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満月の夜の物語

月が怪しい赤い光で辺りを染める

不安に駆られた女は足早に暗闇を探した
どこからか微かに聞こえる
イーグルスのホテル・カリフォルニア 

二度と出られない
まやかしの桃源郷

立ち止まる
振り返ると
来た道は知らない街の路地

寂れた飲み屋
酔っ払いがドアから出てきてこちらを観て何かブツブツいってる

視線を落とすと
自分の足元に小さくしゃがみこんだ
子どもがいる

ゆっくりこちらを見上げたその顔には
誰かの面影

誰だっけ。。。

「ねえ、君だれ」

       低い男の声で
           「4歳のオマエ」

「ここは何故こんなに赤いの?」

         「お前が溜め込んだ怒りと妬み」

「なんか波の音が聞こえる」

          「もう一人のオマエが待ってる」

「海で何してるの」

          「お前が死ぬのを待ってるのさ」

月の光が赤かったのではない。
私の世界が発する赤だった

月は自分だけでは光らない

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