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手首のツボでリラックス、そして…2024・6・1

2020年6月に「Current Biology」誌に正中神経を電気で刺激するチック症治療法が発表されています。チック症というのは目をぎゅっとつぶったりぱちぱちしたり、肩を竦めたりする運動が不随意に出現する症状です。本人はやりたくてやっているわけではないのですが、衝動的にチックが出てしまうといいます。奇声を上げたり足を踏み鳴らしたり、というチックもあってそうなると日常生活でも困ることが増えてきます。トウレット症候群、という名称で呼ばれることもあります。
 
当院でも集中力がない、落ち着いて勉強ができないという子供さんのケアをすることがありますが、そういう子はチック症でも困っていることが多いです。夜尿症を合併しているケースもあります。それでそういう子はほぼ例外なく全身がひどく緊張しています。緊張の強い時はチックもひどくなりますから、チック症というのは緊張を緩和するためのセルフケアではないか、と私は考えています。
 
正中神経というのは上肢の運動や感覚を司る神経のひとつです。手を酷使している人が罹患する「手根管症候群」は正中神経が手首のところで絞扼されて起こります。
 
ちょうど手根管症候群がおきるあたり、手首の手のひら側にある横じわの中央に電極をつけてリズミカルな電流を流すとチックそのものの頻度が減りますし、チックへの衝動も抑えられるといいます。
 
でも正直な話、はじめこの話を聞いたときには私には何のことやらわかりませんでした。正中神経とチック症(=心身の過緊張)とは直接の関係はなさそうに思えたからです。先に書きましたようにチック症のある子供さんの心身は緊張していますけれど、それは自律神経の問題であって正中神経がかかわってくる意味が分からん、というのが本音のところでした。
 
それで電極をつけて電流を流す場所について考えてみました。正中神経を刺激するために電極をつける場所は東洋医学で言うと、「大陵(だいりょう)」という経穴です。この経穴の効能は「上肢のしびれ、神経痛」「慢性関節リュウマチ」ですが、緊張を和らげリラックスさせる働きもあるそうです。
 
なるほど、それで納得。そうやって心身がリラックスすればおのずとチックも出なくなるでしょう。おそらく「Current Biology」に論文を発表した人は偶然手首を刺激してチックが軽減したという経験をしたのでしょう。ちょうどその場所は解剖学的に正中神経が体表から触れやすい位置でした。それで「正中神経を刺激するとチックが改善する」という結論が出たのだと思います。もちろん刺激は電流である必要はなくて、自分の親指でマッサージしてもエレキバンの類を貼付しても同じくらい効くはずです。

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