お盆休みとセミ爆弾

ようやく忙しい7月を乗り越えたと思っていたら、あっという間に8月も折り返し、後半戦に突入である。ガッデム。今年の夏は一切の労働を放棄して遊びと休養に充てようと思っていたのに、仕事に追われて後回しにしていたやりたくない雑務を片付けたり、姉家族と弟の帰省をアシストしただけで半月が溶けてしまったという事実。日々加速していく体感速度とそれに右往左往する体の衰えが憎い。還暦を過ぎた諸先輩方は一体どれだけの“速さ”の中で生きているんだろうか。

甥と姪は毎回必ず「1秒たりとも無駄にしてたまるか!」という意気込みを胸に遊びに来るので、30代を折り返した叔父は彼らと過ごすだけでも体力的に何度も己の弱さを実感する場面があったりする。それでも現在進行系でたけのこのような進化を見せるふたりと過ごす時間は、諦観ばかりが募るこのご時世の中では無条件に前向きになれる貴重な時間である。なので、ふたりと接しているときはこちらも全力で楽しみ、できる限り手を抜かず対話やリアクションに努めるようにしている。

甥のゲーム上達しすぎ問題。これはかなり深刻で、叔父の威厳にも関わる重大な問題である。特に長年自身の力量にも多少なりとも自負のあったスマブラで負けが込むようになってきており、「おーおー、強くなったねえ(接待プレイしてますの顔)」などと必死に見栄を張りながらも、連敗したあとの数戦は余裕を失いガチの持ちキャラであるヨッシー以外選ばなくなり口数も少なくなったりする。自分でも情けないが、それほどの悔しみを味わってしまうくらい甥が強くなりすぎている。気楽な4人大乱闘でアイスクライマーの切り離しコンボやマリオの壁蹴りメテオを着実に決めてくる小学生って何? しかし、そんな甥も苦手なジャンルの宿題を前に機嫌を損ねてぐずったりなどという幼い一面もまだまだ見せてくれるので、その愛しくてたまらない様子をスマブラでの意趣返しも込めて越前リョーマよろしく「まだまだだね」というキモ・オタク・フェイスで見つめている。

姪は今『HUGっと!プリキュア』にだだハマりしており、私のネトフリアカウントのトップはプリキュアのサムネイルまみれになっている。そうしてアニメーションという他者が作った創作物に深く入れ込むことで、自身の創作意欲も爆発しているらしく、時間があれば自分の頭の中に浮かんだことを口に出して語ったり歌ったりしながら絵を描きまくっていた。このお盆休みだけで全ページ埋め尽くす勢いで活用された姪のお絵かき帳を見て、まさにこれはお絵かき帳としての本望なのでは?と感じ、こちらまでうれしくなってしまった。年齢や技術問わず、自身の「したい!」という感情に突き動かされて主体的に発露される創作意欲を傍らで眺めているのは、本当に心地の良い体験だなと改めて思った。どういう手法や媒体に進むにしろ、姪の創作に対する熱量がもっともっと増大していく様をこれからも見ていたいなと強く思う。

今年のお盆休みは突如左足を謎の痛みが襲い(医者に診てもらったが足の骨に物理的な異常はなく、どうやら痛風の可能性が高いとのこと)、またしても体調万全でホストできなかったことが悔やまれる。その上、ひとりきりの時間を確保しにくい時間が続いたあとは毎度のごとく体調を著しく崩すので、ようやく今日になって復調してきたという体たらくではあるが、残り半月、暗い気持ちに陥りやすい世の中ではあるものの、できる限りの範囲で夏休みを満喫するべく気持ちを改めてみる。

今日の夕方、ようやく完全に痛みの引いた足のリハビリも兼ねて、久しぶりに汗を流す程度に外をゆっくり歩いてきたのだが、道中うっかりセミ爆弾の射程距離に足を踏み入れてしまった。自分がなぜ生きているのかすらもはや把握できていないであろうグロテスクで実態の強すぎる“命”の体当たりを喰らい、今年もまた“生きたいと強く願っている瞬間の生命が一番怖い”ということを思い知ったのだった。

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