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【感想】聲の形

感想

聲の形、を観れてよかった。文句なしの名作であると同時に制作者の溢れ出る創意工夫と思いを感じる佳作だった。

聲の形はマンガもリアルタイムで観ていて、石田くんの境遇があまりにも自分に重なりすぎて、出て来る周りの人たちも小学生、中学生を思い起こされる人たちだった。

人が不器用なのはあたりまえで、その不器用さが愛おしい。その不器用さが時にはむかついたり、許せなかったりする。僕は悪気なく自分を守ってばかりで周りに合わせてばかりいる川井さんみたいな子のことをよくむかつくなって思ってた。

一方で植野さんは最初っから悪者なんだけど、昔から植野さんみたいな女の子はなんだかんだ好きで、困ったやつだなあって思いながら素直さや尖っているところが好きだったりする。

僕は橋の上で石田くんがみんなに暴言を吐くシーンが好きだ。石田くんの暴言は、昔マンガで読んだ時ひどいものに思えたけど、今ならわかる。彼が誰よりもみんなの根っこをちゃんと見ているからこその暴言で、攻撃するようで愛がないと気づけない一人ひとりの課題を暴言として石田くんは吐いている。

だからみんな傷ついたけど、石田くんに言われた弱さと各々が向き合って、みんな少しずつ一歩を踏み出せたんだと思う。

映画が終わるとき、優しさがあふれて、石田くんの見える世界のトーンが明るく、色鮮やかに彩られたように、心が今より少し豊かになるような素敵なギフトをもらったなって思った。

映画というフォーマットでできることを演出面でも、編集面でも全面的に活かした傑作。

演出


切り出すカットがいい。顔じゃなくて足だけを映したり、手だけを映したり印象的なカットがたくさん登場する。間接的だからこそ豊かに表現がされる。実際にぼくたちが生きている時も顔ばっかり見ているわけじゃない。何気ない仕草とかを見つめていたりするものだ。一人ひとりが生きているんだってことを感じて生々しさを感じる。

あえて手話だけで、話している内容がわからないシーンがあったりして、言語がわからない中で相手の心境を掴み取ろうとする体験を映画を観ながらする。これは西宮さんの耳が聞こえないことだったり、石田くんの心の声に鈍感だったりする状態を追体験させてくれるような体験だった。視聴者が登場人物と同じ目線に立てるのだ。


音にこだわりを感じる。静の表現が巧みで、ピアノだけのシンプルなBGMもそっと添えられていて過剰じゃない演出に好感がもてる。音がきこえない西宮さんを描いている作品の中で音という要素がいかに重要で大事にされているかを何度も何度も感じた。

ピアノの音、ペダルを踏む音、鍵盤を叩く音が聞こえてくる。普通のBGMでは聞こえない音が聞こえてきて、静寂の中でピアノを聴いている感覚だ。静かな世界で僅かな音が木漏れ日のようにきこえてくる。まるで西宮さんにとっての世界を感じ取るようだ。

石田

石田くんは小学生・中学生の自分にそっくりだ。空気が読めないこと、先頭に立って人を傷つけてしまうこと、悪気がないこと、だけどとってもひどいこと。そうして最後には全部の罪を自分自身だけで背負おうとしていること。結局のところずーっと身勝手なやつ。だけど、ぜーんぶちゃんと自分で受け止めてるのが強さ、でもあるのかなって思う。

ダサいところもだめなところも自分に似すぎているから、共感というよりいっしょだなって感じがしすぎて逆に石田くんを通して感情が動かなかった笑
もっともっと昔の、渦中にいたころの自分が見たら、ものすごく感じる所があったんだろうなって思う。そんな時代の僕をリアルタイムでやっている子が世界のどこかにいるはずで、そんな人に見てほしいって思った。

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