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日本人らしさの探求:優しさ、美学、そして自然への敬意 【伊藤穣一】

近頃、大いに注目されているのがMETAが提供する「スレッズ」です。その驚くべき成長は、オーガニックなユーザー増加を通じて、わずか5日間でユーザー数が1億人を突破したというニュースに現れています。このペースが続けば、チャットGPTのユーザー数を追い越す日も近いかもしれません。

スレッズにはインスタグラムのネットワークを連携させることが可能で、そのための一部オーガニックな成長が見られています。インターネット上で盛んに議論されているのは、チャットGPTよりもスレッズの普及が早いという事実です。しかし、まだスレッズを全く知らない人もいる一方で、Facebookから派生したアプリだという誤解を持つ人も存在します。

一方で、ツイッターが閲覧制限を設けたり、内部的な問題があったりと、ユーザーがツイッターから離れ始めている動きが見受けられます。著名人や政治家など、注目すべき人物もツイッターから離れ、スレッズに移行しているのです。

SNSの世界は移り変わりが速いですが、スレッズは最初期のツイッターやFacebookを彷彿とさせる雰囲気を持っています。一緒にSNSで交流していたが、最近は見かけなくなっていた人たちが再び現れ、皆が再び楽しげにやりとりしています。

私自身もスレッズを始めてみました。主に英語での投稿を行っています。特に千葉工大の学長についての話題を中心に書こうと考えています。先日はブータンの王様との会話を通じて、日本の未来や千葉工大について深く考える機会があり、それらの話をスレッズで共有する計画です。

ブータンの話は、特別に重視するマインドフルネスやウェルネスの話、暗号通貨に対する興味、そして西洋的な競争や破壊の考え方に対する批判など、非常に多角的な視点を含んでいます。

最近、茶道や禅、仏教などの東洋の思想とAIや新技術の融合に関心を持っています。ブータンの王様との議論は、そのような観点から非常に興味深いものでした。そしてその結果、私たちはハーモニーやhappinessという概念が、現代社会においてどのように表現され、理解されるべきかという観点から、深い議論を交わすことができました。

以上のような視点や経験をスレッズを通じて共有し、監視していくことで、新たなコミュニケーションの形が生まれることを期待しています。

ブータン国王についての議論がとても興味深いですね。彼が日本をどう捉えているのか、また彼から日本に対して具体的な助言があるのかについて、私たちは共有したいと考えています。彼は日本が好きで、公的な訪問でなくても、外国に出かける際には日本に立ち寄って何日間か過ごすことがよくあります。その際、彼は日本の文化や人々に親しみ、彼が尊敬する人々との交流を楽しんでいます。

彼は日本を本当に尊敬しており、それは我々が起業する際に直接的な役割を果たさないかもしれませんが、彼がイーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグといった西洋のビジネスリーダーとは異なる視点を持っていることは明らかです。私たちは、日本とブータンの両国が共有する美学や文化を理解し、その理解を更に深めることで、我々の時代のAI開発に何か新しいものをもたらすことができると信じています。

ブータンと日本の間には、共感や平和を尊ぶといった共通の価値観が存在することを理解しています。そしてそれらの価値観は、私たちが目指す社会を構築する上で非常に重要です。私たちが国を発展させ、進歩させることで、それらの重要な価値観を失ってしまう可能性があることは常に心に留めています。

これから彼との対話を深めていくつもりです。そして、文化とその価値観、特にブータンの文化とのつながりに焦点を当てています。その中で、私たちは日本人のアイデンティティについて深く考えています。

私たちは、リスナーの方々から多くのメッセージをいただいています。それらのメッセージは、私たちが考える日本人らしさや、Web3の世界への展望、茶道や空海への関心、さらには俳句への興味など、様々な視点を提供してくれます。

私たちは日本が海外からの技術や文化を適切に取り入れる能力を持っていると信じています。それは、古代の春の景色を表現した「枕草子」から現代の最先端技術まで、日本人が共有する感覚や感情を通じて表現されています。

将来は、「成長しないが持続する社会」、すなわち持続可能な社会の形成に大いに賛成しています。そして、日本社会が子供を育てるために共同体全体で協力するという風土が、より良い社会を形成する上で重要な要素であると考えています。

最後に、日本人のポジティブさと優しさについて話します。これは、我々が海外で活躍する際にも、また他の日本人らしさを探求する際にも重要な要素であると思います。日本人の優しさを、弱さではなく、力強さやレジリエンス、そして繊細さとして捉えています。
日本を訪れる度に、空港のスタッフから公共の職員まで、さまざまな人々の優しさに触れる機会があります。これは、日本について思い描く美しい風景の一部です。

「日本人らしさ」について多くの意見を交換しました。それらを聴いた上で、私は以下のように思います。今回の対談を通じて、日本の文脈をウェブに取り入れることが良い結果をもたらすという考えが確信に変わりました。我々はそれぞれが異なる視点から、日本人特有の技術と生き方を考えていると感じています。そして、私たちは「弱さ」ではなく「優しさ」が非常に重要であると認識しています。

この考え方は、茶道を学ぶ際にも出会いました。例えば、「軽いものは思うように持ち上げ、重い物は軽く持ち上げる」という教えや、道具に対する愛情を持ちながら使用することが強調されています。これらの教えは、以前参加した竹村先生との対談で議論した脳の働きにも通じています。脳はゆっくりと働きつつ強さを保ち、ソフトであるがゆえにしっかりと機能すると言われています。これは、茶道の動きにも見られる特徴で、強さと優しさを兼ね備えています。激しさを持たず、上手な方法で取り組むことが大切だと感じています。

私たちは美学を言葉で表現することができ、観察することで理解することができます。そしてそれは私たちの心や感情にも現れます。これらが日本の良さというものであると感じています。今回の対談から、多くの事柄が明らかになったと感じています。

また、文字に美しさが存在すること、また日本人が自然の美しさを感じる感性も日本人らしさの一部だと感じています。例えば、夏の風物詩である風鈴もそうです。風鈴は元々江戸時代に金魚がペットとして飼われるようになり、その後、金魚の絵を描いて風を楽しむための風鈴が作られるようになりました。このように、食用の魚から風を愛でるアートへと変化したこの逸話が、日本の繊細な感性を示しています。

最後に、これら全てが優しさの概念に繋がると感じています。これらの考察を通じて、私たちは日本人らしさの核心を見つけることができました。


伊藤 穰一:日本のベンチャーキャピタリスト、実業家。 元マサチューセッツ工科大学教授・元MITメディアラボ所長、元ハーバード・ロースクール客員教授。千葉工業大学変革センター長、同大学長。

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