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どうくつのこと

「どうくつ」という屋号に、深い意味や意図は無い。
大方店主の氏名なのだろうなと思しき店名であれば疑問は抱きにくいと思うし、外国語であれば日本語訳から何となく店の在り方や店主の心意気が伝わるようなものだけれど。まぁ確かに何か意味ありげな名前に思われるのかもしれないなぁと、人様から「何故どうくつ??」と聞かれる度に思う。
そしてせっかく聞いていただいたのに、「特に意味は無い」とアッサリ答えるのはなんだか少し気が引ける。何か素敵なエピソードや思いがある事を期待されるような(とこちらが勝手に感じてしまう)目で見つめられたりした日にはちょっと申し訳なくすら思う。

けれど、無いものを有ることにするのは無理がある。
強いて言えば2年程前に友人家族の家で屋号についてぼんやり考えていた際、ボス(と私が呼んでいる人物)から提案された「味の洞窟」という名の「どうくつ」という響きが気に入って、他に候補が浮かばぬまま定着した、というのが由来。
小さい方からご高齢の方まで読みやすくて覚えてもらえそうな名前、という自分の中での唯一の条件にピタリときたし、何よりちょっとワクワクするフレーズに思えた。
「どうくつ」と聞いて受けるイメージが人それぞれ違うであろうというところも、良いなと思っている。(四人の子の母である私の大切な友人は、「どうくつって、何だか子宮を連想させるなぁ」と言っていた。)
ちなみに偶然見つけた今の場所に何となく洞窟のような要素があった事は、店名と物件の両方がストンと着地する決定打となった。
そしてそのどちらも、まるでそうなる事がずっと前から決まっていたかのようにピタリとはまり、とても気に入っている。

 いつも美味しい食材や飲料が備えられていて、訪れる人のお腹と心をホッと満たせるような、そんな懐深いどうくつになっていけたらなぁと。 
まだまだ器の小さなどうくつの中で、あれやこれやと思い描きながらせっせと肉団子〈ブーレット〉を仕込む今なのである。

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