サイレント・キラー(沈黙の殺し屋)かくれむち打ちの恐怖2024・2・1

原因不明の頭痛、とかいつまでたっても治らない頚部痛とかの患者さんを拝見することがあります。医療機関を受診しても「異常ありません」と言われるんだけれども痛い、というパターンです。それだけではなく眼が疲れるとかよく転ぶようになったとかしんどくて犬の散歩もできなくなったとかいう症状が随伴するケースもいあります。
 
だいたいそういう方の頸椎を触診してみると、どこかに圧痛があります。たいていは第3、第4頸椎の辺りで、ここはむち打ちで傷める部位です。そう説明すると、「むち打ち?それはないわ。」とこちらの顔を疑わし気に見ながらそうおっしゃいます。確かにその通りで、一般にむち打ちと言えば運転中に後ろから追突されたときのケガと考えられていますから無理もありません。ただね、例えばしりもちをついた、とか酔っぱらって転倒したとかの機転でも、むち打ちは発生します。
 
むち打ちと言えば頸椎の捻挫が一番多いのですが、その時手当てが不適切だと(牽引、長期間の固定、湿布薬をずっと貼り続ける、など)自律神経がバランスを崩します。頚部交感神経症候群とかバレ・リュー症候群とか呼ばれます。症状としては項部痛やめまい、耳鳴り、上肢のしびれ感などが一般的ですが一定しないこともあります。自覚症状だけで他覚所見に乏しいのでなかなかしんどさをわかってもらえないのが辛いところです。
 
しりもちとか転倒とかで衝撃が身体に加わると、頸椎は揺さぶられます。加わった外力が追突事故とは比べ物にならないくらい小さいですけれど頸椎にはその時の影響が残ってしまいます。頸そのものは痛くないかもしれませんが頸椎が揺さぶられたときの痕跡は間違いなく頸椎に残っています。言ってみれば「かくれむち打ち」みたいな状態です。
 
頸は痛くありませんから(受傷直後はなんとなくだるい感じはきっとあったと思うのですけれど)意識はしませんが、むち打ちを放置しているのですからやがて頚部交感神経症候群に移行していきます。自律神経症状が始まる、ということです。
 
原因不明の頭痛や頚部痛、(結局のところ頚部交感神経症候群)の治療としては自律神経の調整のために頭蓋仙骨療法が有効です。それに加えて頸椎の調整が必要になってきます。頸椎は前後又は左右に揺さぶられて「ずれた」わけですから、長軸方向にひっぱる牽引療法が効くわけがありません。ねじれているものをいくら引っ張たってまっすぐにはならないということです。頸椎を丁寧に触診して、ゆがみの方向を割り出して調整すれば頸の圧痛もわけのわからない症状も穏やかに消えてゆきます。
 

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