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富士葵をつなげてきたもの-事務所Smarpriseからの独立


■「富士葵、独立します」

2020年7月21日。
富士葵は、自身の生放送の中で「とてもとても大切なお知らせ」と銘打ち、デビュー当時から共に歩んできた事務所(Smarprise)から独立することを宣言した。

※10分少々の配信なので、もしお時間のある方はこちらから先にどうぞ。

内容としては、これまで富士葵のオリジナル曲『MY ONLY GRADATION』のMV制作のほか、『バーチャル紅白歌合戦』などの制作を手がけてきた株式会社LOGIC&MAGICの技術サポートを受けながら、新曲MV・新衣装・2ndアルバム・ソロライブなどを行っていくというものだった。

※代表取締役社長の太田豊紀氏は、アニメロサマーライブを始め、『戦姫絶唱シンフォギアシリーズ』『うたの☆プリンスさまっ♪シリーズ』『映画 魔法少女リリカルなのはシリーズ』等のエグゼクティブプロデューサーを務めている。

この生放送の直後、富士葵はファンクラブ会員限定の生放送も行った。生放送の終盤では、なんとSmarpriseの五十嵐健 代表取締役社長みずからがコメント欄に現れ「歌劇団の皆様、これからも葵ちゃん、MiMiちゃん、チーム魔界の皆をお願いします!」といった旨のコメントを残していった。

また、同じタイミングで五十嵐氏は、自身のブログにて『富士葵の飛躍について』というタイトルの記事を投稿した。

内容は五十嵐氏の様々な思いを全ての人に伝えられるよう、あえて平易な言葉を選んでいるように見える。もしこれが株主総会や利害関係のあるステークホルダーに対する説明であれば、ここに至る経緯や具体的な数字の話など、よりビジネスや経営に焦点を当てた内容になったはずだ。だが、五十嵐氏はそうではなく、一貫し「産みの親」として富士葵・奏MiMiの両名に、また「FAN(葵歌劇団)」として私たちに向けて、このブログを公開した。

そこには、五十嵐氏の感謝の念がふんだんに盛り込まれていた。自社のコーポレートビジョンでもある『驚きと感動』という言葉を用いて、富士葵と奏MiMiにありがとうと伝えていた。会社の代表から、自社の企業理念を添えて感謝の言葉を発するということが、私にはとても大きな意味を持っているように感じられる。

ブログのタイトルにしても同様だ。スポーツ・芸能界などでも、個人のプレイヤーが所属団体から独立をすることは決して珍しいことではない。しかしながら、様々な理由で手元を離れる彼らに対して、見送る側が「飛躍」という言葉を使うことがどれだけあるだろうか。

やろうと思えば『富士葵の今後について』『富士葵の独立について』『富士葵の進退について』など、様々な表現ができる中で用いられた『飛躍』という言葉。これこそが、彼女を送り出すSmarprise代表からの、期待と確信を込めた、何よりのメッセージなのではないか。

先日の生放送では、富士葵は独立の報告の途中で言葉を詰まらせ、涙ぐむこともあった。人によって受け取り方は様々ではあるとは思うが、私には、それこそ大切に育ててくれた親元を離れる一人の人間を見ているような、寂しさと温かさがないまぜになった気分だった。これまで関係者以外には決して言えなかった(言わなかった)事務所からの独立という言葉を富士葵自身の口から発することは、私たちの観測をもって、決して後戻りのできないものとなった。あの瞬間、本当の意味で、これまでずっと繋いでいた手を富士葵は自ら離したのだ。その実感こそが彼女の心をいっぱいにし、涙となって溢れたのではないかと思う。

■富士葵のこれから

独立とは、読んで字のごとく「独りで立つ」ことだ。五十嵐氏のブログでも「独立である以上、LOGIC&MAGIC社に全てを委ねるのでは一切なく、自身たちの力で強く突き進んでいく覚悟を感じ取ることができました。」と言っている。また「サポートにつくLOGIC&MAGIC社については、最強のパートナーを選んだなと思ってます。」とも書いており、今回の独立は誰かから手を引っ張られたのではなく、富士葵が自ら手を伸ばして掴んだ、意志のある選択なのだろうということが推察できる。

それを象徴するかのように、先日、独立して初めての歌動画がアップロードされた。これまでも数多くカバーしてきた椎名林檎から『人生は夢だらけ』だ。こちらの概要欄で富士葵は「たくさん、たくさん、思いを込めて歌いました。これが人生!葵の人生!」と、この曲に対する並々ならぬ意気込みを見せた。自分の人生にスポットライトを当てるのは、他ならぬ自分自身だ。この動画の中で、彼女はそう華々しく謳い上げる。


しかしながら、生放送で言っていた通り、独立したからといって企画運営の人員が増える訳ではない。むしろ、営業チャネルやバックオフィスの部分でのマンパワーや、気心の知れた多くのスタッフと顔を合わせる機会など、失ったものの方が多いのかもしれない。ただでさえ順風満帆とは言えない船出であるのに、新型コロナウイルスという大嵐が行く手を遮り、不安で、歯がゆい思いをしていたことは想像に難くない。それでも時間は待ってはくれず、荒波の中を、地図も持たずに、手探りのまま漕ぎ出さなければならない。

それでも勇気と覚悟をもって進む富士葵たちに向けて、五十嵐氏はこれまでの感謝の言葉とともに、革新的なクリエイター支援サービスサプライズボックスと、最もそばにいた『葵歌劇団』の自負をもって、これからも全力で応援することを記してブログを綴じた。

今の富士葵を漢字で表すのならば『不屈』という言葉がよく似合う。どれほどの困難が待ち受けようとも、富士葵はその意志の力で航路を切り拓いていくだろう。それでも、予期せぬ嵐や冷たい雨に打たれて、動けなくなってしまうことがあるかもしれない。そんな時、振り返ればいつでも優しく照らしている灯台のような存在として、Smarpriseは変わらずに彼女たちを見守っていてるはずだ。たとえ手が離れたとしても、心はずっと繋がっているのだから。



“意志が存在を証明するのだとしたら、そこに明確な意志を持って、私はタイプミスをデリートした。-富士葵” 

※富士葵『KieR⌫N』概要欄より引用



■おわりに

最後まで読んで頂きありがとうございました。

僕は今回の葵ちゃん達の独立そのものを取り上げて、「美談」とか「イイ話」にするつもりは毛頭ありません。もちろん劇的なターニングポイントであることには変わりありませんが、様々な要因が絡んだ末での今回の決定でしょうし、そして何より、彼女達の新しい物語は、今、まさに始まったばかりなのだからです。

このことに〇×をつけるのは、遠いけれどいつかは必ずくる未来、葵ちゃん達が全力で走りきった後のことだと思います。葵ちゃんたちは全力でやりきると宣言しました。それなら僕も、自分自身のこれからに花丸をつけるため、全力で応援していきます。今回の葵ちゃんの生放送と五十嵐社長のブログ、そして『人生は夢だらけ』は、自分にとっては、そんな決意を改めてさせてくれる熱いものでした。

これ以上は蛇足なってしまう気がするのでまた別の機会にしますが、五十嵐社長を始めとするSmarpriseの皆さんからは、Fight!、TGS、ツアー、ソロライブ、ドレス衣装MV、各種コラボなどで、いつも熱い気持ちを受け取ってきました。

これまでの運営チームである魔界の皆さんがどうなっているのかは、今はきっと「話せないこと」なのだと思います。いつかこの事態が収束して、もしまた直接お会いできることがあれば、その時は心からの感謝とエールをお伝えしたいです。そしてSmarpriseの皆さんとは、今度は様々なイベントやソロライブなどで、一緒に楽しめていけたらいいなと思います。

最後に、どんなときでも一番の驚きと感動を受け取ったのは、葵ちゃん達とSmarpriseさんのファンである僕自身です。皆さんの未来が、驚きと感動に溢れる素敵なものになることを、心より願っています。本当にありがとうございました。

文責:2020/7/24 どぅー

※文章の構成上あまり言及ができませんでしたが、葵ちゃんと同様に、Smarpriseさんの同門でもあるバーチャルシンガーの奏MiMiちゃんも、新しい決意と姿で事務所を独立しています。おちゃめな喋りにハスキーで力強い歌声は、シンガー・ラジオパーソナリティ、そのどちらでも大成を信じてやまない輝きがあります。ぜひ一度、YouTubeチャンネルを覗いてみてくださると幸いです。



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