胸水の鑑別まとめ【肺炎?心不全?がん?それとも??】

今回は胸水の鑑別まとめ.

先日のこのツイートが反応よかったので,採用.


1.胸水の性状の鑑別

■Lightの基準
 ① TPの胸水/血清比 >0.5
 ②LDHの胸水/血清比 >0.6
 ③胸水LDH >血清LDHの正常上限×2/3
▲全て当てはまらない:漏出性胸水(☜信頼性◎)
▲いずれか1つでも満たす:滲出性胸水(?)

全て当てはまらない場合は,漏出性胸水の可能性が高いです.(申述性胸水の除外として感度はほぼ100%とされます

1つでも当てはまれば,滲出性胸水疑いですが,その他の所見とも合わせて冷静に判断してください.(滲出性胸水として特異度80%程度とされます)

「Lightの基準は滲出性胸水の除外に有用」,と考えましょう.

■Lightの基準の補助:Lightの基準を1つでも満たしたら...
 血清Alb-胸水Alb≧1.2 ⇒ 漏出性胸水の可能性up

血清と胸水のAlbを比べることは,臨床でも非常に有用です.

この「血清Alb-胸水Alb≧1.2」を満たすと,たとえLightの基準が1つくらいひっかかっていても漏出性胸水の可能性を念頭に置かねばなりません.

■簡易な指標
①比重
 ≦1.015:漏出性胸水
 ≧1.018:滲出性胸水
②リバルタ反応陽性:滲出性胸水

これらは単純な指標で,Lightの基準のように統計学的な解析を元にしていません

ただ,Lightの基準などと合わせて総合的に考えることで,鑑別を正しい方向に修正してくれます.

■胸水の糖とpH
糖<30mg/dl or/and pH<7.2  ⇒ 膿胸 or 関節リウマチなどの膠原病性胸水 疑い

少し視点は変わりますが,胸水の糖やpHが低い時膿胸関節リウマチなどの膠原病性胸水を鑑別にあげます.

対応は簡単.

ドレナージがてら胸腔穿刺しましょう.

診断的に有用ですし,膿胸だった場合治療効果もあります


2.胸水の成因

病態生理
①静水圧の上昇
②透過性亢進
③血漿浸透圧の低下(低Alb血症など)
➃血管やリンパ管からの漏れ(血胸,乳び胸)

病態生理的には,上記しかありえません.

例えば,心不全は静水圧上昇による胸水.

肺炎随伴性胸水は,炎症による透過性亢進が原因.

などです.

3.片側性胸水の鑑別

片側性胸水の時の鑑別は以下のようになります.

片側胸水の鑑別 ぷーオリジナル

※1 心不全:多くの場合は両側胸水だが,片側なら右優位(肺静脈の長さが左の方が長いため,右側の方が左心房への還流が悪いため)
※2 肝硬変・腹膜透析では,横隔膜に生理的に存在する小孔を通じて,腹水が胸腔へ移行することで片側胸水となる
※3 低Alb血症:90%以上は両側胸水となるが,そもそもの病態頻度が高いので,念頭に置く

上述した,滲出性・漏出性の鑑別をしてからこの表をみると,鑑別のアイデアが浮かびやすいです.

肝硬変,ネフローゼ症候群はいずれも低Alb血症を来たしますが,胸水が貯留する病態は多岐にわたるので,別項目としてのせています.

収縮性心膜炎は,心不全としては特殊な循環動態なので,心不全とは別項目としてのせています.

肺塞栓,大動脈解離,粘液水腫は,滲出性・漏出性,いずれの片側性胸水もきたしうります.


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