見出し画像

猫でも分かる!総合商社の事業投資解説~エクアドルでのバナナ生産事業~

どうも、ドチブログと申します🐱

30代半ば、現役社員として、とある総合商社に勤めています。

2020年7月より毎日更新を継続するブログ、ドチブログ(https://dochikun.com)を通じて、現役社員としての「リアル」な総合商社の情報を世に届けております。

note投稿記事第二弾として、「猫でも分かる総合商社の事業投資!~エクアドルでのバナナ生産事業~」と題して、物語風な記事を書いてみました。

「総合商社の事業投資ってどんなことやるの?」

私が就活生の頃、どんな本/Web上の記事を読んでも、どれだけOBOG訪問を重ねても、結局、良く理解出来なかったのを覚えています。

本記事は、そんな過去の無知な自分に向けた記事であり、主に、世の中の就職活動生向けとして、業界理解を深めて頂ければなぁとの想いで書いてます✍️✨

正直、、今も、「臨場感持って伝えられてるリアルな読み物」は存在してない気がしますので、ぜひこの記事を参考に頂きたい、という気持ちでおります。

長い・・のですが、読んで頂ければ、①投資前業務(案件調査・案件形成→社内稟議)→②投資後業務(事業管理)と、一通り「事業投資業務」と言われる仕事内容をザックリご理解頂けると思います。所要時間は約10分です💦

お時間ある際にどうぞ🖐

(Twitter(@Dochikun1)でも毎日商社関連Newsを発信してますので是非ともフォローお願いします🙇‍♂️)

※尚、本記事に出てくるイベント/数字は基本全てフィクションです🖐

画像1

目次

1. エクアドル産高級バナナを日本市場に広めるチャンス到来!
2. C社との投資スキーム協議
3. 3-5割の生産量はどこに売る!?
4. エクアドル入国!
5. E社バナナ農園視察
6. パッキング工場予定地視察
7. 現地政府訪問
8. 課題整理と対応策立案
9. 事業投資名物!現地パートナーの後出しジャンケン!
10. 苦難の末に・・・
11. 質問の嵐
12. このタイミングでそんなこと起こる・・!?
13. FID
14. 大きな誤算・・・
15. 総合商社の総合力
16. プロジェクトは続くよどこまでも

1. エクアドル産高級バナナを日本市場に広めるチャンス到来!

主人公となるAさん(=👱‍♂️)は、B商事の食料本部青果事業部バナナ事業課に勤める、入社8年目の社員。これまでのキャリアは、入社後、一貫してバナナに関する商売に携わってきた。

入社後より、現在の所属の隣の物流課において、主にフィリピンや台湾といったアジア圏からの輸入をメインとする物流商売に携わり、4年目の途中で、本部の実務研修生として南米で1.5年間を過ごし、スペイン語と現場経験を身につけ帰国。

現在の課には、帰国してすぐ着任。2年前より、日々、事業投資案件を追いかけてきた。物流の経験もある為、世界のバナナマーケットには精通している・・つもりだ。

そんなある日、隣の物流課より以下の通り有益な情報を共有された。

・長年、ウチとの取引関係である大手小売業者C社より、産地の多様化を図りたいとの要望あり
・背景は、将来の新規顧客層と見込める高所得者層向けの高級品の取扱いを開始したいとのこと
・フィリピン/台湾等は、既にアジア圏(特に中国🇨🇳)の大手小売業者の競合がひしめいており、高級品種も奪い合いとなり更に暴騰するだろうと予想している
・ついては、それ以外の国/地域からの輸入を検討したい。品質が良いことが前提だが、フィリピン/台湾産に比べ、ある程度安く長期で買えそうなら、B商事と共に、現地で農園&パッキング工場へ投資をすることも検討したい。

とのことだ。

👱‍♂️(!!!ついに来た🔥実は、、C社のD課長さん(👴)は、物流担当時代の対面であり、南米での研修生時代に連絡を取り合っていた。今後、世界的に高級品を嗜好が高まることを予想し、各国のバナナ農園にも足繁く通い、レポートを課長さんに都度共有してたんだ!)

Aさんの熱意がDさんに伝播し、C社内で高級品を取り扱う雰囲気が醸成されていた様だ。

👱‍♂️(訪問した農園の中でも、とても美味しかったエクアドル産のバナナは絶対売れると思ってた!現状、比較的アジア圏でも取扱いが少ないし、俺がこの手で日本に広めるチャンスだ!!)

研修生時代の知見を活かしたプレゼンで社内を説得し、物流課のメンバーに同行しC社へ説明しに訪問。まずは数点のサンプルを輸入し、品質チェックした上で、本格的に両社で検討していく流れで合意した。よしっ!!

2. C社との投資スキーム協議

C社内でのサンプル評価結果は良好との報告を受け、まずは物流課が早速現地へ飛び、高級品を手がける地元バナナ農家、そして隣接するパッキング工場のオーナーと、年間購入契約の話をしてきた✈️

高級品を生産する現地の農園は3社と判明。全て見て周り、その内の2社との1年間の長期契約を締結した🤝

一方、東京では、かなり高級品販売に前のめりになってきたC社と打合せし、同社が、2-3年後の本格生産・出荷を目指したいとの要望を持っていることを確認した。

そこで、「農園でのプランテーション生産および新規パッキング工場設立」という投資案件を見すえ、NDA(*)を締結。C社、物流課に加え、フィリピンのバナナ事業を手がける当社の子会社で生産責任者を務める者にも加わってもらい、現地の3社の内、最も信頼の置けそうなE社へ、共同事業の提案を行なう方針を決めた。

(*)Non-Disclosure Agreementの略称。日本語で秘密保持契約。要するに、「これからこの投資案件に関する全ての情報は、2社間のだけの秘密ね!」ってことを規定する契約。お互い、他の商社や他の大手小売にバレたら、、妨害され得るし、株価にも影響を与え得る話になりかねないので、普通、こういうことします☝️

E社訪問に先立ち、日系の2社間での協議の結果、大筋、以下の方針で案件スキームを固めよう、という話になった。

・現地の事業会社の出資比率は、E社51%、日系2社(=B商事・C社)が設立予定の現地子会社が49%とする。尚、エクアドルの国の会社法で、外資が過半数を握ることは不可。
・全年間生産量の内、最低5割、最高7割はC社向けとし、状況を見ながらC社の希望に沿ってそのレンジ内で望む分購入出来る。C社買取価格は市況価格から一定額ディスカウント。
残りの3−5割は、B商事が購入。ただし、販売先は日本以外の市場という制限付き。
➡️つまり、C社のメリットは、日本国内での売れ行きに応じて、エクアドル産の購入量を調整出来る点である。また、B商事的には、全量、C社に販売するのではなく、既存の物流課の販売網を活かし、3-5割を自由に日本以外の市場に販売出来るという点が魅力的なスキームとなっている🍌

3. 3-5割の生産量はどこに売る!?

C社と決めた方針を、物流課に伝達。

2-3年後から出荷開始ということで、最低3割、最高5割のB商事購入分の高級品を、安定的に、かつ高く売れそうな顧客探しの開始だ‼️

物流課と一緒に協議⬇️

👦「基本的には、輸送中に品質が落ちること避けたいですし、在庫調整のしやすい、近場の市場が良いと思います。なので、ウチの得意先も数社いる米国西海岸のマーケットに大多数を販売すべきだと思うんですよね。」

👱‍♂️「そうだね。ただ、、米国は国内品とも競合するから、あまり高く売れないんだよな。。儲けを大きくするなら、例えば、大型船を手配してC社分の日本向けと一緒に積んで、運賃を安くして中国市場に売るといいんじゃないかな?」

👨「ふむ。1箇所ではなく、両国に分散して売っていこう。『販売先が偏るせいで、売れない』って自体が1番困るからな💦あと、人口もそこそこで富裕層が増えてきているメキシコにも売らないか?物流課としてもメキシコは新規マーケットだから、幅が広がる!」

👦「良いっすね(やった!?これは米州担当の俺が初メキシコ出張だ✨)」

👱‍♂️「では、それぞれの地域で何社か目星を付けて、2-3年後から出荷予定のエクアドル産高級品に興味ないか、確認していきましょうか。」

協議の結果、以下の通り、販売していくことになった。物流課がそれぞれ現地に飛び、興味を示した何社かをリストアップした。

PNGイメージ 14

さて、まずプロジェクトの製品の販売先の目処は立ちそうだ。

4. エクアドル入国!

AさんとD課長が現地に入った✈️Aさんにとっては3年ぶりのエクアドル🇪🇨

こうして、D課長をお連れし、物流担当時代に可愛がってもらえた大好きなC社と一緒に投資案件をやれるチャンスがあるなんて、、まさに、商社マン冥利に尽きるシーンだ。

👱‍♂️(よぉおし!現場を徹底的に調べて、必ずC社と案件を成功させるぞ🔥)

担当者は現場に来ればいつだってアドレナリンが出るものだ💪

ホテル到着。出迎えてくれたのは、現地パートナー企業のE社のF社長だ(🕺)。

B商事の現地スタッフも合流し、F社長ホストの下、ディナーを楽しみながら、今後1週間の旅程を確認し、その日はゆっくり休んだ。

画像3

5. E社バナナ農園視察

旅程の最初は、E社の農園の視察だ。同国最大都市のグアヤキルから車で約2時間走った、標高500mの高地に広がる、同国でも有数のバナナ農園だ🍌

E社の現在運営中の農園に隣接する広大な土地が、このC社向けプロジェクトの予定地となる。

さすが世界有数の名産地の一大業者、トラクターや収穫機、灌漑施設等非常にしっかりしていて、想像していたよりも安定して生産が出来そうなのは一目瞭然であった。

👱‍♂️(プロジェクト用の土地の開墾は誰が?どうやって?)

気になり、F社長に質問した。

🕺「ウチと取引の長い地元のG社がやる。2年後の生産開始には間に合うさ、アミーゴ🖐」

実務研修生の経験から、ラテン系の楽観はプロジェクトの大敵であることは学習済だ。調べてみると、、やはり、、G社実績は、遅延のオンパレードであることが発覚した。それをD課長に報告。

👴「なるほど、、手を打たないといかんね。。」

6. パッキング工場予定地視察

次にパッキング工場予定地だ。輸出港となる、同国最大のグアヤキル港の一角に国有地がある。そこに工場を建てられる様、政府と強いパイプを持つF社長が交渉し、内諾を得ていた。現地パートナーとして心強い一面である。

工場はまだない為、E社が業務委託をしている既存の工場を見学した🏭パッキング工場は、その作業の特色から割とシンプルな造りになっており、安全面を見ても危険な作業場はほとんどない。

気になるのはやはり労働力の確保。だが、①特殊技能が必要でないこと、②この国では若者の人口もドンドン増えていく見通しであること、の2点からさほど心配はなさそうだ。

ただ、、事前にF社長にまとめてもらったデータに目を通した上で、どうしても気になることがあった。

👱‍♂️「社長、御社はどうもこの工場の年間パッキング能力を上回る数量の商品を農園から出荷している様なのですが。。なんでですか??この敷地内に余剰バナナが在庫されている様子もないですし👀💦」

🕺「あぁ〜。先日、農園まで行った道覚えてる??道なき道って感じでしょ?たまにね、山賊が出るわけ。安全第一だし、仕方ないからちょっと分けてあげてるのよ🖐😄」

👴👱‍♂️「・・・」

なんと。。それはそうと、もっと早く言ってよ・・。

7. 地元政府訪問

滞在期間中、最後に訪れたのは地元政府。プロジェクトを行なう場所を管轄する政府との関係作りは不可欠だ

先方の担当者が、2時間遅れで面談室に来た(←役人は本当にいつも遅れるものだ・・・)。

👨‍🦱「Hola〜!どうもですね。えっと、中国の方でしたっけ?(←役人の記憶は適当なものだ・・・)」

👱‍♂️「いえ、日本から来ました。バナナ農園のプロジェクトの件ですね」

そう答えつつも、中国の勢いが南米にまで急速に及び始めている現実を実感した。

👨‍🦱「おぉ!スペイン語話せるんですね??素晴らしい✨いや〜、今日は・・カクカクシカジカ・・ベラベラベラベラ・・ハッハッハ😂」

👱‍♂️(・・・長く、無関係な話をニコニコ聞いてあげる姿勢も大事だ。プロジェクトがスタートして、私が駐在員になったら、この人とも長く付き合って行くことになるのだから😏)

⬆️投資案件に携わる全ての商社マンは、✨自分が駐在出来る✨と思ってしまうものだ。

話も終わり、さて席を立とうとした時、、

👨‍🦱「そう言えば、、プロジェクトはいつからでしたっけ?」

👱‍♂️「全て整えばですが、2年後の202X年から生産開始で考えておりますが・・何か?」

👨‍🦱「来年、新しい税制法案が国会で審議される予定です。これが通れば、この国の主産品であるバナナも例外なく、売上税が5%UPすることになると思いますんで🖐」

👴👱‍♂️「・・・」

ーーーーー

滞在最終日のディナーをD課長と2人で過ごす🌃

👴「A君、、この現場視察を通じて、プロジェクトの開始時期や採算に影響のあるリスク、結構見つかったね〜💦」

👱‍♂️「そうですね〜。。一つひとつ対策考えていきましょ!!絶対、やり遂げましょうよ!!」

D課長とAさんは、山積みの課題と一緒にエクアドルの地を後にした✈️

画像4

8. 課題整理と対応策立案

帰国し、早速、B商事社内での報告会。

現地パートナーの生産能力地元政府との強固な関係性
・C社という本邦最大需要家が販売先となり、かつ共同出資者となること
・B商事の既存のバナナ物流業務とのシナジー発揮
・何より、他商社に先駆けた、高級バナナの今後のアジア圏での大きな需要の取り込みが見込めること

以上を鑑み、青果事業部として、本件を真剣に進めていく方針を固めることとなった。

👱‍♂️(さあ、忙しくなるぞ💦)

早速、社内稟議対応を見すえ、プロジェクトメンバーが組織された。課の後輩のH(👱‍♀️)、物流課と兼務になった新規プロジェクトメンバーのI(👦💦)と一緒に資料作成→社内打合せアポ取りと動いた。

関係コーポレート部署の担当者に案件の説明をしなければ。その上で主な協議事項(=アドバイスをもらう点の一例)は、各部署以下の通りだ。

経理部→エクアドル国内での優遇税制有無(外資による投資案件への税金支払優遇はない?)、会計ルール(どうやって決算書作る?)等

財務部→プロジェクトの資金調達方法(どうやってお金集める?)、パートナーE社の財務分析(E社と付き合って中長期的に大丈夫そう?)

リスクマネジメント部→同国のカントリーリスク対策(いきなり政情変わってプロジェクトが国有化されるとかない!?)、製品の価格変動リスクのヘッジ方法(高級バナナの価格が世界的に暴落したらどう損失を回避する?)

法務部→株主3社間で結ぶ契約書文言(プロジェクトが上手くいかなかった場合に、B商事が少しでも有利に撤退する為には?)等

また、現地視察を通じて発見した、以下リスクへの対応につき、C社との度重なる協議を行なった。

👱‍♂️「まず、主要な課題を整理しましょうか」

1. F社長推薦の現地開墾業者を起用した際のプロジェクト遅延の懸念
2. 農園→パッキング工場の輸送中の山賊被害による出荷量減のリスク
3. 新税制による税金支払増→プロジェクト採算悪化の懸念

👱‍♂️「1.については、弊社の農業関連部署の、隣国ペルーでの農業案件を通じ、優良な業者の起用経験がありまして、ウチが得意先ということもあり、コストもエクアドルの地元業者並みでやれる可能性が出てきました。現在、見積もり取得中です」

👴「素晴らしいですね。やはり総合商社の御社はネットワークが広い!」

👱‍♂️「2.はどうしましょうか?」

👴「エクアドルのセキュリティ会社を起用出来ないかな?奪われるバナナが生み出す利益と、セキュリティガードを雇うコストを天秤にかける必要があるけど・・」

👱‍♂️「現地にすぐに確認させます。3.ですが、、現地事務所&経理部税務チームにも確認しましたが、、2-3年後とはならいまでも、少し遅れてでも必ず新税制案が通る可能性は高い様です。同国の弱い財政状況を考えると、、残念ながら。」

👴「そうかい。。うーん」

👱‍♂️「この税金負担増の影響で、プロジェクトのキャッシュフローが悪化する見込みでして、、プロジェクトの採算考えると、御社向け販売価格のディスカウント幅を削ってもらうしか・・

👴「・・・参ったなぁ。。」

9. 名物!現地パートナーの後出しジャンケン!

プロジェクトのC社向け販売のディスカウントにつき、D課長がC社内で頑張って説得を試みるも、やはり無条件に受け入れてくるはずもなく、新たな条件を突きつけられる結果となった。

👴「A君、プロジェクトの採算改善の為に、当社のディスカウント幅は半分に削減します。」

👱‍♂️「本当ですか!?ありがとうございます。」

👴「ただし、条件がある。ウチの購入オプションを、5-7割→5-8割まで比率を上げてほしい。でなければ削減は出来ない。」

👱‍♂️「え、、弊社の取扱量が減る可能性があるのですか!?それでは弊社の利益が小さ過ぎて、弊社内の稟議が通らないです。。」

加えて、B商事としては、既に米国・中国・メキシコの顧客に、最低でも合計3割は販売する旨、既に大筋合意済であった為、B商事の取扱量を減らすことは出来ない。

C社も絶対譲れない様子である為、C社の利益確保に向け、B商事は船会社と鬼交渉をすることに👹結果、エクアドル→極東の運賃を下げることに成功し、結果的に、C社は、元の想定価格とほぼ同じ価格で買えることに!!

👴👱‍♂️「よぉ〜し!!少しずつ目処が立ってきた!!」

・・だが、いつの時代もプロジェクトはそんなに簡単にはいかないものなのだ。

2人がそう思ってた矢先のことである。その晩、23時頃まで残業し、さて帰ろうかと身支度を整えていたAさんに、現地時間9時のエクアドルから一本の電話が。。

🕺「Hola~アミーゴ!プロジェクトの製品、2割はウチが国内で販売させてくれない??」

10. 苦難の末に・・・

なんてこった・・。せっかくC社との交渉で合意に至ったのに。。超スーパー後出しジャンケンやん。。現地では、あれ程、販売先は日系2社が牛耳るコンセプトである旨説明したし、E社にとっても、アジア圏は新規マーケットになる為、寧ろ喜んでいたのに・・🙌

おそらく、、国内でも増えつつある富裕層へ、長年、F社長自身でアクセスしてきており、昨今になって売れる見通しがついたのだろう。。

👱‍♂️(どうするか、、現地強力なパートナーの意向は絶対に無視出来ない・・・。)

翌朝、早速、C社を訪問しその旨報告。D課長は怒り心頭だ。

👴「なんで今更!!A君、本当に彼らは信用できるのか!?💢どう社内で説明すれば・・」

👱‍♂️「やはり途上国相手のプロジェクトですから、、一筋縄では行かないですね。最悪、御社の購入権を0.5割減らしてしまうことをお認め頂き、交渉をお任せ頂けますか。」

そういって、AさんはF社長と交渉。まずは完全拒否するも、案の定、F社長は認めてもらわねばプロジェクトから降りると言及。そこで、以下、Aさん-F社長間で交渉が行われた。

👱‍♂️「2割(=20%)は絶対不可。コンセプトから覆る。1割(=10%)なら譲歩する」

🕺「・・あと少し上乗せして🙇‍♂️」

👱‍♂️「C社販売状況に併せ、5%上乗せ可とするが、、では交換条件として、開墾業者の選定はこちらが選ぶ権利を有することを認めて頂きたい

🕺「・・うぅ、、。わかった」

交渉の結果、以下がプロジェクトの製品販売ポートフォリオ(=販売先)となった。

・C社向け/日本→45-65%(C社の販売状況に応じて、65%まで買取可能)
・B商事向け/米・中・メキシコ→25-40%
・E社向け/エクアドル国内→10-15%

さらに、開墾業者も、目論見通り、B商事の得意先のペルーの業者を起用することで決定!①プロジェクト遅延を防ぐだけでなく、②マージンがB商事に入る仕組みとし、ピンチをチャンスに変えることに成功した👱‍♂️✨

話戻り、セキュリティコンサルからの見積もりを基に、プロジェクトの採算をシミュレーションした。結果、農園→工場の製品は輸送中にセキュリティガードをつけて山賊リスクを排除し、売上を上げた方が採算が良いと判明。ガードを採用する方針を固めた。

ついに!!リスクも押さえ、プロジェクトの推進条件についてもパートナー間で大筋合意に至った。。

次はいよいよ稟議だ🔥

画像5

1. 質問の嵐

パートナー間で条件大筋合意の後、本部長の指示、コーポレート関係各部署のアドバイスを基に、各種契約書のドラフトが完成した。

また、B商事の取扱分の販売先となる米・中・メキシコの顧客との長期売買契約書等、十数件にもわたる契約書と、稟議書の添付となる案件説明資料も、後輩(👱‍♀️💦👦💦)の頑張りにより全て完了した。

最後に、稟議申請前の案件審議会という場がある。簡単に言うと、申請する前に役員等、稟議が回る主要部署の偉い人たちが集い、めちゃくちゃ細かいトコまでその案件の信頼性について質問しまくる場ってトコだ。

👓「パッキング工場がストライキか何かで稼働停止し、商品が市場に出る前に腐るリスクはないのか?」

👓「現地パートナーE社のF社長に、地元政府との癒着の心配はないのか?」

👓「品種改良が進み、販売先の市場で高級品が供給過多になる恐れは?」

👓「当社の戦略パートナーたるC社との今後の将来図は?青果事業部は具体的にどう付き合っていくつもり?」

・・まさに最後の試練だ。。食料本部に属する自分達からしたら当たり前のことでも、管轄外の役員からしたら想像だに出来ない話があったり、逆に新鮮な目で、

👱‍♂️(そんなリスクもあったか・・・)

と、目から鱗の鋭い質問も出してくる。これが最後の試練。

とにかく、契約締結の締切から逆算すると、明後日までに申請を行なうしかなく、今夜と明日は徹夜の作業だ(👱‍♂️💦👱‍♀️💦👦💦)

12. このタイミングでそんなこと起こる・・!?

ようやく審議会の質問に対する答弁も準備でき、稟議申請を完了させた・・。

その旨、C社とE社に一報を入れる📞C社内でもD課長(👴)を中心に稟議を上げているとのことだった。

ちなみに、、稟議を申請した後も、ドンドン追加対応の要請を受けることなんてザラである😞稟議プロセス中は、許可が下るまで心が安らぐことなんてないものだ。

少〜しだけ落ち着いたか、、と思い、現在、どの部署/どの役員の許可待ちという状況なのか、システム上で確認しながら横目で見ていたスクリーンに映るYahoo!ニュース上にこんなニュースが・・。

“XX国XX地方のバナナ畑で基準値を超える農薬の使用が見つかる。致死量に上る成分が測定され、業者は商品回収に追われる”

👱‍♂️(・・・XX国か。。物騒なニュースだ。。XX国は一時的に需要が落ちるだろうな・・)

他人事の様にニュースを見ていたまさにその時、一本の電話がかかってきた📞

稟議部長👨‍🦳「青果事業部のA君かね?」

👱‍♂️「・・そ、そうですが(ひえ〜💦偉い人からの📞緊張する💦)」

👨‍🦳「J役員より電話があってな。コンプライアンス担当でもあるJさんより、『今、稟議回ってきているウチのバナナ案件は問題ないのか』との話で・・。君、すぐ現地飛べるか?」

👱‍♂️「え〜〜!?」

こうして、稟議プロセス中の追加要請に応えるべくAさんは飛んだ✈️

他の案件含め、年間に100件程の稟議を見る役員等の予定はパンパンであり、契約締結期限までに許可を得る為には、今夜、日本を発つ必要があったからだ。。

13. FID

現地で第三者土壌測量機関と待ち合わせ。F社長(🕺)には怪しまれない様、適当な理由を付けて農園の再視察を受け入れてもらった。

測定値は基準値の範囲に収まり、ニュースの様なことは起こり得ないことを現場でしっかり確かめた(やはり昨今、コンプライアンス関係は特に厳しくなりつつある。違反があった際の評判リスク(Reputation risk)があまりにも高いのだ)。

帰国の途、Aさんは空港内でレポートを書き終え、本社に送付。経由地のニューヨークで稟議許可が下りたことを知った・・ホッ👱‍♂️😌

こうして、何とか稟議許可を取り、ついにB商事は、エクアドルでの高級バナナ生産&パッキング事業への最終投資決定(FID = Final Investment Decision)を行なったのだ🍌✨

14. 大きな誤算・・・

投資決定を行なってからはや4年もの月日が経った。Aさんは、C社とB商事の日系Joint Venture(J/V)である、現地子会社にVice Presidentとして出向していた✨👱‍♂️✨(ちなみに社長はC社の前課長D氏👴)

B商事の得意先であるペルーの開墾業社による作業は、予定より2ヶ月遅れてしまったが、まあほぼほぼ当初の投資計画の通りの2年ちょっとで完了し、今期は初めての収穫を迎える時期であり、昨今、作業が開始されたばかりだ。

ここまでの道のりは、、やはり平坦ではなかった。。

稟議の時、あれだけ潜在的なリスクを想定しまくったのに、

・想定以上の天候不順と気温差による生産高不調
・選挙の度にストライキが起きてスタッフ出勤率減
・現地の農園コンサルのパフォーマンスが非常に悪く、土壌に対する適切な肥料散布量が不明

等々の問題が発生した⚡️これらの想定外の問題により、初めて売上が立つ今期は予算に比べて約7割程度の売上が見込まれ、プロジェクトは赤字だ💦

特に、3点目の問題は深刻で、今後の生産量と商品の品質に関わるところであり、この点を解決出来なければ、将来的に大きな損失を出してしまう。。

👴👱‍♂️「参りましたねぇ・・・」

プロジェクトは立ち上がりから困難な状況を迎えていた。

15. 総合商社の総合力

一方、B商事本社では、当時、物流課と兼務していたIさん(👦)が、既に本プロジェクトの事業管理主担当者として、リモートでプロジェクトの価値向上の為に日々アイディアを出していた

👦(A先輩も、もう駐在員としてエクアドルに行かれて4年。そろそろ帰任のタイミング出し、後任は俺しかいない👁✨ここでしっかり課長・部長から認められる成果を出して、駐在員ポジションを確保しなければ🔥)

そういうしたたかな想いを心に留め、現在のプロジェクトの最大の課題である適切な肥料散布量問題を解決すべく、社内を奔走していた。

すると、他本部の同期から、社内のベンチャー投資事業部が、米国西海岸で今後伸びそうな精密機器を利用した農業に特化した事業をやっている会社に目を付けて、まさに投資するところだ、という話を聞いた👂

同部の担当者と話をしたところ、青果類の畑での実証例がなく、貴重な試験の場として安価に技術を提供出来る、との話で、両部にとってwin-winということだ✌️

早速、現地で実証実験。農園の上を特殊なセンサーを搭載したドローンを飛ばし、リアルタイムで土壌の成分を分析。それに伴う最適な肥料の組み合わせと散布量を出してくれる仕組みだ。

農園のアナログスタッフにも操作は容易であり、これは期待大!!

F社長🕺「おぉ〜これは希望だ、アミーゴ🎉」

こうして、B商事は総合力を発揮し、見事に現地では解決出来なかった問題を解決することに成功した✨

画像6

16. プロジェクトは続くよどこまでも

直近で1番大きな課題を解決した結果、生産量・品質は共に向上していった💹

良いことは続くもので、アジア圏で高級バナナのプチブームが起こり、相場が急騰投資計画時の1.5倍程の売上が見込める様になり、元々の投資回収期間が8年→6年と短縮される見込みだ。

こうして、本プロジェクトは、短中期的に見れば成功プロジェクトと呼べる案件にまで育っていったのだった✨🍌✨

・・・ってそんな上手く続くはずもなく、今後はまた想定外の事態に奔走され、疲弊する商社マンがまた1人現れることになるのがオチとなるのであった(👦💦)。

~Fin~

いかがでしたでしょうか❓本シリーズもの、長々とご愛読頂きありがとうございました🙇‍♂️

ちなみに、、平日は毎日Twitter上で総合商社関連News等をまとめて呟いてます。よかったら見てみてね👁 → Twitter : @Dochikun1

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?