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10/14開催【スタートアップアカデミー】 「若いスタートアップが意識すべき事業運営上の法務的留意点」 イベントレポート

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2021年10月14日に行われた、スタートアップや起業家の方々向けのイベント

「若いスタートアップが意識すべき事業運営上の法務的留意点」

についてレポートしていきたいと思います!

今回は、佐藤総合法律事務所で弁護士をされている熊谷 文麿氏(以下熊谷先生)にご登壇いただきました。

熊谷先生は、過去には社内弁護士も経験されており、現在はシードからレイターのスタートアップや、上場企業の企業顧問弁護士をされています。
また、上場企業や上場準備の企業で社外役員もされている他、スタートアップのアクセラレータプログラムのメンターなども担われています。
そこで今回、熊谷先生がこれまで見られてきたスタートアップの事例などをもとに、今後の成長を目指しているスタートアップが留意すべき法務の観点をご講演いただきました!
なお今回はNTTドコモベンチャーズより十川がファシリテーターを務め、共催のRouteX社より塚尾さんにも参加いただきました。

熊谷 文麿氏プロフィール

熊谷さん

東京大学法学部を卒業し、公共系シンクタンクにてコンサルティング業務に従事された後、外資系投資銀行であるバークレイズ証券の投資銀行部門を担当する社内弁護士を経て、現職に就かれています。
現職では、クロスボーダーのM&A、TOB、危機管理等の企業法務全般のほか、スタートアップの資金調達、IPO・M&A等のexit、新規事業の規制調査・知財戦略、労務・訴訟を含むスタートアップ関連の法務支援を幅広く行われています。
また、株式会社GMOクリック証券社外監査役、株式会社GMOアドパートナーズ社外取締役兼監査等委員等、複数社の社外役員も兼務されており、金融やネット広告関連の企業経営にも携わられています。

なぜスタートアップで法務が重要なのか

まず、スタートアップの経営・事業運営上の特性として、以下3点が挙げられるとのことです。

1.イノベーションのための規制対応・知財戦略
2.成長のための資金調達
3.多様なステークホルダーとの利害調整

各項目に関して、詳細に説明していただきました。

1. イノベーションのための規制対応・知財戦略

新たな価値を創造して社会的インパクトのある変革を起こすためのイノベーション(例:フィンテックや自動運転など)には、既存の規制との抵触リスクがあります。
その対応としては、まず、ノーアクションレター(法令適用事前確認手続)や、グレーゾーン解消制度などを活用して規制調査を行うことが必要です。
規制調査の結果、規制対象だった場合は、許認可の取得や行為規制に対する対応が必要となります。
なお、許認可の要件を満たさない場合や、許認可に時間がかかる場合には、ビジネスモデルや法律構成の変更などの規制の回避を行ったり、海外など規制抵触外でのビジネス展開を行ったりする場合もあるとのことです。
さらに、規制に抵触したり、規制の枠外の場合は、サンドボックス制度、新事業特例制度の活用や、新たなルール作りを行う場合もありますが、どうしても時間がかかるというデメリットがあります。

また、規制対応のほか、イノベーションのための知財戦略も重要です。
自社の権利の場合は、法律上保護される権利なのか、登録が必要な権利なのか、特許の要件を満たしているのか、などの確認が必要です。
そのうえで、出願・登録するのかを判断することになりますが、自社の他者権利侵害を回避できることや、ライセンス収入を得られるなどのメリットと、公開により他社に技術を知られてしまうリスクなどのデメリットを勘案し、費用対効果なども合わせて決定することが重要です。
また、どの部分を登録するのか(ビジネスモデル、アルゴリズム、名称など)も検討が必要ですが、ブランディング目的なのか、ライセンス収入目的なのかなど、目的や用途によって変わります。

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規制対応も知財戦略も、資金調達や上場審査において、規制抵触や、重要なビジネスの権利の確保や権利侵害が問題になるリスクがあるため、適法性を担保することや、持続的成長のための権利確保を早い段階から検討しておく必要があるとのことです。
なお、法令は個人の保護を重視しているため、個人情報保護法や消費者契約法などには特に注意すべきと述べられていました。

2. 成長のための資金調達

一般的には資金調達時に、投資契約や株主間契約などの、経営に関わる重要な契約が結ばれます。

投資家側としては、将来性への投資リスク(無担保・未実績など)への対応のために、このような契約を結ぶことになります。これに対してスタートアップ側としては、事業運営上の負担・投資家側からの責任追及のリスクヘッジ(報告・承認義務の事業運営上の支障、株式の買取義務など)を行うために投資家側の出資条件等について交渉する必要が生じます。

投資家側のリスクヘッジのために、財務や法務の観点でデューディリジェンス(以下、DD)が行われ、企業価値が棄損されるリスクがないことを確認します。
スタートアップ側としても、DDにおいて重大な問題があると調達に失敗するリスクがあるため、DDで指摘されるポイントを知っている専門家に日ごろからアドバイスを受けることが重要だと述べられていました。

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3. 多様なステークホルダーとの利害調整

多様なステークホルダーの1つとして、大企業との関係においては、従来は大企業側から発注を受けて、成果物は大企業側に帰属することが多かったものの、スタートアップ側はできるだけ自分たちの権利を維持したいという面があり、法務的な観点での利害調整が必要になる場面が多いとのことです。

また、出身企業や出身大学との関係においても、問題になるケースが多いと言います。
例えば、出身企業に在籍中の発明は守秘義務に違反していないか、出身企業の顧客リストを使用している場合は営業秘密取得にあたらないか、など、注意すべき点が多々あります。

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1~3の項目を通じて、スタートアップにおける法務的なポイントとして、以下が挙げられていました。

・立上げ時から経営判断の中に法務的視点が必要
・上場審査から逆算して、上場時に問題になることを回避する
・限られた資源(人・予算・時間)をうまく配分し、企業成長に合わせて段階的に法務体制を整備する
・スタートアップの業態によって重視すべき法務が変わるため、業態に合わせた対応を行う
・大企業・VC・行政などとの力関係に差があるため、知識・経験不足は専門家を活用して補う

また、スタートアップの創業初期はどうしても自身で進めていくことが多くなりがちですが、法改正などもあるためネット上の情報を鵜吞みにせず、不明点は専門家に相談しながら対応することを念頭に置いておいてほしい、と強調されていました。

スタートアップにおいて意識すべき基本的法務

その後、スタートアップにおいて意識すべき基本的法務の各論として以下6つについて、留意すべき点やチェックポイントについて説明していただきました。

1.機関法務
2.コンプライアンス
3.契約交渉・管理
4.労務管理
5.資金調達
6.係争対応

各論についての詳細は割愛しますが、法務体制の構築にあたってのポイントとして以下が重要な観点として述べられていました。

・法務業務は多岐にわたるため、業務を棚卸して、社内規程やマニュアルを整備して、対応できる人員数を確保する
・社内規程の整備のほか、契約審査・管理フローを各部署に周知し、社内コミュニケーション体制を整備する
・外部専門家との連携を進める
・法務部員の採用・育成を進める
・法務部とそれ以外の部門(人事・労務、営業など)の役割分担を明確にする

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Q&Aセッション

以下、熊谷先生の講演を受けて、参加者から出た質問から抜粋してご紹介していきます!

①ビジネスモデル特許の具体例や留意点は?

なんと、いきなりステーキの注文の仕組みはビジネスモデル特許を取っているそうです。
基本的にはソフトウェア化をしたり、技術的な仕組みがわかりやすいものが多いですが、いきなりステーキの場合は、ステーキの提供方法の仕組み自体で特許を取っているとのことです。

②特許の相談は弁護士にすべきか?弁理士にすべきか?

契約自体は、弁理士も弁護士も対応可能ですが、一般的なすみ分けとしては、弁理士が出願し、係争や紛争になった場合は弁護士が担当することが多いとのことです。熊谷先生の事務所であれば弁護士と弁理士の両方がいるので両方の相談が受けられるそうですが、その相談が出願に関わるものなのか、争いごとに関わるものなのか、あたりを参考に相談先を検討するのが良いかもしれませんね。

③創業前のフェーズでどこまで法務事項を押さえるべきか?

創業前については特にビジネスモデル構築に力を入れることが多いので、法務についても、まずはビジネスモデルに関する規制関連の対応や知財戦略に力を入れることになるのではないかということです。先に他社が特許を取得すると自社が他社の特許侵害になってしまうので、他の人が思いつくことであれば特許化しておく方向で検討することがあるとのことです。


いずれの質問も、ケースバイケースなものが多く、一概に回答するのは難しいとのことでしたので、ご相談事項がある場合は、ぜひ熊谷先生に個別にご相談いただければと思います!

まとめ

今回は、熊谷先生から法務に関する専門的な観点のお話をお伺いでき、非常に勉強になりました!

普段あまり意識することのない点でも、資金調達や上場審査など重要な場面で大きな問題になりうることもありますので、早め早めに対応するよう意識していくことが重要だと感じました。

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!

次回は10月19日に実施予定の「エネルギーテック カーボンニュートラルを見据えた電力の新しい形」についてお伝えする予定です!乞うご期待ください!!

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