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シニアマーケットについて、考える

 重要な対象はシニアマーケット。かつシニアマーケットは通販マーケットそのもの。
※トップ画像出典/
人口ピラミッド(出典/国立社会保障・人口問題研究所)2030年予測。

今後もEC通販の新規顧客層としては「中高年や男性層の確保」が望まれる。とくに、中高年層は今後高齢化が急速に進展する日本にとって大きなマーケットである。そのため、中高年を重点対象として位置づけ、ECサイトの改善やカタログの開発など取り組んでいる企業も多い。中高年の中には、寝たきり老人等、体の不自由な人が、今後も増加すると見られ、お店に行かなくても購入できる「EC通販が果たす社会的役割」も大きい。

そこで、EC通販のターゲットとしてシニア層を分析した。

①シニアマーケットの規模

 人類史上最速と言われるスピードで進む日本の高齢化。平成29(2017)年10月時点の高齢化率:総人口に対する高齢化(65歳以上の割合)は27.7%だが、10年前の予測より早いスピードとなっている。1970年に高齢化率が7%を超えるまでは明治以来ずっと5%だった日本なのに、それがわずかで高齢化率が倍増している。すなわち、4人に1人が高齢者で、2人に1人が50歳以上という世界に例を見ない高齢化社会が到来する。社会保障や医療についてその不安が論じられるのは当然かもしれないが、しかし彼らの実態は従来の高齢者像とはかなり異なるという点を忘れてはいけない

高齢化の先輩である北欧諸国では高齢者を「資金も時間も豊富な熟練消費者」ととらえているが、日本においても高齢者の消費は大きく変わりつつある。ある説によると、最近は50代以上の支出額は、全国民消費の半分以上にあたるという。日本の消費状況に大きな影響を与えないわけがない。当然、EC通販に対しても影響力は大きく、すでに健康食品、産直グルメの拡大や在宅勤務での好調はその証であると思われる。

②通販ターゲットとしてのシニアの特徴

 モノを見る目を持った消費のプロ、それがシニアである。戦後も高度成長期も、バブルの頃も通販のメインターゲットは家庭を持つ主婦だった。だから、ファッション衣料や家庭雑貨をメイン商品とする分厚いカタログが支持された。子育てにお金のかかる世代だから、高いものは売れない。通販のメリットは値ごろ感のある商品を自宅に居ながらにして注文・購入できること、つまり「価格」と「利便性」が素朴な通販の何よりのウリだった。

 しかし、シニア層をターゲットにするとなると事情は大きく変わる。すでにタンスの中にも物置にも、溢れるほどのモノを持っているシニアは、普通のモノなど欲しがらない。かといって、消費意欲がないのとは違う。お金だって持っている。シニアの悩みはむしろ「欲しいものがないこと」であり、「何にお金を使っていいのかわからないこと」ではないだろうか?高度成長期、バブル期と消費の主役を担ってきたシニアたちは、商品知識が豊富だ。したがって、従来の高齢者たちのように、現物を見て触って、販売の説明を聞かなくても商品がわかる人たちで、だから、通販への抵抗も少ない。パソコンを操ってインターネット通販に挑戦する人も少なくない。もしも、シニアが今後、EC通販ユーザーの核になるのであれば、もはやEC通販は「価格」と「利便性」では勝負はできない。シニアマーケットに向けてのウリのポイントを早急に準備しなくてはならない。

③シニアの欲しいものは何か?

 シニアの欲しい通販商品は「健康」「本物」「ノスタルジー」の3つのキーワードでくくる商品だろう。しかも、この3つのキーワードがオーバーラップする商品ほど支持を受ける。

例えば、健康食品を考えてみよう。有名な大手製薬メーカー、食品メーカーが次々に参入する一方、地方の小さなメー力ーでもECやDM販売でコツコツと顧客を広げているところもある。まるで百花繚乱の昨今の健康食品ブームの中で、実は成功パターンは商品の品ぞろえを基準に見ると2つしかない。

1つはファンケルやDHCを代表とする「低価格×豊富な品揃え」のパターン。つまり、「ムダを省いて低コストの実現」をコンセプトとするもの。2つ目は、「やずや」、「山田養蜂場」に代表される「高附加価値×単品」のパターンで、「由来ある本物の逸品」がコンセプトの商品。もちろん後者の場合、高附加価値だから高価格だとは限らない。むしろ、ユーザーへの訴求のポイントが付加価値、つまり「由来物語」にあるという意味だと考えるべきだろう。決して価格の問題ではない。この2つのパターンのうち、どちらがシニアに支持されているかというと、おそらく媒体の作り方、商品ネーミング等から判断して後者ではないかと思われるが、これが、まさに「健康」「本物」「ノスタルジー」の3つのキーワードをオーバーラップさせる商品に仕上っている。「今の日本人が失ってしまった、昔ながらの健康習慣をモトに、本物の素材を使った本物仕様の健康によい商品」この設定がシニアユーザーの心をいとも簡単に動かしてしまう。同様に産地直送の食品の多くもこの要素を持っている。そして、どちらかといえば、モノよりもモノの付加価値である「由来物語」をアピールするこれらのEC通販は、従来のモールショピングとは違う単品スタイルを生み出した。それこそが「単品EC」というビジネスモデルともいえよう。

④シニアだけで良いのか?

 セミナーや講演会などでこのような質問を受けることが多い。「シニアマーケットの重要性は認識している。しかし、それだけで良いのか?」と。これはターゲット論というより、どちらかと言うと、マーケティンングの基礎であるSTP(Segment、Target、Positioning)の話ですね、とお答えしている。そして、別のターゲットを獲得するなら、単品ECの世界で言えば、別ブランドを立ち上げるほうが良いように思う。

こうすれば、事業拡大にもその安定にもつがるのであるが、果たしてそれをやる時期かどうかと自問自答してからのぞみたい。

 



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