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【感想】コーダ あいのうた ※ネタバレあり

これぞ映画。映画である必然性がある作品。
後半ずっと涙が止まらなかった。言葉にできないいろんな気持ちがあふれてただただ感動した。辛さやもどかしさや思い、その全てがごちゃまぜになった。全体的には辛さや残酷さの成分が多かったように思う。ただその中でもひしひしと存在している思いに力強さがあるから感動するのだと思う。

最後の約30分、発表会からの歌のシーンはとにかく泣けてしまう。
ろう者としての目線が描かれる音が消える演出。無音の世界。聴こえない娘の歌。感動する人々。娘だから誇らしいはずなのに自分自身でたしかめることはできない残酷さ。もどかしさと寂しさ。だけど嬉しいことが起きているという現状。

父と娘、星空の下で歌うシーン。一番すきだったかもしれない。ルビーの歌は聴こえないけどそれでも感じたいと強く願うお父さんの気持ちがひしひしと伝わってくる。手をのばす所作と2人の目が語りかける。

オーディション。審査員の前で歌いながらも家族だけに伝わる手話を交えながら、家族に向かって歌った歌。それは歌というかたちじゃないけど届けようという思いがメッセージになる。

どの歌のシーンも印象的であると同時に段階的に描かれるグラデーションがにくい。デヴィッド・ボウイ好きには選曲もたまらない。

ってか先生ぶっ飛んでてある意味ひねくれてるけどこの先生超最高!笑 ルビーが羽ばたけたのは先生がいたからこそ。心をこじ開けようと突っ込んできてくれるのが最高。

この映画の中のできごとや人物描写は白や黒で語れない相反する感情やものごとが同時に存在していることがほとんどだからシンプルに受け取ることは難しくて感想を言葉にするのも難しい映画だった。だからこそ映画として受け取る意味のある作品であるとも感じた。思考で受け取れないいろんな思いがごちゃまぜにこみあげて感動になる。


・母がルビーを必要するのは愛でもあり、子離れができない気持ちでもあり、そしてある種利用でもある。2人の対話シーンは愛というよりは母の弱さやすがりたい気持ちの吐露であるように感じた。自分が親とできなかったことを子どもに重ねてしまう親とある種の押しつけを必要とされている喜びの一面にも感じてしまう子。

・兄がルビーを突き放すのはルビー頼りになりたくない彼のプライドでもあり、同時にルビーが自己犠牲しているのをもしかすると彼女本人よりも敏感に気づいていたから兄として放っておけなかった気持ちでもあるのだろう。

・ルビーが歌を好きになったのは、家族の中である種孤独を感じていて、自由の象徴だったからでもある。そして家族が耳が聞こえなかったからこそ気にせずのびのびと歌を歌えたという側面もある。抑圧と解放。不自由と自由。

・歌に魂が乗るのは彼女の境遇があるからこその一面もある。

・ルビーと家族の間にある感情は残酷にも聴こえる者と聴こえない者の分断があり、しかし同時に家族だからこその繋がりもある。

・ルビーにとっては望ましいわけじゃない家庭環境もマイルズから見ると羨ましい家族でもある。ある意味のマイルズの若さでもあるが、同じ境遇も見る人によって見え方は違ってくる。


色んなifが頭をよぎらずにはいられない。もしルビーに歌の才能がなかったら?ルビーの歌の才能に誰も気づかなかったら?家族が認めなかったら?もっと父母兄の3人が弱かったら?

ある種の生存者バイアスかもしれないし、夢かもしれない。だけどやっぱり映画は希望を見せてほしいという気持ちもあるから前向きな力強さを描いてくれて嬉しい。人生はifにあふれていて、白黒できれいには分けられなくて、辛いことも嬉しいことも同時にある。

自分の生い立ちは自分で選ぶことができない。それによって失われたものも得たものも同時にある。自分自身でもそれが宝物なのか背負わされた十字架なのかを区別することもできない。十字架だと思っていた者が宝物に変わる時もあるしその逆もある。
それでも今の自分が今の自分であることは変えようのない事実で、だけど生きていく。それでも生きていく。


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