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防災キャンプ@非指定避難所「那覇市ぶんかテンブス館」実践記録

 那覇市国際通りの真ん中にある「那覇市ぶんかテンブス館」。指定避難所ではないのですが、災害時に一時的に人が集まる場所としての可能性があります。今回は、このてんぶす館の避難訓練とともに、那覇市やぶんかてんぶす館の全面的な協力をもとに実施しました。また、コロナ感染リスクのため、宿泊に関しては公募は行わず関係者だけの参加としました。

防災キャンプ@那覇市ぶんかテンブス館(那覇市牧志)
日時:
 10月10日(土)17:00〜11日(月)12:00
場所: 那覇市ぶんかテンブス館・同伝統工芸館
参加者: 50人程度(うち宿泊体験者は10人程度)

 なお、那覇市ぶんかテンブス館の高館長と同伝統工芸館の野底館長が、「私たちも、災害時にここがどのような役割を果たすことができるのか、学びたい」と積極的に関わってくださったことにとって実現したことをここに特記し、感謝申し上げたいと思います。

ポイントは2つ

・学校より小さい規模で、避難者を受け入れる時の課題
・学校避難所は学校外に避難する人にどう対応すべきか。

 那覇市ぶんかテンブス館(以下テンブス館)は指定避難所ではありませんが、それでも収容避難所に指定されている学校に入れない人、行き着くことができない人に対して、現実的にテンブス館が一時的な避難所となる可能性は大いにあります。今回は、どういう立場に置かれることが想定されるかを明らかにするため、大規模災害時における近隣地区および那覇市収容避難所である壺屋小学校で想定される事態を踏まえての防災キャンプとなりました。

 テンブス館は、学校と似た施設(教室・調理実習室・ホール)を持っています。ここを学校避難所に見立てての検証を行いました。
想定するシチュエーションは、地震など、大規模災害時に所有者(那覇市・地権者)が避難者の受け入れを許可したという前提に、避難場所 /収容避難施設としてどう機能するかのチェックを主に行ないました。


テンブス館の概要

BF:駐車場・水槽2基・自家発電
1F:テナント ...地権者
2F:伝統工芸館(紅型・やちむん体験)...那覇市商工農水課
3F:研修室 ...ぶんかてんぶす館
4F:ホール ...ぶんかてんぶす館 245席 5F:屋上
那覇市が指定する避難場所ではない。(指定されるのは、主に公共施設)

テンブス館周辺の状況

①通常は、国際通りや中心商店街に多くの観光客がいる。
 コロナ前は 1000 万人が沖縄本島に来ていたとして、 1日平均約3万人がその日に空港から帰途につくことになります。その多くが、空港に近いこのエリアで土産を買う目的などで滞在しますが、彼らには宿泊場所がありません。そのうち、その日の朝まで泊まっていたホテルが無事なら、そこに移動できる人は何割かいますが、それ以外の人々は災害時に行き場を失ってしまいます。

②「てんぶす」の名のとおり、那覇市中心市街地で、住宅密集地帯。
 人口密度は首都圏と変わらないうえ、古い建物も多い。エリア内には単身高齢者も多くいらっしゃいます。
 大きな地震の時、自宅が無事でも、次にもっと大きな地震が来るのではという恐怖が、人・モノ・情報が集まる場所に足を向かせます。過去の大規模災害では、市全人口の 50%は避難行動をしています。中心市街地はさらにその傾向が強まるため、中心地に人が集まることは容易に想定できます。

③周辺の収容・指定避難所は、半径 500m以内は壺屋小学校だけ。(1km だと神原小学校など6か所)。
 壺屋小学校は、校舎が避難所となります。小学校のホームページによると、体育館は使えないとされているようです。ホームページに収容人数までは書かれていないのですが、同規模の小学校の場合(曙小)で試算したところ、以下のような計算になりました。

・普通教室と体育館で収容可能人数は 420 人程度。
・図工室や音楽室を入れるとプラス 50 人程度。 (理科室は使わない机などを収納する倉庫として考え、含まない)
・ホームページでは、壺屋小は体育館使用不可になっているので、400 人程度に留まると考えられる。 

...この地域の避難者は、市が指定する収容避難所だけではとうていまかなえないと考えられます。そこで、テンブス館にも一時的な避難所としての役割が期待されます。

テンブス館の施設/設備

 ①学校と同じような部屋がそろっている。
・建物で収容可能な人数的には壺屋小学校の4分の1くらいと思われる。
・避難者を受け入れられるスペースは、2F 吹き抜け空間、3F 研修室(和室・調理実習室あり)、4F ホール。

2F 吹き抜け空間
 4人収容家庭テントを張ると、25 張り程度。雨の影響を受けない場所は、10 張り程度。

3F 研修室
 1家族(平均 2.4 人)必要な区画を4×4mとしてギャラリー:81 m²(5.1 区画 12 人)、会議室:43 m²(2.7 区画 7 人)、研修室:58 m²(3.6 区画9人)、 和室:10畳37m²(2.3区画6人) 計コロナリスク下での着席63人、就寝34人(1区画4×4m) 他に、調理室 44 m²

4F ホール 294.2 m²
 246 席、定員 330 人(18.4 区画 45 人)、楽屋2室、ホワイエなど(15 人程度) レッスンルーム:78 m²(4.9 区画 12 人)、音楽スタジオ2室:21 m²+14 m²(2.2 区画5人) 計コロナリスク下での着席 136 人、就寝 77 人。各階に多目的トイレ、3F には給湯室、シャワー室あり。
 ➡コロナ下での収容は、3・4F で就寝可能者約 110 人、2F テント計約 30 人、合計 140 人程度。

1F てんぶす前広場
 発生直後は一時避難場所となる。避難者受け入れ後は自衛隊、救護、給水、支援関係の車両を停めることができる。
 地下駐車場は 75 台収容だが、電動式立体になっているため、停電時は 20 台程度か。 

「部屋はたくさんある。しかしそれだけではだめだと気づいた」と館長。

テンブス館のライフライン事情

①水
・近くに生活用水を供給できる場所がない。最も近いのは壺屋の 330 側「東ぬカー」

②電気
・自家発電は2時間。
・クーラーが止まれば、内側にある部屋の換気は難しい。熱中症の心配がある。

衛生管理について

①ソーシャルディスタンス
・仕切り 100 個は必要。テントがあればもう少し詰めて収容できる。テントは必要。 
・また、避難者の受け入れだけでなく、イベント開催中の避難をどうするかも考えなければいけない。

②換気

・大規模停電時、内側にある部屋に風をどう入れるか。特に4F ホールの換気は難しい。窓がない。
・開放を心がけている学校と違い、気密性が高い部屋も多い。室温、湿度対策も必要。

 ③感染症・食中毒対策」(トイレ、調理室)
・大規模断水では、水による洗い流しやうがい、歯磨きの頻度が下がる。
 ➡高齢者は歯周病から誤嚥性肺炎の恐れがある。アルコールやマウスウオッシュを避難者自身が持参する必要がある。
・調理実習室は、混乱をきたすので、落ち着いてからどう稼働させるか検討。 手袋、マスク、防止の着用はもちろん。入り口に殺菌。 食中毒対策は、トイレからの靴による持ち込みを警戒し、トイレに次亜塩素酸による消毒。 コロナ対策は、容器の管理。避難者の手を使わないよう、おたまやトングなどを共有しないことが重要。

全体のコーディネートについて

施設全体のゾーニングと人の流れのコントロール
 不特定多数の人が自由出入りできる空間を、誰がどう制御するのか。 人の流れを制御するための受付の場所と体制づくりが不可欠。避難者の出入りをどうマネジメントするか。避難者だけでなく、家族を探す人、報道などへの対応も必要となる。また、安否確認や生活情報を掲示する「情報掲示板」を設置する場所も求められる。 
 避難室までの導線について、体調不良者と通路を分ける必要がある。加えて、 体調不良者や福祉的対応が必要な人の部屋割りトイレの使い分けについても考慮する必要がある。
 ペット同伴者に対する室内のゾーニング も含め、先に入った人が広く占領しないよう、トラブルを避ける「区画整理」のようなコーディネートも行わなければならない。
→奥武山球場外野芝など自由席の場合、よい席をおさえるためやってしまいがち。キャンプでも。 「入口近くがよい」「窓際がよい」などの希望をどうするかを整理しなければならない。

消毒と靴の管理について、通常は土足なので、脱いだ靴をどこに置いて衛生管理を行うかも考慮が必要。 

あわせて、室内での自治組織を準備し、自分たちの問題を自分たちで片付けていくしくみをつくることも重要である。
→室内やトイレ掃除など役割分担を行うこと。

資源も多い

 人や情報の集まる中心市街地に位置するため、災害時に活用できる資源が多いのもテンブス館の特徴である。

外国人対応と情報発信
 那覇市観光協会が翻訳講座を開催しており、外国語ができる人材がいる。 広場には大型ビジョンが設置してあり、特に情報を持たない旅行者に対し、テレビのニュースを流すなどを行うことにより、支援情報や交通機関などの情報提供が可能。
 災害時は特に音声での情報に偏りがち。文字情報を流すことで高齢者、聴覚障がい、外国人にも 情報が伝わりやすくなる。また、地域にはラジオ発信ができるサテライトスタジオがある。市内のコミュニティ FM や臨時災害 FM 局が開設細かい生活情報の発信が可能である。

マチグヮーや商店街、コンビニが多くあるのも地域の特徴である。ここで食品提供を行うことが想定される。災害時には、このような店を閉めるより、活用して無料で物資を配布する方が安全で、トラブルが少なくなる。

これらは学校避難所にはない資源である。地域の良さを活かして、安全・安心な環境を構築していきたい。

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