あぶら
「若いうちにトンカツを食っとけ」という言葉をよく聞いた。大人たちは何を言っているかわからないし、トンカツについているキャベツはカサ増しの草であった。
24歳。まだまだ育ち盛りだと思っている。同級生たちは「おばさんだから」「おじさんになった」と自虐をし始めたが、私は絶対にしない。若いからである。トンカツも余裕で食えるし、いまだにキャベツは邪魔である。
しかし、牛の脂が食えなくなった。
ひとくち食らうと胃はたちまち地球の5倍の重力を帯びたように重たくなり、喉まわりは月の重力ほど軽くなったように浮き上がり、とにかく気持ちが悪いのである。
これが、からだの変化。
これが、歳を重ねるということなのだろう。
私は、老いとあぶらが怖い。
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