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あなたは「割り勘」が好きですか?

Go Dutch(割り勘にしよう)という言い方があります。
日本で「割り勘」と言うと総額を人数で均等に割るイメージがありますが、私が UK やドイツで経験した “Go Dutch” は、各々が自分の飲み食いした分をぴったり払うというものです。
よって、「割り勘負け」のような現象が発生しません。

とくにヨーロッパでは、料理をシェアするというカルチャーが希薄です。
大皿料理ではなく、各自が小皿(個皿)をオーダーするので、この「自分が食べた料理を自分で支払う」方式の Go Dutch が可能となります。お会計のときは面倒くさいですが。

私は割り勘が苦手でしてね。
「おごり・おごられ」文化の人間だと思っています。
大人数で会食する場合は、割り勘や会費制にするのも理解できますが、私はそもそも、オフィシャルなパーティーや 5人以上の会食には参加しないことにしています。
食事や飲み会は、サシで行くか、マックス 4人までというマイ不文律があるのです。
その程度の人数なら、ひとりが全員分を支払えばいい(おごればいい)という考えです。

誰がおごるか問題については、人それぞれ異なるポリシーがあるかもしれませんね。
私のそれは次のようなものになります。
✅相手が年下の場合は、有無を言わさず自分がおごる
✅相手が年上であっても自分のほうが高収入と判断した場合は、相手の了承を得たうえで自分がおごる

逆に、相手が年上かつ明らかに自分より高収入である場合は「おごられる」つもりでいます。
この状況で「割り勘にしよう」と言ってくるような人とは、たぶん気が合わないでしょう。

これはどういうことかと言いますとね。
私は「贈与経済」を好む人間なのだと思います。
友人のような安定的で対等な立場の相手に対しては、今回は自分がおごる、次回は相手がおごる、といった関係が心地よいのです。
相手に「与える」と、相手は恩義に感じて次は「返そう」と考える。
この、常に双方に貸し/借りがある関係こそ、真の人と人の関係だと思っています。

おごられっぱなしの後輩は、先輩におごり返すことができません。
また、「一回性」の出会いでおごられた人も、直接返すことができませんね。
それらは、別の誰かに返せばいいのです。
先輩にたくさんおごってもたった人は、いつか自分の後輩に同じことをしてあげたらいい。
一回性の人におごってもらったら、いつか別の一回性の人におごってあげればいいと思うのです。


先日、3人の日本人と飲みに行きましてね。
3人とも会社関係ですが、仕事上直接の絡みがない気楽なメンバーです。
3人とも年下で、どう考えても “目下” なので、お勘定は私がもちました。

次の日、飲み会の参加者(Aさん・Bさん・Cさん・私)宛てに、Cさんからメールがきました。
「昨晩はおつかれさまでした」みたいなどーでもいい枕詞とともに、以下のとおり精算したいと思いますので、〇〇さん(☜ 私のこと)に以下の金額をTWINTしてください、とのこと。
(TWINTとは、個人間で簡単にモバイル送金できるアプリ)

A(40代男性):100フラン
B(30代女性):25フラン
C(30代男性):50フラン

いろんな意味で頭を抱えましたね。
私が「おごる」と言っているのに、「精算」とか言う神経が理解できない。
そして、謎の金額配分。

この「精算案」に従えば、私自身の負担額は 130フランくらいになります。
ちなみに、日本企業の肩書で言えば、Aさんは部長格、Bさんと Cさんは係長~課長格といったところです。

その 30分後に、Bさんからメールの返信がありました。
おキマリの「昨晩はおつかれさまでした」の文言とともに、こんなことが書かれていました。

精算の件ですが、私は Cさんより年上だと思うので、傾斜配分については相談させてください。別途、Teams で連絡しますね。

おまえらメンドクサイ!


スマートにおごられとけ!と思った。
私におごられたくない、みたいな矜持でもあるのだろうか。
Go Dutch ではなく、均等割りでもない、「傾斜配分」とかいうスキーム。
さらに、年齢、役職、性別まで絡んだ、複雑怪奇な思考回路。

考えて、私が至った結論はこうです。
彼らには、「贈与」という概念がない。
後日に貸し借りを残さない、後腐れない関係が心地いいのでしょう。
それって、なんでもかんでもお金で精算(清算)しようとする「市場経済」の原理に毒されていませんか?

4人で楽しく食べたり飲んだりした。
その対価をお店に支払った。そこまでは市場の原理でいいですよ。
でも、それを誰が払うか、仲間内のことは「市場原理」の外にあることですよね。

友人とかではない、ビジネスライクな関係を維持したいがための知恵?
それとも時代が変わったのか。
わからない。
私の常識感覚がおかしいのでしょうか。

noter のみなさま、どうか率直なご意見をください。