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3000マイル・イン・サーチオブAS「教会にて」#1エントリー!

拝啓、みなさま。アスキュが唐突に旅に出てしばらくたつけど、アスキュは元気だよ。
唐突に旅に出たのは色々な理由があるけど…
アスキュの同型のバイオニンジャを探す旅。
アスキュの原型のニンジャを探す旅。
アスキュを狙う何かから逃げる旅。
とにかく色々。
まずアスキュが訪ねてみたのはネオサイタマの外れの教会…
いつの間にか居着いていたというヘッドギアを着けてるシスターさんの噂を聞き、訪ねてみた廃墟めいた教会だよ。

マッポー電脳都市ネオサイタマ…この街でもブディズムの影に隠れてはいるが、教会、礼拝堂の類は点在している。
だがテンプルがそうであるように管理する者が居なくなった教会は打ち捨てられ、ありふれた廃墟の一つになり果て、神聖な場所であるべき場所はヨタモノやカルトの溜まり場になり果てる。

そういった場所を好き好んで復興させようとする聖職者はまず居ない。
仮に出向こうものならヨタモノに殺され身ぐるみ剥がされるのが目に見えており、そもそもヨタモノが教会を占領するような地域に熱心なクリスチャンは存在しないのだ。

そんなありふれた廃教会の1つに突然シスターが単身乗り込み、カタナでヨタモノを一掃し、教えを説いている…そんなめちゃくちゃな噂を聞きつけて、やってきたのは奇妙なアトモスフィアの色白の女であった。

冬でもないのに厚着、腰のカタナとは別に背負った大剣…に加えリュック。腕や耳はサイバネ置換されており、頭にはサイバーゴーグルを着けている。そしてぼんやりしたような表情で、タバコめいたラムネ菓子を咥えてUNIX端末と教会を交互に見比べている。

「ここかなー、噂の教会はー?」『ここ。ヌルが保証する』「噂で聞いたより…ぼろぼろだよ?」『ぼろぼろでも、ここ』「わかったー」通信を終えて教会の扉を開…こうとして外してしまった彼女の名前はアーティフィシャルシグクワイト…通称アスキュである。

◆◆◆

「これはアスキュは悪くないよ!」「明らかに悪いだろうがバカ!扉に書いてある文字が読めないのか!」薄汚い神父めいた男が指差した扉…ノブが外れ、金具が壊れた扉…には「こちら側を開けない」「修理中」と確かに張り紙がしてあった。してあったがアスキュは端末を見ながらエントリーしていたため気がつかなかったのだ。実際アスキュが悪いのだ。ウカツ!

「全く…どうすんだよこれ!金具いってるじゃねぇか!せっかくアルジ=サンのために一晩かけて修理してたのによぉ!チクショ!」神父めいた男はケモビール缶を開けた。どうみても真っ当な聖職者ではない。「あー…神父=サン…だよね?金具はなんとか直してみるから…」「シンプじゃねぇわ!俺はシンブだ!」「シンブ=サン、そのアルジ=サンっていうのは…この、シスターの人?」アスキュは写真を取り出し見せた。金髪の赤い目をしたシスターだ。

「あ?確かにそれはアルジ=サンだが…何なんだお前?アルジ=サンに何の用だ?そんな物騒なナリで…」シンブは訝しげにアスキュを見た。カタナに大剣、長袖で隠れているのはテッコだ。改めて見るとこの女は…あからさまに危険だ!

「まさか、アルジ=サンを殺しに来たアサシンか何かか!チクショウめ!アルジ=サンには手出しさせんぞ!」シンブは背負っていた十字架を構え、先端をアスキュに向けた。ナムサン、十字架型ライフルである!

「え、ちょっと待った待った!アスキュはたまたま重武装ってだけで、アルジ=サンをどうこうする気はないよ!というか何その十字架!?」「聖なる十字架ライフルに決まってるだろ!ありがたいぞ!信仰を喰らえ!」モンドムヨー!威嚇的にアスキュの付近に射撃する!「むちゃくちゃだー!?」最小限の動きで回避するアスキュは…シンブの視界から消えた。

逃げたか。そうシンブが思った直後、急に十字架ライフルが冷たくなった。「アイエッ!?」あまりの冷たさに思わず取り落とした十字架ライフルの銃身を握る手があった。アスキュである。

「お、お前、何を…」「あー、説明すると長いけどー…」十字架ライフルを後ろに放り投げて床を指し示した。「これ、どうしようかー…」「アッ…」ナムサン、教会に敷かれた…新調されたばかりであろうカーペットは縦断により穴だらけであった。
「扉が外れてると思ったら…一体何の騒ぎですか?シンブ=サン…」「アッ」二人が優しそうな声がした方を見ると、シスターが…アスキュが探していた"アージェント"が驚いた表情で立っていた。

続く