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3/22 開催【先進セミナー】MENA地域最大のスタートアップカンファレンス「Step Dubai 2022」参加者が語る中東の魅力と特異性 イベントレポート

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2022年3月22日に行われた、スタートアップ向け先進セミナーのイベント、

【MENA地域最大のスタートアップカンファレンス「Step Dubai 2022」参加者が語る中東の魅力と特異性】

についてレポートしていきたいと思います。


・海外のスタートアップトレンドにご興味のある方
・MENA地域のスタートアップ・エコシステムやスタートアップ・トレンドにご興味のある方
・スタートアップカンファレンス「Step Dubai 2022」の現地の様子にご関心のある方

に特に必見の内容となっていますので、ぜひ読んでみてください!

今回は、RouteX Inc. (以下RouteX) 代表取締役の大森貴之様にご登壇いただきました。


<RouteX Inc. 代表取締役 大森貴之様>

logo300Routex大森さん

<プロフィール>
海外渡航歴80ヵ国。京都大学MBA在学中に主に海外のスタートアップ・エコシステムを中心に研究。在学中の2018年に学生起業としてRouteXを創業、海外のスタートアップ・エコシステムのリサーチを専門とし、世界中のスタートアップのビジネスモデルやテクノロジーの分析を行っている。

■RouteXの活動

RouteXではスタートアップ・エコシステムにおける”情報の非対称性”を無くし、スタートアップ・エコシステムに関わる全ての領域のプレイヤーを支援する事を目標に掲げています。特に複数のスタートアップ・エコシステムを並行分析する事により抽出したベストプラクティスやネットワークを活用し、起業家だけでなく、投資家や政府関係機関等の様々なプレイヤーの新規事業開発や事業拡大を支援しています。

■エコシステム分析から何が得られるのか?

大森様は、エコシステム分析が生み出す成果について、大きく二つに分けて説明されました。

1、海外のスタートアップ・エコシステムを分析する意義

1. 事業の成長性を海外の事例から予測する
2. 海外の先進事例を国内でローカライズする
3. 海外進出先のマーケット選定の確度を高める
4. 海外の先進事例をベンチマークし、自社事業に活かす
5. 国内では少ない分野において、海外での協業先を選定する


2、複数のスタートアップ・エコシステムを並行分析する意義

1. 地政学的に様々なエコシステムが存在
2. エコシステムによって得意とする領域が異なる
3. 複数のエコシステムを分析することによって再現性を確認

海外のスタートアップ・エコシステムをリサーチする一環として、今回RouteXは日本から唯一のオフィシャルメディアパートナーとして「Step Dubai 2022」に参加をされていました。

■MENA地域最大のスタートアップカンファレンス「Step」とは

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MENA地域(Middle East and North Asia)は、BRICs(Brazil, Russia, China, South Africa)に続いて成長が期待されている市場で、主にドバイやイスラエルを中心に、スタートアップ・エコシステムが発展してきています。この地域最大のスタートアップ・カンファレンス「Step」は、2022年に10周年を迎え、ドバイを中心にMENA地域のスタートアップ・エコシステムを牽引しています。また、MENA地域といっても、特色によって豊資源国と貧資源国という形で大きく二分されます。

①豊資源国(サウジアラビア、UAE、カタールなど)
主にオイルマネーを通して発展してきたMENA地域の国のことで、原油依存からの脱却を図り、テクノロジーや観光業に対する経済の多角化を推進しています。特にUAE(ドバイ)は、世界の中で最も裕福な国の一つで、人口の90%が外国籍を持つ、特殊な地域です。オイルマネーからの脱却を目指し、金融や不動産を中心に力強く発展し、MENA地域のスタートアップ・エコシステムの中心地となっています。
②貧資源国(イスラエル、ヨルダン、レバノンなど)
早期から資源に頼らない産業が発達してきたMENA地域の国のことです。特にイスラエルは、国防関連技術(サイバーセキュリティなど)からのスピンアウト(独立)によるテクノロジーが発展し、世界有数のスタートアップ国家と言われています。

大森様がStepに参加した際に「MENA地域最大のスタートアップカンファレンスでありつつも、他国の同規模のカンファレンスと比較すると日本人を含むアジア系の参加者が極端に少ないと感じた」というコメントがありました。他国での大規模なスタートアップカンファレンスだと日本人も多く参加していた事から、MENA地域におけるスタートアップ・エコシステムの一次情報の収集と発信に改めて価値と重要性を感じたという事です。

■Step Dubai Recap

ここからは、大森様がStep Dubaiで注目されていたポイントを5つご紹介します。

・ドバイ政府主導の積極的なスタートアップ支援

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UAEでは、2020年に起業家精神普及・中小企業支援担当大臣(Ministry of State for Entrepreneurship)が新設されたばかりで、国を挙げてスタートアップ・エコシステムを支援していく意思が感じられます。
また、特に注目したいのがStepの会場となったDubai Internet Cityです。Dubai Internet Cityは政府が外国企業誘致のために経済的優遇政策を取る、ドバイの中でもかなり特殊な戦略的経済特区となっています。 

優遇政策の一部として、

・100%外国資本による会社所有が可能
・法人税、所得税が50年間免除
・資本、利益の本国送金が自由
・外国人労働者の雇用制限なし

などが挙げられ、外国企業向けにビジネスが行いやすい環境整備がされています。

Dubai Internet Cityでは、その名の通りICT(情報通信技術、Information and Communication Technology)に特化した優遇政策が行われ、政府主導でスタートアップ・エコシステムの開発が行われています。
Dubai Internet Cityの他にも、Dubai Studio City、Dubai Media Cityなど、それぞれの注力分野に合わせて海外の企業誘致を積極的に行なっています。


・MENA地域でのスタートアップ・トレンド

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Stepでは、世界的なスタートアップ企業である500 GlobalやSequoia Capitalなどが登壇し、MENA地域でのトレンドについてディスカッションが行われました。
アメリカ、ヨーロッパ、中国などと比べて、発展途上のエコシステムと捉えられがちなMENA地域ですが、すでにいくつかのスタートアップ企業が成功を収めており、今後急速に成長していく可能性が高い地域となっています。
MENA地域で代表的なスタートアップの成功事例として、ライドシェアアプリからスタートし、スーパーアプリ(ライドシェア、フードデリバリー、決済等を一つのアプリで完結できる)となったCareemが挙げられています。この様に次の世代の起業家が目標とする成功事例が生まれている事からも、今後も多くのスタートアップが生まれ、スタートアップ・エコシステムが強固に形成されていく可能性について触れられていました。


・スタートアップ出展ブース

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Stepではスタートアップが出資や事業連携を求めて参加者とミーティングが出来る様にブース出展等も準備されています。他のスタートアップカンファレンスではあまり見かける事がない、UAE、サウジアラビア、エジプトなど、MENA地域各国からの出展が多かったということです。

・Step Pitch Competition

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MENA地域における、スタートアップ・エコシステムの登竜門であるピッチイベントも開催されました。
審査員は、500 Globalなど実際にMENA地域に投資を行っているVCです。
今回決勝に残ったスタートアップについて大森様は、中東らしい企業というよりは外国籍の起業家が自国の先進事例をMENA地域でローカライズを狙っているという印象を受けた様です。
MENA地域のカンファレンスといえども、現地よりも欧米系のスタートアップが目立っているのは、ドバイでビジネスがしやすい環境が整ってきているからだと言えます。この様に海外のスタートアップがStep Pitch 等を活用し、中東に進出するという流れも出てきています。一方で自国出身の起業家育成においては多くの課題と伸び代が残されている様です。

・GAFAMが狙う中東スタートアップとの連携

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また、MENA地域における新たなトレンドとして挙げられるのが、GAFAMの本格的なMENA地域への進出です。Stepでは、GAFAM(今回のStepではApple以外が登壇)が持つその最新技術をMENA地域におけるスタートアップに対してどのように活かしていけるのかを、担当者が自社の技術や方向性について直接登壇して説明する機会が設けられていました。また、Microsoft for startupsのアクセラレーターが2021年から本格的にスタートした事もからも分かる様に、MENA地域においてGAFAMが本格的に活動し始めている様です。欧米以外のスタートアップカンファレンスではこの様な場を設けられている事が少ない事から、GAFAMがMENA地域におけるスタートアップとの連携に非常に積極的な事が伺えます。

■MENA地域のスタートアップ・エコシステム概観

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最後に大森様は、MENA地域のスタートアップ・エコシステムの概観について、MENA地域のスタートアップ・エコシステム分析に強いMAGNiTTのレポートを活用しながら行いました。
MENA地域ではやはりUAEが一番活発なマーケットであり、それ以外にもサウジアラビアやエジプトが伸びている点が注目とのコメントがありました。カテゴリーとしてはFinTechが事業として盛り上がりを見せ、EXITの数も伸びてきている事から、今後もMENA地域における強固なスタートアップ・エコシステムが形成される可能性について触れられていました。

■Q&Aセッション
Q1
MENA地域のスタートアップ・エコシステムにはどの様な投資家が参加しているのでしょうか?

当初はオイルマネーを源泉とした国営のファンド等がスタートアップ・エコシステム発展のために広く環境整備等に投資を行なっていました。一方で今回のStepの様子でお伝えした様に、500 GlobalやSequoia Capital等のグローバルで投資を行っているVCも増えてきています。ただ、まだまだ他のマーケットに比べると投資対象となりうるスタートアップの母数は少ない様で、数社への投資の集中が起こっています。

Q2
MENA地域は地理的にヨーロッパやアフリカ、アジア等にも比較的アクセスがしやすいかと思いますが、スタートアップはどのマーケットを進出先やベンチマークとして捉えているのでしょうか?

やはり、今回のStepでもご紹介した様に欧米のプレイヤーがMENA地域で活躍する事例も出てきている事から、まずはヨーロッパ等をベンチマークにしているスタートアップが多い様に感じます。一方で、他国の同規模のカンファレンスと比較すると、そもそもの参加者としてのアジアやアフリカ系の参加者がとても少なく感じ、ビジネスをブリッジする人の母数自体がとても少なく、マーケットとの接点を持つ機会がまだあまり多くない様にも感じます。そのため、その様なビジネスをブリッジする役割の人が増えるとMENA地域のスタートアップが例えば日本を含むアジアについても積極的に検討する機会が増えていくのではと考えます。

Q3
例えばMENA地域において宗教上の観点からビジネスで気をつけるべき点はありますでしょうか?

こちらに関しては中東の専門家の方の意見を注意深く聞いていただきたいという前提の中で、MENA地域においては単純に一括りには出来ず各国で細かく対応を分ける必要があるという回答になるかと思います。実際にMENA地域の様々な国に訪問した実体験ではありますが、宗教に関しては本当に多様な考え方や戒律が存在しているため、まずはどの国でビジネスを行うかを決めた上で現地の専門家に意見をお伺いしながら対応については注意深く行なっていく必要があります。

まとめ

今回は、RouteX 代表取締役の大森貴之氏に、スタートアップ・エコシステムにおけるMENA地域の魅力について、Stepに実際に行った本人にしかわからない中東の一次情報をたくさん共有していただきました。

・複数のスタートアップ・エコシステムの一次情報を収集・並行分析する事により、ベストプラクティスの抽出がより正確に行えること
・MENA地域最大のスタートアップ・カンファレンス「Step」は、日本人にとって認知度が低く、新しい情報とネットワークが豊富であること
・MENA地域は近年、ドバイを始め国を挙げて海外企業誘致に尽力しており、外国企業がビジネスを始めやすい環境が整備されてきていること
・MENA地域は可能性を秘めたスタートアップ・エコシステムとして海外から注目されており、今後急速な市場の成長が見込めること

MENA地域が、将来的に日本の強固なビジネスパートナーになる可能性も十分に考えられます。大森様も仰っていたように、中東地域のビジネスは未だ未開拓の領域です。MENA地域での素敵な出会いが皆さんを待っているかもしれません!

これを機に、MENA地域への参入もぜひ考えてみるのはいかがしょうか。

次回は、【先進セミナー】イスラエル発スタートアップトレンド~NTTイスラエルの現地リサーチャーおすすめ4テーマご紹介~についてのレポートです!
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