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DOC  活動報告⑦ 山手線散歩

#9

前回の都営大江戸線の街歩きがとてもうまくいき,ある程度の手ごたえを(個人的に)つかめたので,かねてより構想していた山手線の街歩きを企画しました.

理想は山手線沿線を歩いて一周することでしたが,さすがに40キロ歩かせるわけにはいかないので,山手線を適宜使ってワープしながら街歩きをすることにしました.今回は年末の忙しいときにもかかわらず2名の先輩にお越しいただき,専門的な知識に基づいた解説をいただくことにしました.

9:30 上野駅公園口

上野公園には建築的見どころがたくさんありますが,その中でもすぐ目に入る国立西洋美術館と東京文化会館は建築物として必見です!
(この二つの建物については,↓をご参照ください)

さて,ここから地図を片手に上野駅から鶯谷駅まで一駅歩きます.上野公園はかつては江戸城の鬼門除けとして建てられた寛永寺という広大な境内のお寺があったそうで,明治期に軍の病院になるところを当時の軍医であったボードワン博士の進言によって今の上野公園できたそうです.

その後,芝や浅草などと同時に日本初の公園として指定され,都民の文化的な生活の中心地としてその役割を果たすことになります.

10:00 鶯谷駅~大塚駅

歩いて山手線を回るには時間も気力も少し難しいものがあるので,ここで大塚駅までワープ.
ちなみに,ホームドアは内回りと外回りで線の本数が違います.この写真はウグイス色の線が1本なので,内回りです.(知ってました?)

10:15 大塚駅

赤い靴を履いているのが私(2022期代表),その右が2023期代表

大塚駅から一路池袋方面まで歩きます.ここでこの辺りの建築について代表と次期代表から簡単な解説が行われました.

大塚駅で降りてまず目に入るのは都電荒川線.千住の三ノ輪から高田馬場の早稲田までを結ぶ路面電車です.近年はこうした都市交通としての路面電車の有効性が再注目されています.

早歩きの代表メンバーを置いていく…(反省)

10:30 としまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)

としまみどりの防災公園

大塚駅から歩いて数十分としまみどりの防災公園に到着.ここは,Park-PFIと呼ばれる官民連携の公園整備が行われた公園として,2022年に都市公園等コンクールで賞を受賞しました.この日も多くの子供たちがこの公園に集まり遊んでいました.
この公園の最大の特徴は,防災面に強い点が挙げられます.カフェやコミュニティバスの発着点として都市の市街地を形成している一方,災害時の一次避難所として役立つようにトイレやかまど,備蓄倉庫が公園の陰にひっそりとたたずんでいます.また,隣には大学のキャンパスが開設され街づくりと密接に公園の整備が行われているという先進的な公園でした.

かわいいばす(イカツイタイヤ付き)

コミュニティバスの通る場所の舗装が違うのは防災時のトラック物資搬入も意識しているそうです


なんの説明をしているんですかね?

11:00 自由学園明日館

プレーリースタイルと呼ばれる低層の建築

山手線散歩旅の中でも目玉ともいえる自由学園明日館.フランクロイドライト設計のこの建物は,羽仁もと子と吉一の教育思想に賛同したライトがほぼ無給で設計したと言われています.設計途中でライトは帰国することになりましたが,弟子の遠藤新が彼の設計を引き継ぎ完成にこぎつけました.

宇都宮で産出される大谷石

ライトは大谷石を好んで使ったとされ,彼の日本における最高傑作である帝国ホテルにもふんだんに使われています.

現在は照明こそありますが当初は,自然光だけで授業が行われていたようです.

T君の写真(めっちゃきれい)
当時を思わせる自然光

水平性を意識したプレーリースタイルは彼の特徴で,アメリカの低木のように高さを抑えることで実現しています.

彼はかなりの高身長(多分)なので建物の低さが分かります


講堂は遠藤新の設計で,フランクロイドの「息子」と呼ばれるほど信頼されていた彼は,生涯そのスタイルを変えませんでした.
彼の設計の特徴は3枚おろしと表現される,二本の梁で空間を区切り大空間を実現するというものです.

自然光と照明のバランスがすばらしい
途中に大きな柱はありません

ライトの建築に対するこだわりと,遠藤新の日本人らしい空間づくりを堪能した一行は,目白駅まで歩きます.

山手線 目白駅~新大久保駅

12:45 新大久保駅

新大久保でいったん各自昼食.どうして韓国文化の街と呼ばれるのかというと,もともとここには韓国にルーツのある会社ロッテが新宿工場をもっており,その流れを受けコリアンタウンを作ろうという流れがきっかけのようです.近年では山手線を挟んで西側にはアジア系,北側にはイスラム系と多文化の街になりつつあります.
 そんなことはいったん置いておいて,それぞれ仲良し同士でご飯を食べます.ちなみに私は,OBのI先輩とビビンバをたべました.とってもおいしかったです.

本格ビビンバってそんなに甘くないんですね

13:45 新大久保駅 再集合

さあ,街歩き再開です.OBのKさんも合流し,より活気のある街歩きがスタート.

新宿に近づくにつれ,今年誕生する東急歌舞伎町タワーが見えてきます.


揺れ動く噴水をコンセプトにデザイン


永山祐子さんが外観を担当したそうで,ガラスにはそれぞれことなる模様が刻まれています.ライブ会場や映画館など複合施設になっているようで,オープンしたらまた中を見に行きたいです!

そんな東急歌舞伎町タワーを眺めて角を曲がると,歌舞伎町の歓楽街にやってきました.清掃があまり行き届いておらず,少し不気味です.トーヨコキッズともよばれる学校に行かない少年少女が集まる場にもなっていて社会問題として取り上げられる場所でもあります.

その歌舞伎町を抜け,一行は新宿ゴールデン街へ

1960年代ごろは盛り場として一時代を築いたゴールデン街は,いまもひっそりと高層ビルに隠れて残っています.

狭い間口が特徴
見返り美人@新宿ゴールデン街
カオスなシンジュクを探索

14:45 新宿駅~原宿駅
新宿駅までもどり,山手線に乗り次は原宿駅で下車.表参道方面に行けば,これまた素晴らしい建築に出会えますが今回は明治神宮に年末詣.日頃の感謝を神様にお伝えします.

明治天皇と昭憲皇后をお祀りするために1920年に創建されました.明治神宮の森は,人工的に作られたものでありますが,自然の力だけで永続的に世代交代を繰り返すように設計され,人工林の最高傑作とも称されます.

15:30 原宿駅~目黒駅

目黒駅まで再び山手線で電車移動.ここでちょっと道をそれて寄り道します.
20分ほど歩いて見えてきたのは,隈研吾設計の瑞聖寺.
1670年創建の歴史あるお寺で,隈研吾さんが設計したのは,本堂ではなく,事務所を含む庫裏とよばれる僧侶のための施設です.

水盤に反射した本堂が美しい
隈さんの特徴でもある梁のルーバーが印象的


目黒駅の帰りに,東京都庭園美術館で行われていたスカイハウス再読展を訪ね,菊竹さんの思想や1/10 模型に触れてメタボリズムの理解を深めていました.

精巧につくられたスカイハウス

17:00 目黒駅~高輪ゲートウェイ駅

日も気づけばすっかり落ち,辺りは真っ暗に.次に訪れたのは,これまた隈研吾氏設計の高輪ゲートウェイ駅です.2020年に開業したこの駅は,もともと車両基地だった場所をJR東日本が再開発を進めているエリアで,今は駅だけですが,数年後には一つの街が誕生している予定です.

折り紙を意識した屋根


ここで集合写真!忙しいのに来てくれてありがとう

ここでは,無人営業のコンビニエンスストアがあり,メンバーは物珍しそうにお菓子を買っていました.(なぜか出られなくなった人がいたとか…)

18:00 高輪ゲートウェイ駅~有楽町

有楽町から東京駅までは,大丸有とよばれる日本有数のビジネス街としていられています.かつては,営業していない時間は閑散としていましたが,近年は商業的な開発もすすみ,この日はイルミネーションで街が彩られロマンチックな雰囲気が漂っていました.


東京国際フォーラム
東京駅(クイーンアン様式)

18:30 東京駅から再び山手線でラストスパート!

御徒町駅から上野駅まではせっかくなので歩くことに.年末のあわただしいアメ横を歩きながらアーケードや高架下の商店の使われ方,居酒屋の展開の仕方を見て,ここまで山手線を巡って見てきた店との違いを発見していきます.

19:00 上野駅公園口
そうしているうちに上野駅にゴール!無事一周することができました.企画発案者としては,まだまだ見せたかった建物や町がありましたが,それはまた今度ということで,今回もかなり満足のいく街歩きができました.

ゴールした後はみんなでアメ横そばの焼き鳥屋で,忘年会を開催しました.コロナ禍でそういうイベントは一切できなかったので,ほとんどの人とって新鮮だったのではないでしょうか.

新鮮すぎて悪酔いしている人もいたけどね…

忙しいなか学年問わず多くの人が集まった(本当にありがたい)おかげで,いろんな視点から意見や感想が飛び交う非常に有意義な街歩きになったのではないかと感じました.

自分としても面白かったと感じる場所が,人それぞれ違っていたので新たな発見につながったと思います.

今後も建築を通じてコミュニケーションをもっととれるようなサークルにしたいなと思ったイベントでした.

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