糖尿病の合併症をサラッと紹介
糖尿病の合併症は広範囲
小さな血管:眼、腎、末梢神経
大きな血管:脳の血管、心臓の血管、足の血管
免疫力低下:歯周病、足の壊死
その他 :骨粗鬆症、認知症、癌
糖尿病は血管をもろくしたり、免疫力を衰えさせたりと、身体の広い範囲に影響を与えます。
それぞれの合併症についてサラッとみていきましょう。
糖尿病の合併症 眼
眼の奥の血管が弱くなることが主な原因です。
初期には症状がないことが多いのですが、黄斑部という視力に大きく関わる部分に影響が出ると、初期段階でも視力低下を起こします。
眼の合併症(網膜症)は糖尿病歴10年未満の糖尿病患者では15~20%ですが、糖尿病歴が長くなるとともに頻度が上がります。
眼科への受診頻度は、眼の状態および糖尿病のコントロール次第です。
網膜症がない人でも年間3%は新しく網膜症を発症するというデータがあるので、少なくとも1年に1回は受診するようにしましょう。
糖尿病の合併症 腎
腎臓の血管が弱くなることで起こります。
典型的な経過としては、まずは尿からアルブミンという小さなタンパク質が漏れてきます。 悪化するとサイズが大きい蛋白質がでるようになります。 これがさらに悪化すると腎臓への血液の流れが低下して、最終的に腎臓は機能を失います。
腎臓への血液の流れはeGFRというもので評価します。 それぞれのデータを平均的な体格にした場合の腎臓への血流量をみます。 健康な人で100ml/分/1.73m^2です。 5分で500mlのペットボトル量を処理していると考えると、スゴイですよね。
糖尿病の合併症 末梢神経
症状から大きく3つに分かれます。
1. 痛みなどの異常感覚
2. 感覚の鈍感化
3. 立ちくらみやEDなど自律神経障害
痛みのある神経障害については血糖管理と時間経過での改善を期待しますが、症状が強い時は薬を使います。
感覚の鈍感化に関しては怪我や火傷の注意が必要です。
痛みや違和感を感じないので、怪我をしたことに気が付かないことがあるため、入浴時などに自分の眼で怪我をしていないか確認する必要があります。
過去に診た患者さんでは、足が赤く腫れていたのに痛みがなく、受診時に確認したら骨折していたことがありました。 骨折しても気が付かないぐらい感覚が鈍感になっていたのです。
自律神経障害では運動制限が必要です。
運動時に心臓がドキドキとする。 立ち上がったときに、手足の血管を締めて頭に血流をおくる。 といった機能が低下します。
そのため自律神経障害では運動制限が必要です。
糖尿病の合併症 大きな血管
糖尿病は心臓・脳・足に血液を送る大きな血管にも悪影響を与えます。
具体的には、心筋梗塞、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、閉塞性動脈硬化症といったものです。
小さな血管への予防効果に比べて、大きな血管に対する予防効果は血糖値管理だけでは不十分です。
血糖値の管理に加えて、血圧と脂質をよく管理し、禁煙、運動とできることを全て行っていきましょう。
糖尿病の合併症 歯周病
歯周病は成人の歯を失う原因の第1位であり、40歳以上で8割が歯周病といわれております。
糖尿病では歯周病になりやすく、血糖値の管理が悪いと進行が早いことが分かっています。
血糖値の管理により歯周病の改善が、また歯周病の治療により血糖値の改善が期待できます。
糖尿病の合併症 足
1. 傷つきやすいこと
2. 怪我に気づきにくい
3. 治りにくい
ことで原因です。
足に怪我をしてないか、毎日眼で見て確認しましょう。
怪我をしないために、適切な靴を選び、足にあった靴下を履き、しっかり保湿をしましょう。
水虫がある場合には、確実に治療しましょう。
糖尿病の合併症 骨粗鬆症
糖尿病は骨が弱くなることにより、骨折しやすくなります。
また、糖尿病では骨密度による骨折リスクの評価は低く見積もられてしまうので注意が必要です。
糖尿病は骨折リスクとして、筋力やバランス力の向上、必要に応じて薬を使って骨折リスクに対応していきましょう。
糖尿病の合併症 認知症
糖尿病では認知症になりやすいです。
特に低血糖発作は認知症のリスクです。 認知症を防ぐためにも低血糖を避けた治療が重要です。
また認知症を合併すると食事や服薬の管理が難しくなります。 病状や使える社会サービスをみながら、個別の目標設定と治療計画が必要です。
糖尿病の合併症 癌
糖尿病では癌にもなりやすくなります。
糖尿病薬で癌が減らせるか不明ですが、健康的な食事、有酸素運動、筋トレ、禁煙、節酒は効果があると思われます。
残念ながら、恐怖心を煽って検査やサプリを勧める方々がいます。不安になったら信頼できる医師と相談することが大事です。
名古屋糖尿病内科クリニック
糖尿病専門医 平井博之
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