【要確認】利尿薬とは何か【間違ったイメージは事故のもと】

利尿薬は尿量を増加させる薬剤です.

浮腫などの体液貯留を改善させるために使用されますよね.

そもそも,利尿薬って,どんな薬たちのことを指してますかね?

利尿薬のことを

「尿をたくさん”こし出させる”薬」

のように考えてませんか?

それは,ちょっと違いますよ

この勘違いをしていると,たまに”事故る”んで一応確認しておきましょう.

■尿の作られ方

今回の話をするために,この増やすべき尿の”そもそもの作られ方”を確認しましょう.

・尿の作られ方➀:原尿

尿は,腎臓で,血液から作られます.

腎臓にたどりついた血液は,糸球体でろ過されて原尿になります.

原尿は尿の素(もと)です.

この原尿は,水分量として,なんと1日150Lも作られます.

150L.やばくないですか?

冷蔵庫とかのサイズです🙄

・尿の作られ方➁:再吸収

そのまま150Lの尿が出たら,たぶん死にます

なので,尿細管で再吸収をします.

尿細管での再吸収は,水分だけでなく,糖や電解質などさまざまですが,ここでは水分以外の話は割愛します.

この再吸収を経て,最終尿,つまり実際に排尿される水分量は約1.5L/日くらいになるわけです.

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■利尿薬の作用とは:再吸収の抑制

原尿が150Lもあるんです.

原尿はこれ以上”こし出させる”必要はないでしょう.

つまり,利尿薬とは

「尿をたくさん”こし出させる”薬」ではなく
「尿細管における水分(など)の再吸収を抑制する薬」

なんです.

繰り返します.

利尿薬とは,「再吸収抑制薬」であって,「原尿を増やす薬」ではありません

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■それがどうした?:「”利尿薬を使えば尿が出る”っていう簡単な話ではない」

この話をして,私が何が言いたかったのか.

それは

「利尿薬のイメージが間違っていると,使いどころを間違うかもよ」

と思ったんです.

つまり,考えてみてください.

「極論,もし原尿が作られなかったら,利尿薬を使っても尿は増えませんよね?

 

例えば,脱水や心拍出の低下で,腎血流が低下したとき,そもそも糸球体でろ過される原尿が減ります

この状態でも利尿薬を使えば,ある程度の尿量増加は望めるかもしれません.

しかし,本来の病態を考えたとき,「脱水なら補液」,「心拍数低下なら強心剤」が必要なのかもしれませんし,そもそも利尿薬なんて必要ないのかもしれないんです.

 

また,例えば,末期腎不全で利尿薬が効かなくなるのはなぜでしょう?

利尿薬の作用が低下しているんですか?

なぜ?

糸球体ないしネフロンが減少して,そもそも原尿がほとんど作られないからでしょう?

だから,末期腎不全の体液量過剰で,利尿薬をどれだけ増やしても効かなくなったら,透析しか除水の手段はないんです.

利尿薬は,「尿を”こし出させる”薬」じゃないんですから.

腎不全で利尿薬が効かなくなる機序の細かい話をすると,利尿薬の尿細管腔への分泌低下,なども関与していますが,話がややこしくなるので,忖度.

 

■まとめ

今日は基本的な話ですが,利尿薬の作用の確認をしました.

「そんなん知ってたよ」

「当たり前だろ」

って思った人も多いと思いますし,私もよくわかっているつもりです.

でも,実際に臨床をやっていて,利尿薬を使用しても尿が出ないと,ふと考えるんです.

「これは,ちゃんとに腎臓に血流が届いているのか?

「この方の腎臓は,ちゃんとに原尿を作れているのか?

ここが達成できていなければ,利尿薬の作用を期待するのは”酷(こく)”な話ですからね.

 

尿を作り出しているのは
腎臓だけでなく,心臓を始めとした全身の血液循環

ということを,ゆめ忘れてはならないですね.

 

今回の話は以上です.

本日もお疲れ様でした.




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