セロトニン症候群まとめ【悪性症候群の比較】
セロトニン症候群を知っていますか?
高体温,筋肉のけいれんなど激烈な症状を来たし,疾患頻度は多くないですが一度見たら忘れられない疾患です.
私は以前にセロトニン症候群を調べた時,「悪性症候群みたいだな」と思い,これらを区別することで双方の理解を深めました.
今回はそんなセロトニン症候群のまとめを紹介します.
セロトニン症候群とは
セロトニンは,主に神経細胞間で働く化学物質です.
セロトニン症候群は,薬剤性に脳のセロトニン受容体への刺激が増加することが原因で起こります.一般的には,セロトニン受容体を刺激する薬を併用した時に,意図せず薬効が高まりすぎてしまい起こることが多いです.
セロトニン症候群の症状
通常,原因薬剤を摂取してから24時間以内に発症します.
■神経・筋
シバリング,腱反射亢進,ミオクローヌス,筋強剛,振戦
■自律神経
発熱(40℃を超えることも少なくない),発汗,紅潮,散瞳,嘔吐・下痢
■精神
不安感,焦燥感,錯乱,せん妄
セロトニン症候群の原因薬剤
・主にSSRIやSNRI,三環系抗うつ薬などのセロトニン作動薬
疾患の名前通り,これらセロトニン作動薬の使用が原因になることのは当然で,使用する側も注意しやすいのですが,”罠にかかる”のは以下の薬剤を併用した時.
➀罠にかかりやすい併用薬
モノアミン酸化酵素阻害薬(エフピー®),リネゾリド(ザイボックス®)(☜MAO阻害作用あり),リチウム製剤(☜セロトニン増強作用),イミグラン®(スマトリプタン),デキストロメトルファン(メジコン®)
➁麻薬類似薬
ペチジン(オピスタン®),ペンタゾシン(ソセゴン®),トラマドール(トラマール®)
➂その他
脱法ドラッグNMDA,セントジョンズ・ワート
セロトニン症候群の治療
①原因薬剤の中止
②補液,体温冷却
③対症的薬剤(抗アレルギー薬,抗けいれん薬など)
薬剤の作用は24時間程度で改善してくるので,初期対応さえ適切にできれば,症状がどんどん増悪していくようなことは考えにくいです.
セロトニン症候群と悪性症候群の比較
セロトニン症候群がセロトニン作用の過剰状態なのに対して,悪性症候群はドパミン作用の枯渇状態です.
セロトニンもドパミンも神経伝達物質なので,似ている所がいくつかあります.
臨床の肌感が異なるのは,病歴の速度.セロトニン症候群は急速発症なのに対して,悪性症候群はバックグラウンドの期間が必要です.
発熱,意識障害,CK・WBC上昇は,悪性症候群ではほぼ必発レベルでみられます.これらの所見が乏しければセロトニン症候群かもしれません.
不安・焦燥感などの精神症状はセロトニン症候群に特徴的で,認めた場合は悪性症候群ではないでしょう.
比較することで,双方の理解や知識としての定着が良くなります.
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