悩みは、人見知りの猫が人懐っこい犬の性格を羨ましがるくらい意味が無いことだと気づいた。私には私の良さがきっとあるだろう。犬の人懐っこい性格は、犬に任せておけ。猫は猫の道を進め。私は自分に自信のあるタイプだと思っていたが、案外そうでもないらしい。人の良いところに気づき、感動するのが得意だ。そのついでに羨んでしまいがちなのだろう。

何かに心動かされることは、良い面と悪い面の両方ある。自省し成長の機会とすることも出来れば、心の不調のキッカケにもなりうる。その二面性に気づけたことは今回の収穫だった。自分の心の機微を観察し、整理をつける習慣を築けそうだ。


ありがとう、新入社員。

そして読んでくれたあなたも、ありがとう。

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