終末期を診療する医師が語る、病気の予防その1〜はじめに
少し気をつける、定期的にカラダのチェックをする、などで自分のことをよく知ることができれば、多くの健康商品や偏った食事に多額の投資をしなくてもすみます。
私は、基本的にこれさえ続ければ大丈夫という絶対的な健康商品、健康食品はないというスタンスです。普通の食事をそれぞれの体にあったとり方をすることが大事です。
なぜ、そんなことを提唱するかというと、緩和ケアを行う立場から、早ければ40歳から知っておけば90歳前後の大多数の方が苦しまずにやりすぎずに楽に逝ける方法があると思います。90歳前後で健康な方も多くいますが、必ず、年相応に臓器は弱っています。現代医学が想定してる標準的年齢はおそらく個人差はありますが、80歳前後までだろうというのが感覚的なものです。かといって、それ以上の方には、医療は必要ないかというとそういうわけでもありません。あくまで、対象者のデータや治験をもとに個別に応用して工夫して提供しているという感覚です。ですから元が臓器の機能がしっかりしていれば提供できるという引き算の医療になります。変な言い方ですが、下手に元気だととことんやる、家族もできて当たり前、なにか合併症が起こると下手を打ったのではないかと疑うといったおかしな状況にたまに遭遇します。80歳の時点で5年後に生存している可能性は50%以下という統計データもあります。つまり、病気が見つかって治療をするかどうかは個人個人においては延命の意味はもちろんありますが、統計的には意味はないのです。では、なぜ治療をするのか。楽に最期を過ごすためです。あるところから目的がはっきりと異なるのです。そして、その境界線ははっきりとしたコンセンサスがあるわけではなく、それぞれの本人、家族の哲学に基づくものなのです。ここには医療者の介在する余地は本来ないのですが、現状、そんな哲学がはっきりしている家族は1〜2割程度だと思います。ですから、日頃そういう場面に遭遇することが仕事である医師がこの哲学をしっかり自分の頭で考え、関わる方々に提案することも仕事ではあります。
若い頃は、頑張ればなんとかなる、という哲学が広く一般的です。新型コロナ感染に自分はならないだろう、なっても体力があるから致死的にはならないだろう、という感覚は必ずあります。若さゆえ誰もが経験しているかと思います。しかし、徐々に年をとるにつれ、実感として今までしていた無理ができなくなったり、体力の衰えを感じたりするので、フィットネス、こだわり食品、生活スタイルの変更などに取り組みだします。それでも、予期しない病気になっていたりすると、死というものが徐々に現実味を帯びてきます。なにも取り組んでいない、あるいは続けることができなかった、という気持ちがあると、どうせ長く生きても苦しいだけと、よく考えることなく、それまでの生活を続けてしまったり、投げ出してしまったり、それどころではない、仕事が忙しいのだと後回ししたままの状態であったり。気持ちはよくわかります。
まさに、自分も40歳になってから如実に体調の変化を感じております。毎日、高齢者を診療している中で、このままでは、とてもその年齢でこの治療に向かう体力はないなと感じるところもあり、運動・食事・睡眠のバランスを心がけるように嫌でもなっています。毎日体重計に乗って気にする、血圧を気にする、定期的に採血する、必要な画像をチェックする、など。医療者なので自分で気をつけるところと検査機器でチェックするところとの勘所がわかるので、役得ではあります。よくあるのは、健康に気をつけているけど全く病院にはいかないという方です。ある時、突然、病気がやってきて途方に暮れる、なぜ調べとかなかったのだろうということに何度もあっています。知っておけばこうするだけで回避できたのに...。口を揃えたように皆さん言われます。自分のセルフケアができていないのにえらそうに、と言われるかもしれないですが、できてからお伝えしていては間に合わないと思いましたので、一緒に取り組みましょう、という意味で、自分の取り組みをこれから紹介していきたいと思います。なお、文章だけで伝わらない部分は、youtubeにも定期的に上げていくのでご興味がある方はチャンネル登録してご参照下さい。
次回は、終末期を診療する医師が語る、病気の予防その2〜「今から予防効果の高い病気と対策案」というテーマで考察したいと思います。
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