平日のナイトライフ

ふーっ   

さっきまで息も詰まるようなつらさで、椅子から立ち上がるのも億劫なくらいだったのに オフィス用の靴からパンプスに履き替え、下りエスカレーターに乗った瞬間みなぎっていた。

夕暮れから夜に変わる狭間は高揚感を盛り立てていた。

待ち合わせのイタリアンは、仕事帰りの人々で賑わっていて世間の楽しみとはこういうものかとしみじみ思う。

ベタに頼んだアヒージョの、オリーブオイルの香りがすごくいい。

雑に恋バナを済ませ、ぐだりはじめ、女の友情のくだらなさというか発展性のなさに平和さを感じる。


ほんとうは待ち合わせていない誰かとの出会いを期待する夜の街。

一時だけでもいいから、ドキドキさせてくれればいい。


翌日には忘れる 幻のような 静けさに欲望を秘めたような語らいがあればいい。



ふと帰りの電車で目が合ったスーツの男も、きっと同じことを考えていたのだろう。

「何か起こればいいのに」




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