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アパレル興亡を読みました

この本の第一刷発行は2020年2月18日となっていて、発行後しばらくしてから読み、昭和から平成にかけてのアパレル業界の主力企業と主力商品の移り変わりを、その時の政治と経済の状況、商習慣、テクノロジーの進歩の説明と合わせて、フィクションと実在の人物と実際に起きた出来事を交えながら、面白いエンタメ小説に仕上げてるという感想を、初めて読んだ時に持った記憶があります。

先週に図書館に行くと黒木亮氏の棚にこの本があり、借りて読みました。

本の題名は黒木亮著「アパレル興亡」です。

再び手に取ってみて、結末がわかっているにもかかわらず、作中に出てくる人たちに共感したり、あの時代にこんなことがあったのかと、プロローグからラストまで、小説のリズムに流されるように文章の文字を追うことができます。

「アパレル興亡」のストーリーの中心になる会社は黒木氏がフィクションで設定したオリエント・レディという婦人服を百貨店で売るビジネスを主にするアパレル会社で、「アパレル興亡」を読むと、平成の始めの1990年頃までアパレル販売における百貨店の役割が、いかに大きかったかがわかります。

オリエント・レディの高収益と高品質を誇ったビジネスを追い詰めるのは、ファーストリテイリングが世界規模で運営するユニクロが実名で登場し、ユニクロの店舗運営を創業社長が思いついたのはいつか、ユニクロの商品の製造プロセスと販売拡大はどのような経過をたどったのか、ユニクロが百貨店販売を主にするアパレル会社から顧客を奪うまでに発展できたのは何故か、簡潔にリズムよく読めるように記述されてます。

オーダーメイドから既製服へ、
昭和の頃に百貨店での売り場を確保するのがアパレル会社にとっていかに大事だったか、
昭和の頃の百貨店のアパレル会社に要求する厳しい品質に対してアパレル会社が品質確保のためにいかに努力したか、
人件費の安い海外の地域へと広がっていく服飾品の委託生産と衰退していく日本の繊維工場、
海外生産品の品質向上によって低下するアパレル商品の価格、
平成になってからの昭和の大手アパレル会社の後退または経営破綻、
平成以後のユニクロなどのSPA(製造小売業)の大幅な店舗拡大、
昭和から平成にかけてアパレル会社の内部で何が起きて何が変わったのか、アパレル興亡を読むと、おおまかに知ることができます。

他にも、
協力関係にある取引先との関係において、数次をごまかせば取引先の信頼を失う、
株式を公開する上場会社において、株主との対話はどうあるべきか、
強力なリーダーシップによって統治される会社のリーダーが、有能な後継者を育成していなければ、リーダーがいなくなった後に無能な部下が社長になり、会社の経営がガタガタになる可能性がある、
など、作中には様々な対立シーンがありますが、その中にはアパレル業界だけでなく、他の業界にもあてはまりそうな課題だと考えさせられる部分もあります。

アパレル興亡は読んでると、アパレル業界で働く人達の情熱が文章からにじみ出てくるようで、第一刷発行から4年以上たっても、色褪せることなく読むことができました。




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