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DOC 活動報告⑥ 大江戸線散歩

#8

都市を見るときは,鳥の視点で俯瞰するだけでなく,虫の視点で見るというのが大事だとよく言われます.私も街歩きが好きで,車や自転車では発見できない物を見つけられることを何より喜びに感じます.

そんな街歩きがしてほしくて,今回はブラタ〇リ的な感じで,建築を見つつ都市を眺める街歩きを企画しました.

ただ,街歩きをすると言っても当てもなくふらふらするのではなく,何かの筋を通した方が良いと考え,今回は大江戸線沿線を歩くことにしました.

なぜ大江戸線なのかというと,大江戸線は比較的新しくほとんどが公道の下を走っていて,地下鉄を感じながら歩くことができたら街歩きも重層的になるのではないかと考えましたからです.


コースは都庁を出発点に以下のようになりました.

集合 都庁前広場
01 新宿 都庁展望台
02 新国立競技場
03 青山一丁目
04 東京ミッドタウン
05 ノアビル
06 東京タワー
07 増上寺
解散 大門(浜松町)駅

大江戸線は,東京都交通局が運営する総距離約40キロに及ぶ地下鉄路線で,全線開業は2000年の12月(私の誕生日と8日違いの同期),日本で最も深い駅(六本木駅)を持つことでも知られています.今回は,都庁前~大門駅に沿って西側のルートを歩くことにしました.

東京都庁(丹下健三)


秋晴れの土曜日.都庁広場に集まったメンバーとまず向かったのは,丹下健三が手掛けた東京都庁でした.ここで,新宿の歴史を説明するために,古地図を使ってこの場所に淀橋浄水場があったこと,都庁をめぐる丹下健三の話,そして地質的な視点の話をざっくり説明をしました.

即席の資料を使って説明

説明の後都庁の展望台に登って,東京の街並みとこれから歩く道のりを眺めることにしました.

都庁からの眺望を楽しんだ後,いよいよお散歩の開始!
次の目的地である新国立競技場にまでは,各地のちょっとした建築に寄り道しながら一生懸命歩きます.

国立競技場(隈研吾)

東京オリンピックのメイン会場のレガシーとして,スポーツの聖地・発信地としてこれからのスポーツの発展を担う国立競技場は,休日を中心に市民に広く開かれています.スタンドこそ見れないものの,コンコースのようなテラスは通り抜け可能で迫力あるスタジアムの躯体を楽しめます!

47都道府県から木材を調達
突然の「ハイ!チーズ」
みんなで記念撮影(3年は保護者として撮る専)

白で整えられた柱空間と植物,木材のルーバーの心地よい関係性を見ると競技場とは思えない豊かな空間が広がっていることに改めて気づけました.メンバー同士で「ここはこの色の方が良い」とか,逆に「このままの方がベスト」とか議論する姿も見られ,この企画を考えた私としてもすごくうれしかった瞬間でもありました.

神宮外苑のイチョウ並木(青山1丁目)
東京で一番といっても過言ではないほど有名なイチョウ並木が途中にあり,脱線してでも見たいと通りたいイチョウ並木で,ものすごい人でごった返していました.

日の光を受けて透けるイチョウの葉が美しい

鮮やかなイチョウ並木を後にした一行は,一路六本木を目指します.

東京ミッドタウン(六本木)

すでに,お昼時を過ぎかかっていたのでここで一時解散してお昼ご飯に.
ちなみに六本木駅は日本で最も深い場所に駅があることでも知られています.

東京ミッドタウンは,もともと防衛庁が持っていた土地を三井不動産が再開発したもので,オフィスやホテル,病院,美術館など多種多様な業態を抱える一つの街のような商業施設です

この六本木界隈は,大きく再開発で洗練された街並みに移り変わっている一方,首都高やカラオケ店などの雑多な六本木の一面も見ることができ,ランチを済ませたメンバーは,そうした外苑東通りをのんびりと歩きながら東京タワーを目指します.

ノアビル(白井晟一)

交差点に突然現れるまるで宇宙船が舞い降りたようなビル.圧倒的な存在感を放つそのファサードは1974年竣工であることを感じさせません.

砕いたようなレンガは,陰影に深みをもたせて均一な素材感を打ち消しています.

ちょこっと生える草

東京タワー(内藤多仲)

戦後の東京を見つめてきたランドマークは,平和の象徴として60年以上この地で人々の記録と記憶に刻まれ続けていました.特に,鉄骨の一部に朝鮮戦争で使われた戦車の一部が再利用されているようです.

図面は1万枚以上にもなり,構造計算は手計算とは思えないほど正確というのが本当に信じられません.

メンバーはじゃんけんで,エレベータ組と階段をひたすら昇る2チームに分かれて展望台を目指すことに.


約600段の階段
金網から迫力ある展望台を見上げる


展望台で都庁からどれほど歩いてきたかを見る

増上寺

今から遠い昔,増上寺のあるこの場所は海岸線とりわけ岬であったとみられ,中沢新一の「アースダイバー」によれば,先祖の埋葬地として死の世界を実感させる神聖な領域だったようです.その証拠に現在でも墓地として,古墳を持つ芝公園として世俗とは一線を画す場所であり続けています.

しかし,増上寺は昔から存在していたかというとそうではなく,麹町から1598年に今の芝に移転してきました.それから,江戸時代に隆盛を極め,一時は3000人もの修行僧がいたと言われています.そんなことから徳川家ゆかりのパワースポットとして広く信仰を集めている歴史あるお寺となっています.

すっかり日が暮れてきました

本堂の中では絶賛お経の最中で,写真こそ撮れませんでしたが迫力あって緊張感のある礼拝空間が広がっていました.


気付けば真っ暗に…そんなこんなで都営大江戸線(の上を)散歩イベントは大盛況のうちに解散となりました!ブログでは大江戸線に絡めた話はどちらかというと少なめでしたが,歩くと結構地下鉄を感じられる場所があったように思えます.

このイベントで得た知見は,次回の街歩き企画で生かしていきたいと思います.

(追記)

大江戸線の街歩きイベントは,時間の余力があれば勝どきや門前仲町まで行けたらいいなと思っていましたがメンバーの体力を考えると大門までにするのが丁度よかったです.

しかし,私はあきらめきれず後輩のT君を道連れに大江戸線に沿って都庁を目指してまだ歩き続けることにしました(ごめんね).

おそらく浜松町から20キロ弱.

勝どき,両国,上野,神楽坂と一心不乱に歩く.調べるとスタートした都庁の展望台は夜21時半まで開場しているとらしい.

「これは間に合わねば」

と急ぐことに.
歩く間いろんな話をT君としゃべりながら夜の東京を見えない地下鉄に沿って歩く.私にとって今まで感じたことのない楽しさを感じられたことは,思ってもみない収穫でした.

奇抜な飯田橋駅

日頃の運動不足がたたったのか,ふくらはぎやかかとにかなりの痛みと不安を抱えながら,いよいよ眠らない街新宿,都庁の展望台に滑り込むことができました.


そこに待っていたのは満天の星,ではなく東京が紡ぎあげてきた歴史の上に光る街並みでした.

中央に東京タワーが半分隠れている

ブログの分量からもわかるように,朝から晩まで濃密な一日を過ごすことができ,非常に充実した秋の街歩きになりました.


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