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透明な女

冷たい石のような悲しみが弾けて飛んで、わたしは宇宙になる。透明な女は「返して」と言う。なにを返してほしいのかわからず黙っていると「黙っているのはずるい」と言う。
_______ わたしはこの場を乗り切れる、いちばん"ずるく"見えない手段と言葉を探す。透明な女は悔しそうに唇を噛んでいる。 

_______ ワインが飲みたい。ワインも言葉も喉の奥々まで飲み込んでどこに逃げるつもりなのか。_______ 眠ってしまえばいいのに、と思う。透明な女が眠ってしまえばわたしはここでひとりになれる。


夜はいつでも静かであるべきで、宇宙はひとりであるべきで、ここに誰もいなければわたしは大手を振ってさよならできるのに。 

" 笑顔でさらば " 
" 笑顔でさらば " 
" 笑顔でさらば " 

反転してわたしは言葉を探す。
透明な女が今度こそ消えてしまう。 

考えるうちまた爪を剥いでしまう。剥がれた場所に塵と砂がかかる。痛みは存在する。
「そうだ、あなたの唇から出た血とぼくの指先の血をグラスに注いで飲もう。ぼくの血は少し汚れているけれど、温かいうちがいい。」 

透明な女は空気のように動かない。


#詩

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