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inkstand by kakimoriに行ってきた

この世にはインク沼という沼がある。
行って帰った人はいない見果てぬ深淵である。
文具界で決して狭くはない面積を占めるその沼は
今この時もなお広がり、深まり続けているという説もある。
それにもかかわらず沼を訪れる者たちは皆一様に、そして常に渇いている。幾百のインクを乾しても足りぬとばかりに常に新たなインクを求めている。

何が言いたいのかというと、文具ブームもずっと続いていて最近ではオリジナルインクが色んなショップから出ていますが、飛ぶように売れてなかなか手に入らないものも多いなってことです。

最近も欲しかったインクが手に入らなかったんですが、腐っていても仕方ない。欲しいなら自分で作るしかないじゃないということでオリジナルインクを作る方法を探しました。そして見つけたのがこちら。
https://kakimori.com/pages/order-ink
蔵前の有名な文具店「カキモリ」さんの姉妹店「inkstand」さん。
こちらで自分の好みのインクを調色できるのだとか。

オーダーインクと言うとセーラーのインク工房が有名で、私もインク工房からインク沼に入ったクチです。あの素敵なインクブレンダ―さんがバーテンダーのようにインクを混ぜる姿を間近で拝むのは得難い経験なのですが全国巡業をしているのでなかなか地元に来るタイミングがない。その点こちらは店舗型なので言わば会いに行けるインクブレンダ―。それどころかお前がインクブレンダーになるんだよ!という展開もあります。そんなわけでインクスタンドオーダーインク、自分で調色する「SELF」と店員さんに調色していただく「WITH」を体験してきたレポートです。

◆WITH

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作りたい色のイメージを伝え、店員さんが調色して下さった色に要望を加えながら理想の色を作っていくコースです。予約不要とのことで開店と同時にお店に伺いまして、スムーズに受付していただきました。混雑時は受付順になるそうなので行くタイミングが重要。とは言え徒歩2分くらいの場所、蔵前の駅前に鷰 enというカフェ(1Fはコーヒースタンド)があるので順番待ちになったらそこで茶でもしばいていてください。

今回私が作ろうと思っていた色のイメージは海老色という紫がかった赤色。プリントアウトした色見本を持って行きましたが、それよりもお店にあったらブレンド見本(上の写真で指さしているやつ)の方が役に立ちました。
ベースになる17色のインクをそれぞれ1:1の割合で混ぜた際の色見本になっていて、この色をもう少し赤っぽく…みたいな感じに伝えるとそれに合わせて調色してくださいます。
私の場合は色見本にあるこれとこれがイメージに近いですとお伝えして見本を作ってもらったところ「あ、この色ですね…」とあっさり決まってしまいました。それだけでは何なのでもうちょっと赤っぽく、もうちょっと黄みを強く…と3色を合わせて作ってみていただきましたがやっぱり最初の色でした。写真だと全然違いが分からないかもしれませんが右3つは微妙に違うんですよ。

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赤とも紫とも判じられない色にするという当初のイメージと、普段使いの筆記用というコンセプトのもと、細字になっても鮮やかすぎず落ち着いた色が出るという大事にしたいポイントが決め手になりました。

ちなみに、ひとつのインクに使えるベースインクは3色、うすめ液で濃淡を変えられるので実質4色気分です。赤・青・黒だけは色を強く出すためのディープカラーが別にあるのですが、ディープカラー3色を混ぜるのはそれぞれの色が強すぎてカオスになるのでダメとのことです。

色が決まったらあとは出来上がりを待つだけです。1時間程度かかるとのことだったので私はそのまま店内をぶらぶらしてブレンド済みのインクやインクのレシピを眺めた後、徒歩8分程度のところにあるカキモリさんで今日作ったインクをボールペンのように使えるオリジナルペンなどを買い込みました。inkstandさんでも買えますがカキモリさんでは他のメーカーの万年筆やレターセットなど文具全般が買えますし表紙と中紙を選んでオリジナルのノートも作れるのでこちらがおススメ。

カキモリ https://kakimori.com/pages/stores

◆SELF

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続けてSELFへ。こちらは予約制で、カウンターに置かれたこのキットでインクを調色していきます。
ワークショップの流れや調色法、道具の使い方やインクの特性に関する注意点などご説明を受けてから作業を始めますので少し早めに現地に到着するようにしましょう。遅れると店員さんの説明の手間が増えるので必ずだ。

混ぜられるインクは3色+うすめ液という点はWITHと変わらないので、3色に目星をつけていざ調色。SELFでは紺青色っぽい青を作るつもりです。これも筆記用というコンセプトなのでしっかり落ち着いた色が出るように作っていきます。

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色が決まった時点でこんな感じ。ちゃんと何を何滴混ぜたかメモしておかないと後で注文ができないので要注意。ぽたぽたしてまぜまぜしてメモメモして理科の実験みたいなワクワク感。

当初は青と紫みの青と濃灰色を混ぜてみたんですがやっぱりと言うか何と言うかちょっと鮮やかさが足りない。そこで青のほかに鮮やかな青と鮮やかなピンク色を混ぜてみたところちょうど良い鮮やかさになりました。でも鮮やかすぎて何となくインクが少なくなった時や細い線に落ち着きが出ない。少しずつ3色の比率を変えながらどのインクを入れると鮮やかになるか、色が落ち着くかを自分の体で感じ取っていきようやく理想の色が出来ました。感動の瞬間です。

WITHの方で印刷していった色見本よりブレンド見本の方が役に立ったというお話をしましたが、聞いたところベースインク自体もブレンドで出来ているので、単純に色を混ぜるとは言っても三原色のイメージのとおりにはいかないのだとか。このあたりが分かってくると格段に面白くなってくるのですが、分かりかけた頃には調色の持ち時間である45分が終わる絶妙なタイムテーブルです。
調色が終わったらで店員さんに声をかけ、インクの比率をお伝えしてインクを作っていただきます。こちらも出来上がりまで小一時間かかるので今度は道路を挟んで隣の茶室小雨さんでのんびり待ちました。蔵前はそこらじゅうに素敵なカフェがあるので待つことに関しては全然困らないと思います。

なお、時間内であれば何色でも調色可らしく、慣れてくれば一度の予約で複数色を作って買って帰ることもできます。

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出来上がったインク。色がチラ見えする素敵なパッケージに色のレシピと共に入れてくれます。このレシピはシリアルナンバーを付けて作ってから2年間保存されるらしいのでリピートオーダーも簡単。前述のインク工房がリピートオーダーが出来なくなってしまったことを嘆いておりましたがこちらならじゃぶじゃぶインクを使うヘビーユーザーも長く使い続けられます。

そんなわけで理想の色のインクを1本から作ってもらえる/作れるという極上の体験ができるinkstandとても楽しかったです。
みなさんもぜひ推しの概念のインクを作ればいいんじゃないかな!

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