髪の毛を切ってもらっているうちに眠くなるのはなんでか 2023.9.1

頭のてっぺんに「百会(ひゃくえ)」というツボがあります。両側の耳孔を結んだ線と、眉間のあいだをまっすぐ後ろに進んだ線とが交差するところ、というとかえってややこしいですね。頭のてっぺんといわれて、「ああ、ここやな」と直感的にわかる方が多いと思います。
 
東洋医学ではエネルギーの通り道が想定されていて、すべてのエネルギーの経路が集まる場所、とでもいった意味で「百会」という名称がついたそうです。
 
自律神経の乱れを整え、全身の血行を整える万能のツボといわれています。頭痛や肩こり、眼精疲労、不眠のほか、痔疾にも効果があります。一部のお寺で行われている「ほうろく灸」という行事があります。素焼きのほうろくに火のついたもぐさを乗せて頭上に載せます。無病息災のまじないとされますが、温められているのはやっぱり百会のあたりです。
 
頭蓋仙骨療法を当院で受診してくださる患者さんはほとんどが「寝落ち」してしまわれます。今まで機嫌よくしゃべっておられたのが、急に「静かになられたな」と思うと寝息を立てておられるというのが一般的なパターンです。どのタイミングで寝落ちされるのかな、と思って観察していると頭のてっぺんの矢状縫合、つまり百会の周辺を調整しているときが一番多いようです。このあたりがリラックスのツボである理由は何なのでしょうか。
 
頭部の静脈は「導出静脈」といって脳表面の静脈が頭蓋骨を貫通して頭皮の静脈とつながった構造になっています。そのため頭皮への刺激が脳の血流に影響を与えると考えられています。美容院や理髪店で髪の毛を切ってもらったりシャンプーをしてもらったりすると、なんかうつらうつらしてしまう理由は、頭部静脈の構造にあるということです。
 
そうしてこの「導出静脈」は、後頭部と頭頂部に多く分布しています。つまり百会を刺激することで脳の血流量が増えて、これが自律神経のリラックスをもたらすということです。
 
頭蓋仙骨療法や頭蓋オステオパシーは欧米で開発された手技で、東洋医学とはルーツを異にします。洋の東西で同じようなリラクゼーションの手法が考案されたことは驚きですね。
 
 

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