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ものはよく噛んで食べましょう-2024年3月9日

今日のトピック


叙々苑で喉に肉詰める はい はい はいはいはい

すごくおいしそうでしょう。

先日3月8日金曜日、会社の飲み会で叙々苑に行くことになった、
叙々苑といえば言わずと知れた高級焼肉の名店。
もちろん今までの人生でかの店の敷居をまたいだことなどなく、私は1週間前誘われた日から胸を躍らせたものである。
そしてついに当日を迎えた。
コースの前菜や椀物に舌鼓を打ち(どれもすばらしくおいしかったが、やはり叙々苑サラダがとてもおいしく、こらドレッシングも売れますわなあと思った)、ついにお肉が運ばれてきた。
まずは塩味の肉から先に届いた。上タン塩とズワイガニ焼。
タン塩の時点ですでに私の知っているペナペナでやや噛み応えのあるアレではなく、口の中で一瞬で溶けてしまった。
カニもとても甘くておいしかった。
その次に運ばれてきたのがタレ味の4種で、それが上の写真である。
ふんだんにサシも入っていて何ともおいしそうではないか。
トウモロコシなどでコンディションを整えてから(?)、小ライスなんかも追加注文し、万全の状態で、私はまず手前の厚切り肉を手に取った。
厚切り過ぎて普通に表裏焼くだけでは不安だったので、ステーキにするように四隅も焼き色をつけてから、いざ実食。
うまい。噛めば噛むほど肉の甘味?上品な脂っつーんですか、そういうのが出てきてうまい。
ただ、ここで一つ問題が発生した。
嚙み切れない。別に筋っぽくて硬いとかではなく、ブリンブリンすぎて砕けていかないのだ。
どうしたものかなあ。とはいえこれだけ柔らかい肉だし、まあそこそこ噛んだし、飲み込んでしまおう。人間の喉って意外と度量があるから大丈夫でしょ。

それが完全な判断ミスだった。

結構嚙んだと思っていた肉は予想以上に大きく、私の食道にぴったりとハマりこみ、酸素などが通る隙間はゼロになった。
端的に言えば、窒息である。
水などで流し込もうか考えたが、自分の体に起きていることだから、自分で「これ今水とか飲んでも通らない上に余計首を絞めるだけだな」というのがわかっていた。
その時点で私に残された選択肢は、「自分の嚥下力を信じて待つ」、「周りの人に助けを求める」の2つだった。
しかし、行く前から「(私の本名)さん、楽しみですね!」「人生初の叙々苑ですよ!」とみんなが今日という日を心待ちにしていたのを知っていた。
なによりコースの中盤、場が完全に温まりきったところで、参加者の一人が喉を詰まらせましたなどと言い出し、口から肩ロースの残骸を吐き出したらいったいみんなはどう思うだろうか?
とてもそんなことはできなかった。
であれば、もう「自分の嚥下力を信じて待つ」の一択しかない。
とはいえ全く勝算のない賭けをしていたわけではなく、ゆっくり、とてもゆっくりと肉が下へ向かっているのを感じ取っていたのだ。
まあ、肉が落ちきるまでに私の呼吸が保つかは謎だったが、それでも私は、大きな羞恥心と小さな勇気で、空気を壊さないことを選んだのだ。
やるしかない。
私は耐えた。時間にしてみれば数秒の出来事だっただろうが、私には無限の時間に感じられた。(だって喉が詰まっていたから)
そして、ようやく私はデカすぎる肉を飲み下し、大きく酸素を吸い込んだ。
死ぬかと思った。
運よく物心ついてから死にかける経験をしてこなかった私の心に、今日の体験は深々と傷を残した。
叙々苑で、厚切り肩ロースを喉に詰めて、死にかけた。
死ななくてよかった。心からそう思った。
そのあとに食べたカルビやデザートもとてもおいしかったし、色々面白い会話もしたはずだが、若干そのあとの記憶はおぼろげである。

人間の喉は、小さい。
私たちはアナコンダでもコブラでもない。食道より大きいものは、飲み込めない。
みなさんは、ものはよく噛んで小さくしてから食べましょう。

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