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第3回③ 宮井 秀彬さん 

「医師100人カイギ」について

【毎月第2土曜日 20時~開催中!】(一部第3土曜日に開催)
「様々な場所で活動する、医師の『想い』を伝える」をテーマに、医師100人のトーク・ディスカッションを通じ、「これからの医師キャリア」を考える継続イベント。
本連載では登壇者の「想い」「活動」を、医学生などがインタビューし、伝えていきます。是非イベントの参加もお待ちしております!
申込みはこちら:https://100ninkaigi.com/area/doctor

発起人:やまと診療所武蔵小杉 木村一貴
記事編集責任者:産業医/産婦人科医/医療ライター 平野翔大

「人と人とをつなぐ越境医学生から、医療業界と他業界をつなぐ医師へ」

「学生団体のその先へ」というテーマを設定した宮井さん。自分の原動力は「つながること、つなげること」だという。なぜそのようなテーマにしたのか、それが目指す未来は何なのか、を語ってくれた。

宮井 秀彬さん
自治医科大学6年 AMSA Japan
香川県出身。大学1年目の春に、学年LINEに流れてきた国際医学生連盟の新歓に1人で参加し、そこで同大学の先輩に注目されAMSA Japanに勧誘される。その後、副代表内務担当、代表、OBOG担当を務める中で様々な人々と出会う。家庭医療学夏期セミナーにも多く参加し、総合診療科志望の仲間も多い。5年生の冬にメンターである畑拓磨先生(水戸協同病院 総合診療科)と出会い、「医ンタープレナー」の存在を知り、心惹かれる。多くの機会に恵まれ、現在は病院マーケティングサミットJAPAN医ンプレ部プロジェクトディレクター(医師×結婚PJ)、100人カイギ運営を務める。人と繋がること、人を繋げることが好きで、将来は医療×〇〇を追求し、越境しつつその手助けのスペシャリストになる。

<つなげること、との出会い>

きっかけは大学1年生の春、国際医学生連盟(IFMSA)の新歓に1人で参加したことだったという。そこで出会った先輩である岩瀬翔さんに言われた、「世の中で秀でるために大事な3つは、カネ、コネ、実力。学生で身につけられるのは、コネ(人脈)。」という一言に興味を持ち、同じ団体であるアジア医学生連絡協議会(AMSA Japan)に参加する。
3年生までは「コネつくったろ!」を標語に、栃木の自治医科大学から一人、様々なところへと飛び出していった宮井さん。同団体での活動をはじめ、ひたすら色々な人を巻き込み、交流を最大化することを続けた。特にAMSA Japanでは、自らが代表を務める年には最多の60人がAMSAに参加した。
 
しかしそのような中で、「人の繋がりが将来どう生きてくるのか?」と葛藤も覚えていたという。
特に自らが「社会課題にアプローチする感覚がない」と感じており、「自分にしかできない社会貢献・医療ってなんだろう?」という考えが大きなテーマになっていく。
しかし医学という学問を学ぶほどに、「医師は隣の人がするのと同じ対応ができなくてはならない。その中で自分らしさを使って、患者に貢献するためにはどうしたらいいんだろうか」という疑問が大きくなっていった。
 

<"医ンタープレナー"への道>

その中で、次の転機になったのが、水戸協同病院の畑拓磨先生との出会いだったという。
「人との繋がり」を活かして社会貢献するには、社会的な介入や学校教育しかないのかと考えていた宮井さん。畑先生から「"医"ンタープレナー」という言葉を聞いた。「インタープレナー(interprener)」は、「社会起点で"越境"しながら、価値創造に取り組む個人」を指し、2022年の初頭に慶應義塾大学の塾長が言及したことで話題になった言葉だ。まさに「他の業界と手を取り、社会問題を解決する」がインタープレナーの動きであり、これを医療でやること、それこそが繋げる力を活かせる、繋がれる好奇心を満たせる自分のやりたいことだと確認したという。
 
しかし、それでも今後これを武器にできるのか?社会で叩けるのか?という疑問は残っていた。その疑問を思い切ってSNSで投稿してみたところ、医療者のみならず、多くの人から返答が得られた。その中でも印象的だったのが、上村遥子さん(㈱SUNDRED コミュニティデザイナー)のコメントだったという。
「AさんとBさんを繋げられると思うか、どんな文脈があるか。そこを想像できるつなげ力は強いスキル」
この言葉に、「文脈を想起できる力」の重要性を感じた宮井さん。次はこの力を鍛えるべく、「学生の越境集団を作り、越境する力をみんなでつけていくことで、一緒に『文脈を想起できる力』を鍛えていきたい」と語る。
 
しかし課題も多い。学生でも医療業界の、他業界との壁の厚さは感じるという。「先生」と呼ばれたり、「え、医学部!?」と言われる文化がまさにそうだ。そして、越境をしなくても医療業界の中で安定した生活は送れる。入る門は狭いが、その中で生きて行くのが容易な構造があり、それが「越境による社会課題解決」においては足かせになっている。
 
このような課題を解決すべく、まずは自らが「他業界×医療業界」の活動を実践するのが今度の目標だと語る。
例えば他業界に既にあるものを、医療業界に持ち込む活動がそうだ。もちろん様々なものが既に医療業界に流入しているが、特に考えたいのは「意外性」だ。医療に全く関係のないように見えるものを、「文脈を想起」し、医療界とつなげていく。そのような活動はまだまだ求められている。
また同時に、「医療×●●の文脈・生まれる価値を考える」ようなアイデアソン・ハッカソンを通じ、新たな価値も提供していきたいという。

<つなげる面白さの先へ>

最後に、Take home messageとして以下の3つを挙げた。

  1. 学生団体のメリット・デメリット

  2. つながる力を高める2つの要素

  3. 私が思う「つながる」「つなげる」ことの面白さ

 
まず学生団体のメリットとして、「新たな人脈・価値観」「自分の興味を主体的に知ることができる」「心地よい居場所ができる」を挙げた。
しかし、逆にデメリットとして「6年間など長い期間いると価値が広がらない」「大学の交友関係が後回しになる」を挙げる。だからこそ、色々な居場所を見つけてみること、そして時には大学内部での交友関係も大事にすることが大事だという。
 
またつなげる力としては、「自分を伝える力」「縦に横に掘って広げる力」が重要な2つの要素であるという。
SNSなどでセルフブランディングも重要な時代、「自分を伝える力」はより重要になっている。AMSA Japanの先輩で、現在厚労省に勤める赤星昴己先生に言われた言葉として、「まだ未定でもいいから、自分がやりたいことを伝える。そうすれば周りのみんながチャンスを与えてくれる。方針が変わったら後で謝ればいい。」を引き合いに、「こういうことをやりたい」としっかり言葉にして、周囲に伝えることが大事だと分析する。実際に「まちづくりに興味あります」と言った時に、そのチャンスを得たこともあったという。
そしてこのように伝えて、縦に深まった出会いや知識を、横に掘ってつなげることで、まさにこれまでに無かった「新しい○○×△△」が生まれる。これこそが、「つなげる力」ということだ。
 
このような活動を続ける宮井さん。最後にまとめた「つながる・つなげる」の面白さは、「人はカオスの中に安心を覚える」ということだという。
確かに、予定調和が好きなら、ずっと同じ集団にいたほうがリスクは少ない。新たな出会いは資金も、時間もかかり、かつ将来活きるかは分からない。しかしそれでも人は新たな出会いを求める。今はプラスかマイナスかも分からない出会いに投じるからこそ、人は面白さがあるのではないか、とまとめた。

取材・文:平野翔大(産業医/産婦人科医/医療ライター)



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