見出し画像

大きな社会の暴走は止められない

ゆうです。
あたしが所属してるゼミの先生は社会学の教授です。
今日は、社会のサイズが社会を変えてしまうって話を聞いたので、みなさんにシェアしたいと思います。

1日の利用者数が 100人しかいない鉄道の駅があるとします。
この駅では、ホームから転落したり電車に飛び込んだりする人はいません。
なので、ホームドア(ホームと線路を仕切る可動式ドア)を設置する必要がありません。

一方、1日の利用者数が 100万人を超える駅では、電車に飛び込む人が 1人くらいいるかもしれません。
1人でもいると、事故はニュースとして報じられ、駅のホームは危険だ!と騒ぎだす人々が現れ、やがてホームドアが設置されるようになります。

100人と 100万人の違いが「0と1の違い」を生み、そのたった 1人の違いが社会全体を変えてしまうのです。

この「ホームドアのようなもの」が先生はお気に召さないそうで。
それは、社会にムダなコストをもたらし、町の景観を損ね、異常に過保護な社会をつくってしまう、というわけですね。

これと同じようなものとして、1件の交通事故から設置されるガードレールや、ビルから人が飛び降りたことで屋上が閉鎖される例がある。
この世からビルや校舎の屋上が消えたら、ドラマのいいシーンがなくなっちゃうね。

誰が悪いんだろう。
1. 電車に飛び込んだ人
2. それを大々的に報じるマスメディア
3. 駅のホームは危険だ!と騒ぐ一般大衆
4. その声に押されてホームドアを設置する鉄道会社

ひとつに特定できないよね。
1~4 のどれもが共演していて、これらは共犯関係にあるって先生は言う。

さて、この図式をスシロー問題にあてはめて、誰が悪いか考えてみない?

1. 醤油差しをなめた人
2. その動画を SNS に投稿した人
3. テレビ等で連日報道したマスメディア
4. 「汚い」「一生行かない」等の風評を広めた一般大衆
5. アクリル板の設置等の対策を講じたスシロー

危機管理とダメージコントロールに失敗したスシローってのもあるかしら。

損失額 168億円なんて荒唐無稽な数字も独歩してるみたいだけど。
そんな天文学的な金額が出てくるのも、チェーン展開してるのが悪いとか、株式市場で上場してるのが悪いとか、いろいろ言えちゃうわけよ。

あたしにとってスシロー問題は、広末涼子の不倫と同じくらいどうでもいいトピックなんだけど、ただひとつ気になるのは、一般大衆の集団ヒステリーなのよね。

ヒステリックになっちゃうのもわからなくはないよ。
異常に怒ってる人たちは、自分も被害者のひとりだと感じてるんだと思う。
回転寿司屋に行けなくなっちゃった人。対策用の追加コストによる値上げ。もっと大きな話をすれば、社会的コストが増大するわけだから、社会に棲む全員が被害者だって言えなくもない。

でもね。よーく考えてほしいの。
「一生行かない」って言うあなた。それを決めてるのはあなた自身なのよ。
動画を見たのもあなた。それで不快に感じたのもあなた。
見なきゃいいじゃん。気にしなきゃいいじゃん。

勝手に見て、勝手に不快に感じて、勝手に怒ってる。
それって、自分にとって不快なコンテンツを不謹慎だってクレームする行為と変わらないのよ。

見たくて見たんじゃねーよ、って言う?
なら、そんな動画を無理やり見せたメディアに怒れば?

誤解のないように言うと、醤油差しをなめた人を悪くないと言うつもりはないよ。
「その人が悪い」で済ませていい問題じゃないって言ってるのよ。
醤油差しをなめればスシローが 168億円損失するの?
それって、「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいなもんでしょ。
その間にある因果関係の連鎖(☝の1~5)を問題にすべきなんじゃないの?

つまりね。みんな共犯なんだよ。

そういうことを言う人があまりにも少なくて。
ネット上で意見する人たちって、物事を論理的に考えられないんだな、ってあらためて痛感した。
先生は言った。
いわゆるネット民というのは、マスメディアが言えないことを忖度なく言えるのがいいところですが、知性が欠如しているので役に立ちません

インターネット黎明期といわれる 1990年代、誰もが情報を発信できるようになることで、人類の知的水準は飛躍的に高まるだろう、と期待していた人たちがいたそうよ。
その期待は大きく外れた。
それはなぜでしょう?

知的水準の高い人は、インターネット以前から、著作物などによって情報を発信していたの。
ネットの普及で新たに参入してきたのは、知的水準の低い層だった。その層の “Share of Voice” が高まったため、「期待」とは逆の結果になった。

社会のサイズが大きくなると、社会は暴走し始める。
リアルの社会が暴走して、それにウンザリした人はネットというバーチャルの社会へ逃げ込んだけれど、ネット社会が暴走する今、正しい知性の持ち主はネットからも逃げ出し始めている。