【詩】東京タワー -リマスター
ランドセルを背負った少女三人が、大きな声で話して騒いでいる。「高尾山!」「エベレスト!」「富士山!」「スカイツリー!」「それ山じゃないよ?」「ちがうよ、わたし、高いものの名前って言ったもん」「うそ、山の名前って・・・」
突然、電車が止まった。
窓の外の空は思い切りの青だった。突き抜けるような青。アナウンスが「緊急停止訓練です、緊急停止訓練です」と言った。乗客たちに驚いた様子はない。スマートフォンや腕時計でそれぞれに時間を確認している。
少女たちを見ると、つやつやした肌の少女たちは、いつの間にか、手を合わせて黙祷していた。
14:46
一分間か、それ以上か。多くの乗客たちが、その光景を見ていた。"二年前" 今よりもっと幼かったであろう少女たちは、あの日をどんな風に記憶しているのだろうか。しばらくして、再びアナウンスが流れて電車が動き出した。少女たちは感触を確かめるように、ゆっくり瞼を開ける。そして、少女のうちの一人が口を開いた。
「東京タワー!!」
(2013.3.11 初稿)
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